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第39話 そして時は動き出す

「――ここは……マイルームか?」


 寝ていてあまり空腹を感じなかった俺は、昼食を軽く食べてログインした。

 そこはログアウトした草原――とは全く違う、薄い水色の壁と木目柄の床の我がマイルームであった。


 テーブルとかソファーとかも全部部屋の片隅に置いたので、いかにもバランスが悪い。早くいろんな設備とか、家具とか置きたいなー……

 その端っこの一角に近づくと、つい最近聞いた規則正しい寝息が……


「うわあ……」


 アイリスがベットの上で眠っていた。それは予想通りだったのだが……予想以上に可愛らしいですね! 本当にありがとうございました!

 何て言うんだろうか……コラムダさんの手のひらに乗っている時も見たのだが、コラムダさんと言うおちゃらけ要素が無くなっただけで、子供の寝顔と言うのは保護欲を掻き立てられるものがあると同時に、日本人離れした整ったその寝顔は神聖さすら感じられるものであった。


 これを見て起こすと言う選択肢を選べる奴がいたら、よろしいならば戦争だ、と答えられるな……

 俺は静かにソファーに腰を下ろすとテーブルの上に手紙と金と束になったカードが置かれていることに気づいた。


 手紙の主は……コラムダさんだった。内容は……


『死ぬかと思いました』


 の一文だけ。なんのこっちゃ?

 これで伝わると思っているんだから、後は残りのブツに答えが隠されているのだろう。


 ……スライムのカードが十枚。野良ウルフのカードが十枚……なるほど。俺がいた頃より倍以上にに増えていらっしゃる。

 そして机に積み上げられた銀貨。手をかざすとウィンドウが出て1500ラムスとでた。これはスライム十匹、野良ウルフ十匹退治の依頼完了両の合計金額である。


 ……つまり、マスターのお役に立ちたいとアイリスがコラムダさんを頼って、二人であの後モンスター退治をしていたと言うことか。他にも素材カードも増えているし……濃密な時間を過ごしたようだ。


 ……まあ、死にそうになったのはコラムダさんが何かしらのポカをやらかしたのだろう。

 プレイヤーがいない状態だとほぼプレイヤーと同じ条件で過ごせる精霊AIと、防御能力は高いが敵のヘイトを一身に集めるサポートNPCメイドの組み合わせ。俺がいない分戦闘時間は長引くだろうが、まともに――一匹ずつやればそんな死にそうなめにあうわけがないし。


 そんな場面を見てみたかったなーと思いつつ、金をアイテムBOXに入れ、アイリスたちが手に入れてくれたカードを眺めていると、アイリスが、


「ん……」

「お、起きたか?」


 眠そうに目をこすりながらベットから起き上がった。


「あ、おはようございます。マスター」

「うん、おはよう」


 前回の様に慌てないのは、今回はログアウトする時の俺のアイリスへの命令が、安全第一でカードやアイテムをマイルームに届けた後は自由にしていいと言っていたからだろう。


「これ、頑張ってくれたんだな。ありがとう」

「……! はい!」


 お!? おお……アイリスの無表情が崩れてる!? それは子供っぽいとは言えないが、確実に嬉しそうに微笑んだ表情だった。

 俺がいない間に何かしらの成長があったのだろうか? いや、ステータスとかそういうことじゃなくてアイリスの精神的な成長が。


 アイリスがこちらに近づいて横から俺が見ているカードを覗き込んできたので、膝の上に座らせると嬉しそうにカードを手に入れた時のことを話してきた。

 ……うん。冒険譚と言うより、コラムダさんの失敗談の数々を俺は半笑いしながら聞いていったのだった……




「――それで、さっきまで姉さまと一緒に『精霊世界』で休んでいたんです」

「……精霊世界?」


 とりあえず、コラムダさんが部屋でドッキリしかけようと隠れているわけではないと確認した後、俺はアイリスに聞き返していた。さっきまでと言うのは、アイリスが眠っていた状態のことを指しているんだろうか?


「はい、姉さま曰く「リアル精神と時の部屋キタ―!」らしいんですけど」

「認めたくないけど、すげえわかりやすいわ」


 俺は何かに負けたように肩を落とす。アイリスは説明を続ける。


「私たち精霊AIはマスターがログインしている時はもちろんですが、ログアウトされている時でも命令されれば常に動き回ります」


 うん、まあ、よほどの外道でも無い限り、この可愛らしい子供たちに自分がログアウトしている間延々と素材取ってろなんて言えるわけもないが。


「それだと法律に引っかかるので、精霊AIには一日十秒ほどの休憩時間が与えられています」

「いや、十秒は短すぎ――ああ、そう言うことか」

「はい。サービスが終了して今はもう人がいないゲームサーバーを改良した世界と、そこのサポートAIだった叔父さまや叔母さまの処理能力を一時的に借りうけて、十秒を体感的に丸一日に引き延ばすのです」


 なにそれ、凄いうらやましい。

 処理能力――つまりは思考速度を加速させたのだ。パソコンで言うとCPUなどにあたる部分だろうか?


 パソコンで複数のソフトを起動させると途端に動きが重くなる。これはパソコンの処理能力が対応できていない状態だ。だが処理能力を向上させれば複数のソフトを起動させても動きは重くならない。


 人間が処理能力――思考速度を早くしても、現実の肉と言う身体に縛られている俺たちは、ものすごく考えられるだけであまり意味は無い……事もないが、一般市民にとってはあまり意味は無い。


 だがAI達はその肉体すらもデータで構築されているので、思考速度が十倍になれば身体も十倍の速度で動かせる。つまり十秒で丸一日分の休憩を取ることも不可能ではないのだ。


 ――VRシステムが開発された時。人間でも同じことができないか? と真面目に研究されていた。ご存じの通り、この世界の肉体は本物ではないから、思考速度を上げさえすればアイリスたちと同じように十秒を一日に引き延ばすことも出来るはずなのだ。


 ――まあ無理だったんですけどね。脳の処理速度を上げる=進化だしね。薬物処理、外科的処置などはどこの国でもNGだし……まあ、陰謀説などでは国の重要機関の人間はされているとかいないとか……


 まあ、そんなことは置いておいて。俺はアイリスたちにちゃんと休める場所があることを聞いて内心ホッとしていた。このワールドで他の精霊AIに会えなくてもそこでなら会えるのだから。


「そっかそっか……それで、アイリスはどんな事をして休んだんだ?」


 さすがにわざわざ向こうでも眠ったと言うことはあるまい。基本、AIは本体である筺体に異常がない限り眠る必要性がないみたいだし。人間は眠っている間に脳内の情報を整理するが、AI達は起きていてもそれができるし。


「私は姉さまと一緒にアニメを見てました」

「なん……だと……」


 俺は驚愕を驚愕を驚愕をををををを……

 ……こ、コラムダぁ!? キサマ、我が娘になんてことを!? アニメ……それはオタクへの第一歩め……見せる番組は精査しないと貴様のようなダメイドAIを生み出すと言うのに!


「マスター。私頑張って、マスターといっぱい話せるようになりますね!」

「う、うん。頑張れー」


 それが自分との会話の話題を作るためだった……もう、私、何も言えない!

 今はまだいい……頑張って見ている段階なら……これが楽しくて見るようになったらもうアウト。


 まあ、元々真面目な性格だからコラムダ化することは無いだろう……それにアイリスの表情や話し方の角が若干取れたのもアニメ見たおかげなら悪くないことだし。

 そう自分自身を無理やり納得させ、アイリスが見たアニメの話に移って行く……コラムダさん、こんな子供に一年戦争から見せるとは……ガチでコラムダ二号を作る気なんですね……よろしい、ならば戦争だ!


 あ、相手がダメイドAIなら、人間じゃないんだ! 僕にだって! とアイリスに気づかれないようにコラムダさんへの怒りを貯めておくのだった……





 フラグ回収話。コラムダさんが一緒にフィールドに連れて行ってもらえる条件がこれだったわけです。番外編のアイリスにはこうやって近づいて行くんですねー……良いことなのか悪いことなのか(笑)。


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。しかし、感想……うん、さすがは訓練されたロボオン読者様達。感想ではなくネタ会場となりつつありますね。いいぞ、もっとやれ(笑)


 いやいや。普通に面白かった、つまんなかった等の感想。誤字脱字などの指摘などもお待ちしておりますからね? 後、ネタっぽい文章をググったけどわからなかったという感想も募集中です。コラリスの部屋で彼女らが答えてくれる……はず?


 それでは次話もよろしくお願いします。

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