第28話 壁役が女で何が悪いんだ! 俺は男だよ!(外道)
正直言えば、コラムダさんと言う壁役がいなければ死んでいただろう。
――野良ウルフ。奴はそれほど強大な敵だった……
なにせ、二十三回である。二十三回――俺とアイリスはそれぞれの剣で合計二十三回攻撃を与えた。それでようやく、奴は力尽きた。
スライムの二倍の強さ? 冗談じゃない。三回叩いて死んだスライムとは比べ物にならない頑丈さである。確かにスライムは弱点に全てヒットしての回数なので、そこまでおかしくないのだろうが……
幸い、野良ウルフはコラムダさんの身体か悲鳴のどちらかが大層お気に入りだったらしく、攻撃しているこちらへとその牙を向けることは無かったが。
「うう、汚されちゃった……私、汚されちゃった……」
この悲劇のヒロインぶっているのがコラムダさん。噛まれたり、裂かれたりして身体は傷だらけだ――が、傷口は白く光ってそこから白い粒子が漏れていると言う感じになっている。まあ、R18タグが付いていなかったからスプラッター!? 的なことには出来ないんだろうけど。
俺も傷ついたらあんな感じになるんだろう。設定的には俺たちの体はマナと言う粒子で出来ているらしいからな。
コラムダさんは地面に座り込みながら、涙目で俺を見上げて、それはとてもどうでもいい事を聞いてきた。
「セイチ様……狼との間に子供ができたら、子供はオオカミ男かオオカミ女になるんでしょうか?」
「遺伝子学的に不可能なんで気にしても無駄――って、AIがどうなのかは知らないですけど」
「もし双子が生まれたら……晴れと曇りって名前にします」
「おい、いい加減にしときなさいよ」
そんな会話をしているうちにコラムダさんの傷口はその上の服ごと再生して、完璧に治っていった。
「くっ、サポートNPCの身体じゃ無ければあんなオオカミ、鎧袖一触に蹴散らして悪夢を見せてやりますのにぃ!」
コラムダさんの言葉に、金平糖が食べたくなる今日この頃である。
「と言うか、サポートNPCって何ができるんですか? 頼んでもいないのに敵の注意をひきつけて壁役になることですか?」
「はうっ!? セイチ様から、暗黒のオーラが出ている気がしますよ!?」
「大丈夫。もう一人の自分と戦って、パラディンになりますから」
とりあえずコラムダさんに皮肉を言って、へこませて反省させる。さすがに、あんな絶望的な戦いをもう一度したくはない。
コラムダさんがへこんでいる間にお使いにだしたアイリスの方を見ると、手のひらサイズになって飛んで行ったアイリスがちょうど戻ってくる所だった。
「ただ今戻りました」
「はい、おかえりー。どうだった?」
「野良ウルフ。無属性。lv4。ランクDのカードでした」
「こっちのとlv以外は同じか。こっちはlv6だったからこっちの方が強かったんだな」
予定になかった戦闘はさんざんだったが、予定になかった報酬も得られた。野良ウルフのカードを解体して手に入れられるのはどんな素材なんだろう? ちょっと楽しみである。
「でも、lvが2違うとはいえ、魔法一発で倒せたんだよなー……クリティカルヒットしたのか、それとも魔法の威力そのものが凄かったのか……」
ちなみにアイリスと同時に同じ呪文を唱えたのは『二重詠唱』と言うスキルである。威力は一人で出す時の1.3倍。消費は七割程度で出せるようだ。アイリスとの勉強会の賜物である。
威力が倍になるわけじゃないし、消費も減るどころか、俺とアイリス両方の消費MPの七割なので、コストパフォーマンス的にどうなの? 的な感じだが、アイリスの方は戦闘が終わって小型化すればプレイヤーより数倍早く回復するので、そこまで悪くは無いと言うとこだろう。
そんなスキルを利用した一撃――それで一撃で沈めるのだろうか?
アイリスに聞いてみると、
「きっと、発見されていたのは姉さまだけだったので、私たちの攻撃が不意打ちになってクリティカルヒットしたのだと思います」
「ああ、なるほど」
やっぱり不意打ち要素はあるのか。
今回の件は呼び寄せてしまったのが一匹だったら、とても良い戦果で終わった所だったのかもしれない。まあ、俺たちの通常攻撃の威力の低さを確認できたのは決して無駄じゃないとは思うけど。
さて。薬草を採取しながらも歩き続けて――そして予想外の戦闘で足止めを喰らってしまったが――背後に見える始まりの遺跡への柱と大岩を見比べて……残る道中は半分くらいか。
「じゃあ、行きましょうか。コラムダさんの体調がやばそうなら、もう少しここで休んでもいいですけど」
周りの黄色い煙はほとんど動かない――つまりスライムばかりだった。まあ、身近にいたのはコラムダさんの声に引き寄せられたから居ないんだろうが……一応野良ウルフも雑魚モンスターだろうから、直ぐにリスポーンするんだろうけど。
「いえいえ。傷口はふさがってますし、HPも三分の一くらいしか減ってませんから。直ぐに回復すると思います」
――あれで三分の一ですか。俺たちが二十三回攻撃する間に、それ以上の攻撃をモロに喰らっていたはずなのに……
「コラムダさんには壁役をやってもらいましょうか」
「……メイド服の女の子に壁役って、鬼ですか……」
「ええ、鍛えてますから」
「そっちの鬼っ!?」
とは言え、スライムに壁役は必要ないし、野良ウルフとは戦いたくない。MPが全回して、周りに一匹しかいないことを確認してからの不意打ち魔法での一撃なら考える……程度だな。
俺たち――特に肉の壁が決定したコラムダさん――はさっきより慎重に、動きがある黄色い煙の方には近づかないように迂回しつつ、目的の大岩へ足を急がせるのであった。
タイトルは「ぼくたちには、コラムダさんがいる」と悩みましたが、ロボット物(?)にはこっちのほうがふさわしい……でしょうかね?
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