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第43話 歌姫発表の日

 はい、丸一日が経ちました。その間の記憶? はっはっは、夕飯に姉神達が乗り込んできた時点で封印しましたよ。うん、あの二人が揃ってしかも酒を飲むとまさにカオス空間だからね。


 案の定、香坂も強制参加。さすがの香坂も、姉一号のマイ・メスによるダーツ(?)ゲームや、姉二号のビール瓶の端っこを指一本で切断して豪快に飲むのを見て引いていた……が予想よりうまくなじんでいたようだ。


 そして日曜日の夜。何故か俺の部屋で香坂とともに香坂出演の番組を見ることになったのである。


「とうとう発表か」

「……ドキドキ」

「口でドキドキ言うな」

「こ、このドキドキは男の子の部屋で夜に二人きりでドキドキしているってわけじゃないんだからね!? か、勘違いしないでよね!?」


 俺は隣で赤い顔でまくしたてるツンデレ香坂さんに冷めた顔で聞く。


「……本音は?」

「自分が人気声優と並んでテレビに出演する姿を見ることにドキドキしてます! 本当にすいませんでしたっ!」


 素直で大変よろしい。

 ちなみにネット動画でも配信するらしいが、書き込みで「誰?w」「場違い乙w」とか書き込まれたらシェンロンか、仙豆でも無い限り復活できないらしいのでテレビで見ることにした。


「――と言うか夜九時の番組だし、友達とかも見るんじゃないか?」

「う……多分、ドラマとか見てこの番組は見ないだろうし、私の髪型声優として出る時はツインテールにしてるし、化粧もプロの人がこの時やってくれたらから大丈夫……だと思う」

「は! その程度で顔バレが阻止できると思っているとは片腹痛い!」

「あんたが言うな!」

「はい、本当にすいませんでした……」


 そんなことをしている間に番組名『VRMMOの未来』が始まった。

 VRMMOの歴史、進化、最新ゲーム『ロボゲー・オンライン』の解説。

 そして――


「ぎゃああああああああああああああああああああ!?」

「――ぶふっ」

「あ、今笑った!? 笑ったっしょ!?」

「いや、ロボオンの世界では見慣れたけど、現実で見るとまた違ったインパクトが……ぶふぅ!」

「それは私の衣装のことか!? 衣装のことかー!?」


 スーパー地球人になった香坂をなだめながら、テレビ画面の中で九人の声優さん達があの香坂がロボオンの世界で装備している歌姫の衣装で歌い踊り始めているのを見続けた。


 いや、完璧ですよ? 他の八人に比べてその姿に違和感などは無い……が、隣にいる人間がテレビで歌って踊っていると言うのは俺の笑いのつぼを妙に刺激するんですよ。わかるはずだ、みんな、みんなにはわかるはずだ!(笑)


 その後、声優さんの紹介。それぞれがそれぞれのワールドで歌姫としてイベントなどに参加することが発表された。香坂の紹介の時に、素顔を知る者にしかわからない内心のテンパリ具合が酷くてまた笑ったら香坂の右ストレートを喰らった。


 香坂 朱音――芸名は赤坂 香音と言うらしい……うん、真面目に考える気無かったなこいつ。

 そして今日この時より、第九ワールドの名前は『アカサカ コウネ・ワールド』と言う名前になったらしい。大爆笑したら香坂のパンチを以下略。


 俺にとっては大爆笑の時間が、香坂にとっては恥ずかしめの時間が過ぎた。

 香坂が真っ赤な顔でフラフラしながら自分の家へ戻って行くのを見届けた後、俺はネットの評価などを確認して見た。


 結論から言えば、誰? と言う意見も多かったが、美人、可愛い、声も良いなどの肯定的な意見も多かった。これなら第九ワールドも他のワールドと比べれば見劣りはするだろうけど、過疎化が進むなんてことはなさそうだった。





 次の日。ロボオンをこれまた徹夜で近い形でやった俺は、朝食を食べた後、近くのゲーム屋や電気屋を覗いた。まだ開く前から列ができているのにマジで驚いた。

 これが声優効果と言う奴か……


「おまえどこのワールド?」

「モガミナさんに決まってるっしょ!」

「俺はトナリナさんとこかな」

「阿口 真里菜ちゃんも忘れずに!」


 ……うん、わかりやすい人たちも多いが、そう言うのを嫌そうに見ている人もいた。普通にロボオンがゲームとして面白そうだから並んだ人たちだろうか?

 ここで「赤坂 香音もヨロシクッ!」とか言えたら俺も漢の中の漢だったんだろうけども、そんな男気は欠片も無かったのでやめておいた。





 またしばらく眠った後、ログイン。装備が整ったおかげか、今の俺たちは野良ウルフも軽く蹴散らせる――ほどでもないが、一体が相手なら苦労もせず倒せるようになっていた。


 ので、近場で大量に素材のカードを集めて解体、生産と言う作業を延々とやっている。ミニゲーム的な要素もあるので飽きが来ない。

 錬金ならフラスコを振りながら動かして属性の付与を集める感じだし、彫金は金づちとノミでカンカンやるミニゲームだ。彫金は何か間違っている気がしたが、ロボオンの世界ではこう言う作り方らしい。


 俺はスキルlv上げで作った装備やポーションを、素材取りに行く途中で出会った新規のプレイヤーさん達に配った。生産者かパイロットかは連れている精霊AIでわかるので、生産者には一度聞いてみて配った。自分が造ったものの方が愛着がわいて良いと言う人もいるだろうし。


 ほとんど初期装備だし、店に売っても素材の時よりはそりゃあ値段は上がるが、新規のプレイヤーさんに配ってこのワールドが少しでも活性化すればいいなと思ったのだ。今ここにいる人たちは、声優の発表があった後に残った、もしくは来た人たちなのでワールド移動することもないだろうし。


 中にはアイリスを見て悔しそうにしている人達もいたな。そんな可愛い女の子が精霊AIになるなら俺も生産者になればよかったー!? とか。そして相棒の精霊AIのワンちゃんに噛まれて半泣きになっていたけど。


 鍛冶や彫金のスキルlvも40を超えた時点でほとんど上がらなくなってしまったので、そろそろ片手間でやっていた錬金と、ほとんど手つかずの裁縫に移ろうとした時にコラムダさんからメールが来た。


「……マスターどういう意味でしょう?」

「……こう言う時は、「泣けるぜ」と言っておけば万事OKかな」


 コラムダさんのメールには『かゆ……うま……』とだけ書かれていた。ゾンビ化するほど人がチュートリアルエリアに押し掛けて休む暇が無いらしい。

 俺とアイリス二人の名義でメールを送った。


『がんばって。また遊びましょう』


 ――と。





 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。また、お待ちしております。


 知り合いがテレビに出てると妙な笑いがこみあげてきませんか? それは感情としては喜なんでしょうけど、香坂には笑われているとしか思われなかったようで。当然と言えば当然ですが。


 それでは次回で。

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