第38話 この料理を作ったのは誰だぁ!
「このみそ汁は……桑の実だ! そうだろう!」
「いいえ、全く違いますよ海○先生」
香坂は声だけではなく顔まで至高を追い求めるお方の顔になっていた……もう、声優やめてものまね芸人になれば良いのに。
「と言うかふざけてんの? なに、このたまご焼き。おいしいじゃないの!」
「ありがとうございます」
「そして焼きじゃけ。生焼けの部分がないかと隅々まで食べてみたけど、まんべんなく火が通っていて全部おいしくいただけたじゃない!」
「皮まで食べてくれるとは嬉しい限りです」
「さらにほうれん草のおひたし! 朝食はカロリーさえ取れば良いと言う現代社会に真っ向から対立するかのような食物繊維と鉄分を補給できるほうれん草! 報告! 連絡! 相談! の三つの大事を一日の始まりに思い出させてくれるなんて、何て心憎い演出なの!」
「大事ですね、ホウレンソウ」
「そして何より、色とりどりの食卓! 私は猫まんまを期待してたの! 味噌汁とご飯しかないのを期待してたの! 何このおかずの数々! 私の女としてのプライドをどこまで傷つければ気がすむの! もうやめて! 香坂 朱音のHPはもうゼロよ!」
「香坂」
「……はい」
「黙って食え」
「……了解」
朝っぱらからのハイテンション。俺の様に徹夜明けならともかく、この香坂はあの後風呂も入らず爆睡したらしい。そしたら朝の四時には目が覚めてしまったのだとか。だと言うのにこのテンションはちとおかしいだろ。
女子らしく朝の用意にたっぷり時間をかけて、朝食を食べに行こうとした時……ふと思いついてロボゲー・オンラインの運営……ラムダさんに電話をかけたらしい。AIと電話ができるとはいい時代になったものだ。
それで俺のログイン状況を聞いたら、四時半前にログアウトしたことを聞き、もしかして起きてるかなと家の前の呼び鈴を鳴らしたのだとか。
朝っぱらの来訪にはそう言う事情……思いつき? があったようだ。迷惑と言うほどでもないが、ないが……いや、やはり迷惑だろう。
「だってしょうがないじゃなーい。セイチの携帯番号とか、メアドとか知らないんだから直接尋ねに来るしか」
「いや、そう言うことじゃなくて昨日会ったばかりなのに距離感が……いや、今さらだな」
「?」
現実で初めて会った時いきなり抱きついてきた事を思い出し、距離感がどうだなどと言うのは今さらだと思ってその話題を打ち切った。
香坂 朱音は踏み込みの早さなら負けんとか、装甲(面の皮)の厚さが取り柄な人物なのだ。これで性格が悪ければウザい奴決定なのだが、人に好かれやすい物を持っているので直さなくて良いものなのだろう。
「それより、ロボオン結構ネットで騒がれてるよ? 良い意味で」
「へえ」
「さっき見たら通販サイトとかでロボオンが結構売れてたし。これなら私たちのワールドにも人が来るかな―?」
「そして日曜日に人が去る……と」
「いやぁああああああああ!? 不吉なこと言うの禁止ー!」
「食べさせてもらったからね。茶碗洗いくらいするよ? ……で、どうやって洗うの?」
最後の質問で、まかせる気が無くなったのは言うまでもない。
二人で台所に立ち、俺が茶碗や皿などを洗って、香坂が拭くと言う分担作業。やはりその時の会話もロボオンの物となっていた。
「え!? もうハイ・ゴーレム造れた人いんの!?」
「うん。何でも第一ワールドでギルド作って、五十人体制で一体造ったらしいよ」
うわー五十人でかー……そりゃあできるか。
「まあ、失敗作になっちゃったらしいけど」
「失敗?」
「うん。モノは試しとスキルレベルも上げずに材料がそろった時点でちゃっちゃと作っちゃったから、ほとんどの能力がランクFだったらしいんだけど」
「ふんふん」
「操縦性も機体の追従性も最悪で、歩くこともろくに出来ずに転んでばっかだったんだって」
「あっちゃー……」
「それで、相棒の精霊AIが自信無くしちゃって慰めている間に強制ログアウト。散々な結果だったって」
「ひ、他人事じゃないなー……」
そんなの機体のせいなのは明白だが、ハイ・ゴーレムの頭脳は精霊AIなので、マスターの思い通りに動かせず落ち込むのは想像できる。
よし……俺は落ち着いて、のんびり武器や防具を造ってスキルレベルを上げてから造ろう……
「そう言えば、昨日の食事中に聞いたけど、セイチはこのままソロプレイ続けるの?」
「ソロプレイじゃなく、ロボを造るのは一人で一から十までやりたいだけだからそう言うわけじゃない……まあ、そんな我がまま言ってる時点でギルドとかそういう組織には参加できそうにないけどな」
「そうかなー? そりゃあ効率プレイ重視のギルドもあるだろうけど、中には気が合う仲間でワイワイやるだけのギルドもあるから、そんなに難しく考える必要もないと思うけど」
「うーん……まあ、どっちにしろ、俺は第九ワールドから動けないし、人が集まらないとどうしようもないけど」
「う……すいません」
「いえいえ」
別に元から第九ワールドと言う人のいないエリアを選んだのは俺の意志だし。
でも……今の俺は人が増えてくれることを祈りつつある。それは香坂の心中を察してのこともあるが、アイリスのこともある。
精霊AIの友達が出来れば良いなーと思ったからだ。俺がいない間もあの世界に住むアイリスの周りに、プレイヤーや精霊AIがいない光景と言うのはかなりさびしいと思ったのである。
そう言えば、俺が第九ワールドから動けないようにこいつも動けないんだったな……まずはこいつを紹介しようか。アイリスは俺と同じで人づきあいがうまそうなタイプではないが、こいつならそんなことお構いなしにアイリスにかまってくれるだろう。
皿洗いが終わったら頼んでみるか。そう思いつつ、俺は手を動かし続けた。
最近の衝撃な出来事はちびま〇こちゃんの丸〇君の声が、カ〇ーユと同じ声だったということですかね……
いえ、ガン〇ム・ブレ〇カーのPV4弾の出来がすさまじく良くて、しかも笑えたもので。
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それでは次回もよろしくお願いします。




