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第49話 恥を知る俗物。その名をセイチ

 勝利の余韻に少しだけ浸った後、俺たちはきのこの森から脱出した。ユニーク・モンスターのリスポーン時間がどの程度の物かわからないため、念のための脱出。今、出会ったとしたら死ぬしかない。


 俺のHPは何と5パーセントを切っていたらしい。野良クモとすら戦ったら死ぬ状況での脱出は、かなりのドキドキだった。ユニーク・モンスターとはいえステルス能力を持つ奴を見た直後だったので尚のこと慎重になった。


 仮想世界の体なので、少し休んだだけでスタミナもMPもそこそこ回復したため、動きに支障は無く、森の入口まではあっさりと移動できた。

 問題は精神の状態である。


 勝利の余韻に浸った後――俺はものすごい恥ずかしくなった。原因はアイリスのことである。

 精霊AIはHPもMPもスタミナも全て魔力と言うエネルギーで統一されているのは俺も忘れてはいない。そして――それを失った状態が短期間で『三回』続いたり、それに近い量の魔力消費を短時間にすると、精霊AIは三十分程、完全にさめない眠りに入る。


 ……うん。気絶してるかと思ったら、普通にダメージで動けなかっただけなんですよねー……俺の怒りを返せとまでは言わないが、こんな子供にぶちギレ状態の自分を見られるとはどんな羞恥プレイですか?


 なのにアイリスはかつての無表情はどうしたのか、ずっとニコニコしてるし。何がそんなに嬉しいんだか……ボスを倒したからだろうか?

 ――まあ、かく言う俺も『ボスの戦利品』には内心ホクホクなわけだが。しかし、それを打ち消すほどの気恥しさが襲っていたから表には出てこない。


 夜が明けるまで後一時間はある。きのこの森を抜けて開けた湿地帯に戻った俺たちは、スライムの危険度が格下の白なのを見て少しほっとした。

 俺の頭の上で完全に回復したアイリスに、少し離れた場所にあった薬草を取ってきてもらい、森に入る前に回収していたブルー・スライムのカードを『解体』する。


 出てきたのは、五つの『ブルー・スライムの体液』が入ったペットボトル。次いで、薬草のカードを解体し、薬草を五つ出す。


「錬金開始」


 出てきたフラスコをとって、メニューでポーションを選択し、ブルースライムの体液と薬草をセット。品質優先で、狙いやすい白い光にフラスコを当て振って、また違う場所に出た白い光にフラスコを持って行って振る。


「よーし……出来た」


 出来たのは『ポーション。Cランク。ブルーソーダ味』である。なんと、ブルー・スライムさんの体液はソーダ味なのである! びっくりだよね! ちなみに、グリーン・スライムの体液はメロン・ソーダ味になる。他の二つはどうなんだろうか?


 ……ちなみにスライムの体液以外でもポーションは出来る。マイルームで申請すればいくらでももらえるらしい『水。ランクE』と薬草でも出来た――が、味が酷くて……そりゃあ、もう、酷くて……大事なことなので二回言わざるを得ない味だった。


 提示版で見た感じだと、ランクで効果もそして味も良くなっていくらしい。今回、属性の付与を入れないのは。ポーションを飲んで一定時間の能力上昇はいらないのと、効果上昇と何より味を優先させたのである。


「いただきます」


 250mlペットボトルに入ったポーションを飲む。さすがCランク……ちょっと味が薄い気がするが、薬草の苦みなどは無いのはありがたい。

 全部飲み終わると容器ごと消滅した。


「二十パーセントほどの回復を確認……自動回復した分をあわせて、マスターの現在のHPは五十パーセントを超えました」

「ありがと。じゃあ、念のためもう一本飲んだら、夜のスライムを倒して俺のアイテムBOXもいっぱいにして帰ろうか」

「はい、マスター」


 スライムの脅威度は格下の白煙のままだった――が、今の俺には盾と剣が無い。近場に鉄が取れる場所があればよかったんだが……まあ、蹴りでどうにかなるだろう。アイリスの方は完全の状態だし、ポーションもとりあえず今解体した分――使った一本、使おうとしている一本を除いて三本出来る。


 ノーダメで倒せなかったら、そいつを倒したら後はマイ・ルームへ急げばいいし。


「じゃあ、行ってみようか――」





 結論から言えば、前は一撃だったのが俺とアイリスの攻撃を含めて三回攻撃をコアに叩き込まなければならなくなっていたが、戦闘行動が何一つ変わっていなかったので相手の反撃を避けることはたやすく、ダメージは負わなかった。


 強くなっていたため、手に入ったカードもCランクだ。これは今度から夜は狩りの時間と思ってもいいかもしれない……まあ、始まりの遺跡のワープポイント近くにユニーク・モンスターが出ないとは限らないわけだが。


 アーツや魔法を使って、素早くブルー・スライム達を倒して、そのCランクカードを俺のアイテムBOXが埋まるまで集めた後、マイルームへ戻った。


「はあー……さすがに疲れたな」

「お疲れ様です。マスター」


 ベットに飛びこみ、精神的な疲労を取ろうとする。枕に顔を鎮めて行くと、未だ脳裏にちらつくあのクモとの戦いが消えて行く……気がする。


「マスター……ログアウトして、少しお眠りになられたらどうですか?」

「う……まあ、確かに……そうするかなー」


 寂しさ半分心配半分の表情のアイリスの提案に、迷いつつもその提案を受け入れる。アイリスも激闘の後だし、休んだ方が良いだろう。

 俺はアイリスに、カードアルバムとアイテムBOXの中身を倉庫に入れて、完全に疲れが取れたら安全な場所で薬草採取を適当に頼むと言って、ログアウトした。


 あのクモから手に入れた戦利品については、次のログイン時の楽しみになりそうだ。






 ボスを倒したら直ぐに帰らないのがセイチさんクオリティ。ええ、本人すら気づいていませんが、恥ずかしさを紛らわすための八つ当たりです。


 コラムダさんが精霊AIの疲れについて説明していた時のことを冷静に思い出せていたら、もっとうまく戦えていたと思いますが、コラムダさんに言い返していたようにきっとセイチはできないでしょう。


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。またお待ちしております。


 それでは次回もよろしくお願いします。

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