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第37話 突貫! 隣の朝ごはん!

 コラムダさんは俺がログアウトする時に、


「セイチ様。僕は、僕はね……人間じゃないんだよ! メイド78星雲から来たウルトラAIなんだよ!」


 とかやっていたが、俺はアイリスの寂しそうに手を振る姿に、内心血反吐を吐きながらもにこやかに笑って手を振るのに集中していたので、脳みその中にまで入ってこなかった。


「西の空に明けの明朝が輝く頃……あれ、セイチ様? ちょっと、突っ込みはー!? セイチ様から突っ込みを取ったらいったい何が残る――」


 そして俺は現実に帰って来た。ふっ……今回は完膚なきまでにスルーしてやったぜ。今回あっさりとコラムダさんと別れたのは、休みの時はちょくちょく遊びに来ると本人が言っていたからだった。


 あの様子だと、まだラムダさんから隣の香坂さんちの精霊AIにされることは聞いていないようだ。まあ、これからチュートリアルエリアが忙しくなるのに、GMじゃなくて精霊AIにされるなんて聞けばモチベーションも下がるから言って無いのだろう。


「で、どうするかな……」


 現在時刻、朝の四時半前。VRシステムを外す。長時間プレイしていたのにかかわらず高性能の椅子のおかげで調子の悪い所はどこもない。そう、疲れもない所が逆に困ったものなのである。


 徹夜に強い体質のせいか、あまり眠気と言う物を感じたことがない。いや、子供の頃はそりゃあ、あの二人の姉にあっちこっちひっぱりまわされたからしょっちゅう疲れ切って眠たかったのだが、ここ最近は姉たちも落ち着いて……アレで落ち着いたのと言う突っ込みがどこからか入った気がしたが、気にしない。


 まあ、それでもベットで横になって目をつむれば普通に眠れるので、不眠症と言うわけではない。単に今は悩んでいるのは、このまま起きて家の細々とした事をやってしまおうか、それとも眠ってしまおうかと言うだけである。


「……朝食食べて、掃除したら寝るかな……アイリスには一時ごろにまたログインするって言ったしな」


 仮想世界……それも数時間のことなのに、頭にあった感覚がないだけで妙にしっくりこないことに驚きつつ、俺は台所へ向かった。うーん、メガネは無くてもあってもそんなに違和感は無いんだけどなー?







「と言うわけで、一緒に朝ご飯食べにいかない?」

「間に合ってます(にっこり)」


 朝食を造り終えたと同時に厄介も――げふん、げふん! 香坂がやってきた。

 朝六時の来訪……普通の男子なら、となりの女子高生が何の用だろうと胸をときめかせる所だろうが、この点出会いが最悪の方から数えたほうが速い出会い方だったのでそんなときめきとは無縁だった。


 一応モニター越しで追い返すのもなんだから、玄関から出て要件を聞いたら、先ほどの様な返答が返ってきたので、笑顔で帰れに等しい宣言をしてやった。と言うのに目の前の少女は、あきらめずに目を閉じて鼻をぴくぴく動かし……


「バカな……一人暮らしの男子の部屋からみそ汁の匂いがする……だと?」

「いや、そりゃあするだろ」

「普通しないよ! 男の子が料理できるって言ったらチャーハンくらいなもんだって、友達が言ってたし! あ、わかった。インスタントみそ汁か」

「いや、普通にダシ取って作ったよ」


 カルチャーショックを受けたように泣きそうな顔になる香坂……いや、ショック受け過ぎだろ。


「そ、そんな……そしたら、朝昼晩と外食かコンビニの私の立場は!?」

「料理しろよ」

「出来るわけないよ! 見たことも聞いたこともないのにそんなの無理だよ!?」

「そんなにか。ズタボロの美少女が運ばれてこない限り出来ないのか?」

「むしろそれでも逃げ出すよ!」

「一話で終了しちゃうだろうが!?」


 あー……もう。見た目は大和撫子風の美少女なのに、料理できないとか。残念な子だなー……うちの姉たちですら、多少は出来るぞ。一番の得意料理を聞くと二人揃って人間とか答えちゃうけど。


 そんなわけで、香坂のもくろみと言うか用は終わった……はずなのに、帰らない。いや、あろうことか、


「食べさせてください……」

「そんな、敗北宣言したように言わなくても」

「私の中の女として大切なものが打ち砕かれたんだよ……もうお嫁に行けない……」

「人聞きの悪いこと言ってんじゃない……まあ、それはともかく、やめとけ」

「え?」


 俺は香坂のためを思って一緒に朝食を取る――と言うか、家に上げるのを断ろうとした。


「ええー!? まさか、女の子を家に上げるのを断る男子がいるなんて……ここは、朝食に睡眠薬を混ぜて、私にいやらしい事をするチャンスじゃないの!?」

「それ何てエロゲ? いや、そう言うことじゃなくて……」

「ふ、ふーん。セイチってエロゲーなんてするんだ……」


 そっちに食いつくのかよ!?


「そりゃあ、じいちゃんに勧められたのは一通り……そう思うと、親子三代で同じエロゲやってんのか……うちの家族凄いな」

「おじいちゃんは子供と孫に何をすすめてんのよ!?」

「まあ、じいちゃんは凄いけど……死ぬ時は孫達に囲まれて死ぬより、自分が決めたアニメ、ゲーム、エロゲをやってから死にたいらしいし」


 そしてそんな風に誇らしげに俺に語った後、婆ちゃんにボコボコにされていたし。


「すごいおじいちゃんだね……いやいや、それより一緒に食べさせてよー。お代なら払うし、ベットの下とか、パソコンのDドライブを見たりはしないから!」

「そう言うことじゃないんだけどな……まあ、厄介事に巻き込まれる覚悟があるなら良いけど、どうする?」

「厄介事?」

「ああ、厄介事だな」


 あえて詳しくは説明しない。言っても信じるかどうかは微妙だし。


「ふふん。私がそんなことでおびえると思ったら大間違いなんだから」

「はあー……じゃ、良いけど」


 なぜかドヤ顔の香坂を俺は家に上げた。あーあー……知らんぞー……

 毎週土曜日の夕飯は、二人の姉神が食べに来ることを知らない香坂。一人は犬並みの嗅覚をもっているから、自分たち以外の女子の匂いがあればすぐ気付く……二人の姉神はそんな面白そうなことを見逃す筈がない……


 そして、あの姉神たち相手に守りきることは不可能と悟っている俺は、素直に香坂の事を話す。香坂、終了のお知らせと言うことになる。

 まあ、殺されたりはしないし、酒の肴に色々聞かされるだけだろうから命の心配はしなくて良いだろう。多分。


 おじゃましまーすと元気に俺の家に上がった香坂の後ろ姿を見つつ、俺は盛大にため息をついたのだった……




 

 遅くなりまして申しわけありません。


 今回でコラムダさんとはしばしのお別れ……その代わり香坂が合流することになりました。二人が出会う日はいつの日か……いや、直ぐのはず?


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます! またお待ちしております。


 それでは次回もよろしくおねがいします。

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