第47話 はじめてのボス戦。全力全開編
さて。どうやって戦うか……俺とアイリスはきのこの陰に隠れつつ、ステルス性能をもつあのクモを見逃さないように注意しつつ対策を練ることにした。
大きさは野良クモと変わらない――成人男性1.5人前……まあ、巨大なマッチョが這い這いしているでかさである。ハイ・ゴーレムでなければかなわないという大きさでも無い。まあ、きのこの森にロボットは侵入できないだろうけど。
問題なのは見るからに堅そうな外見と、前を向いている二対の前足が巨大な鎌のようなものになっていることだろう。野良クモの糸、体当たりの行動パターンと違うのは確実である。
俺が物語の主人公なら、とりあえず戦ってピンチに陥った時に、偶然相手の弱点を見つけてしまうのが王道パターンなんだろうが、生憎主人公タイプで無いのは俺が一番よくわかっている。
ならば今のうちに当たりを付けておくしかない。鎧の弱点と言えば視界を確保しているための穴の部分か、関節を動かすための隙間などだ。鎧の防御力を無視してダメージを与える――と言うのなら関節技なども有効だろうが、クモにあの八本の足を掻い潜ってノーダメージで関節技をかけれる自分を全く想像できないので却下だ。
「マスター……とりあえず、相手の鎧の中に入ってダメージを与えられそうな『ヒート・ブリッド』を全力で使ってみてはどうでしょうか?」
「うーん……まあ物理防御が高そうな相手にはもちろん魔法なんだけど……やるとしても二重詠唱は一回で、後は俺のMPが無くなるまで俺が撃ち続けるだけな」
「? 私も一緒に撃った方が……」
「それだけで倒せればいいけど、正直倒せなくてアイリスが小型化して回復するまでの間、俺一人になった時のことを考えると……な。もちろん、やられそうになったら全力全開で撃ってくれ」
「はい」
方針は決まった。魔法を撃つ、その後はいつも通り前後から攻撃を加える。難しいと思うがなるべく関節や頭部の眼の部分を狙う。
よーし! いく――ザクッ!――ぞ?
隠れていたきのこを何かが貫通していた……えーと……鋭利な鉄?
ま・さ・か……
ビュッ、ビュッ、ビュッ……とクモの方から音がすると同時に、鈍い光を放つものが次々に飛んできて――!?
「糸じゃなくて鉄を吐くのかよ!?」
「マスター!? 二重詠唱は――」
「無理! 早く接近してこの攻撃を止めさせないと、何も出来ずに負けそうだ! アイリスはいったん小型化してあいつの後ろに回り込んでくれ!」
「それだと時間が……」
「やられる心配は減るから! それじゃ頼む!」
「マス――」
ザクン、バキン、ザグン! と辺り一帯に連続で響く音をこれ以上無視して会話していたら、このまま死ぬと思い、俺は一気にきのこの陰から飛び出した!
「ヒート・ブリッドッ!!」
向けた手のひらから火の玉が四つほどクモに目掛けて飛んでいく! 途中、奴が飛ばす鉄に二つぶつかって消されたが、二つは命中! すると……攻撃が止んだ?
走って近づきつつ奴を良く見ると……奴の口から伸びている鉄だったものが燃えている……いや、糸……なのか?
もしかして、奴の口から離れた糸が硬質化して鉄の様な強度を持つ刃としてこっちに飛んでくるのか? なら少なくとも、火の魔法で連続で燃えている状態にすればあの攻撃を止めることはできる!
「ヒート・ブリッドッ! ヒート・ブリッドッ! ヒート・ブリッドッ! ヒート・ブリッドッ! ヒート・ブリッドッ! あ、もう無理……」
頭痛が来た時点で弾幕を止める。この魔法を覚えた時は一発でMP切れを起こしていた。それがこの数を連続で撃ち続けられるとは成長したなーと思いつつ、それでもまだ足りない現状にゾッとする。
効いてる。効果はある。悶え苦しんでいる。きっと、吐きだしかけた糸に炎の攻撃を当てると言うのが良かったんだ。その糸を通じて体内の糸を造り出す器官がダメージを負ったんだ。
当初思っていた感じとは違うが、鉄の鎧の部分を避けて攻撃することには成功……あー! MPがもっと欲しい!
アイリスも今はあいつが糸を吐けなくなったことに気づいたらしく、幼女化して一気にクモへ目掛けて走って行った。背後――じゃなく正面!? 作戦と違――いや、なるほどなっ!
アイリスは悶え苦しんでいるあいつに接近すると、その口元に剣を突き刺した!
「――――――ッッ!!」
悲鳴を上げようにも口を突き刺されては上げることができなかったクモは、お返しとばかりに二対の前足――いや鎌をアイリス目掛けて振り下ろす――!!
「させるか――!!」
アイリスの背後に追いついた俺は、剣と楯でその攻撃を防ぐ――ギャリリと鉄と鉄が火花を散らし――バキンッと盾と剣が破壊される音を聞いた。
一撃かよ!? ふざけん――なぁあああああああああああああああああ!!
「グッ――ああああああああああああああああ!!」
俺は壊れた武器と盾を捨て、勢いを弱めたがまだアイリスの頭上に向かう鎌を両腕で防ぐ! 最初のはちょっとした痛みに対する悲鳴を上げたが、残りは鎌を止めるために力を出し切るための咆哮だ。
ブシャアアアアアアアアア!! と俺の両腕から赤いマナの粒子が吹き出る。と言うか、赤!?
まずっ……俺たちの体から噴き出るマナは色分けされており、白が大体百パーセントから七十パーセントのHP状態で出るもので、黄色が四十パーセントまで、そしてそれ以下が赤なのだ!
つまり――盾と剣を犠牲にしたのに、俺のHPを一撃で四十パーセント以下にしてくれたのであるこのふざけたクモは!
「マスター!?」
「大丈夫だ! いっっけぇええええええええええええええええええ!!」
「っ! はいっ!」
俺の咆哮にアイリスは、俺の傷を心配するのをやめて、剣の刃をなぞるように右手を一気にクモの口へ突っ込む! 剣は弱点を突くと言う理由もあったが、一番の理由は自分の腕をかみちぎられないようにするためだったのだ。
手を弱点に突っ込んだアイリスが次にすることは――
「ヒート・ブリッド! ヒート・ブリッド! ヒート・ブリッド! ヒート・ブリッド! ……マスター!!」
体内で炸裂するため、まるで遠くから聞こえるような炸裂音を切り裂くような鋭い声で俺を呼ぶアイリス!
「!? ……わかった!」
かなりのダメージを負ったクモの力が弱まったのを文字通り素肌で――と言うより骨と肉で感じ取った俺は、力尽きるようにしゃがんでアイリスと同じように手をクモの口へと突っ込む!!
「「二重詠唱!! ヒート・ブリッドォオオオオオオオオオ!!!」」
俺とアイリスは、消費MP七割、威力1.3倍の最後の望みをかけた一撃を相手の体内に叩き込んでやった――どうだっ!
自分は主人公タイプじゃないと思いながら、まさに偶然弱点にあてる主人公(笑) おいおい、どの口――どの心が思ってるんだが。
さすがはセイチさん。一般人にはできないこと(全裸待機、草原の真ん中で一人モノマネ、メイドAIを無理やり壁に)を平然とやってのける! そこにしびれる憧れるぅ!
お気に入り登録、感想、評価、ありがとうございます。またお待ちしております。
さてさて、初めてのボスはこれで倒れたのか、まだ一波乱あるのか……ロボよろの作風を考えれば……(笑) それでは次回もよろしくお願いします。




