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第18話 模様替えと勉強会

 さて、ようやく念願の精霊AI――アイリスが仲間になったことだし……冒険だー!

 ……などと言うわけにはいかない。

 兎にも角にも、マイルームの機能とアイリスが出来ることを調べないといけない。屈強な精霊AIが出てくれば、冒険でも良かったんだが……見た目は完璧な幼女である。この子を頼りに、無茶をする――ここは仮想世界で、相手はAIだから……などと言う割り切りはどうやっても俺には出来ない。


 幸い説明書はアイリスが生まれる前に読んでいたので、アイリスに色々聞いて行くだけで済むだろう……と言うのも、マイルームの多くの機能は精霊AIが生まれるまでは使用不能だったのだ。


 俺はソファーに座ったまま、未だに当然のように俺の膝の上に陣取ってこっちを見ているアイリスに問いかける。


「アイリス。もう、マイルームの機能は使える?」

「はい。部屋の模様替え。家具の配置と収納。アイテム倉庫の使用。部屋の増築。設備の増設が使用可能です……けど」


 アイリスはシュンと落ち込んだ。


「部屋の模様替えと家具の配置と収納、そしてアイテム倉庫以外の機能はお金や素材の不足で出来ません」

「いや、そこはアイリスのせいじゃないから。むしろ、スライム一匹倒しただけでそんなこと出来たらびっくりだし」


 俺が落ち込むアイリスの頭を撫でながらそう言うと、アイリスは気持ちよさそうな顔をした。いや、基本無表情だから、本当に微妙な変化だけど。それがわかるのはアイリス以上に鉄面皮な姉神一号と二十年以上も付き合っているからだな。


 アレと比べれば、アイリスなぞ百面相もいいとこですよ。


「じゃあ、模様替えをしようか」

「はい、マスター」


 俺が立ちあがろうとする前に、アイリスはポンと言う音と共にコラムダさんが手のひらサイズになった時と同じようなサイズになって宙に浮いていた。

 うん、可愛い可愛い。コラムダさんがいきなりコクピット内で小さくなっていた時は心の中で「落ちろ! カトンボッ!」と木星帰りの男が叫んでいたが、アイリスが小さくなる分には素直に可愛いと思えるなー。なんだろうなー、この差はー。


 部屋に散らばっていたベットや机などを端っこに持っていく。この部屋はちょっと広すぎる。

 それに。歌姫専用マイルームを見れたおかげで、マイルームに鍛冶場などを造ることができるのは確認済みだ。

 

 別に造れるようになってから、色々動かせばいいだろうと思うだろうが、あまりベットとか机とかの位置を変えるのって好きじゃないんだよね……テスト前に部屋の模様替えをする人間の気持ちがわからない人間だし。


 俺は、テスト勉強をするのが嫌ならゲームをすれば良いじゃない的なマリーさんだったからな。さすがに大学一年の試験勉強にそんな余裕は皆無だったが。

 と言うわけで、後から家具などを大幅に動かさないで済むように、生活系の家具を端っこに寄せておこうと言うわけである。


 モニターを机の椅子やソファー、ベットの上からも見やすい壁の位置に移動させる。横になりながらテレビ――になるのかどうかは知らないが、映像を見るのは至高の贅沢にして譲れない贅沢であるby草壁 千一。


 アイリスに指示するだけで、ポンポンとベットなどの家具が瞬間移動するのは見てて楽しかった。うう、癖になりそうだから早めに切り上げよう。危うく発症したことのない不治の病、中二病が発症しそうだった。


「壁の色とか、変えられる?」

「はい」

「んー……目に優しいのは緑って言うけど」


 赤色は興奮させる作用があり、青色は逆に鎮静させる作用がある。なので、寝室には水色かそれよりもさらに薄い青色が使われることが多い。

 これは視覚の問題では無く、脳内の問題なので、本物の視覚じゃなくても脳が青色を見ていると思えば効果は現れる。ので、どうするか。


「……天井と壁を薄い水色にして、床を木目柄にしようか。できる?」

「――こんな感じでよろしいでしょうか?」


 アイリスの聞き返しと共に、俺が言った通りに部屋の色が変わった。おお……でも、木目の床で土足だと変な気分になるな……

 まあ、落ち着いた色合いにはなったな。一角だけにモノが集中している今の状態は間違ってもいい部屋の模様替えとは言えないが、これから設備を造って行けば見れるようにはなるだろう。


「アイリスは、これでいい?」

「え? どう言う意味でしょうか? マスター」

「ん? だって、俺がログアウトしている時は、この部屋で大体待機しているんだろう? だったら、アイリスが過ごしやすい部屋の方が良いじゃないか」


 精霊AIは説明書で呼んだ限り、レベルが上がると、プレイヤーが作った武具を他のプレイヤーに売るショップの店員をやったり、フィールドに一人でてモンスターと戦って素材を集めたりも出来るようになるらしい。


 ――が。それは彼女たちが成長したらの話だ。幼女な見た目通り、その精神面は幼いみたいだし。AIだから、知識、知能のレベルでは人間の俺なんかより上だから、しっかりしているように見えるんだけどな。


 ……あのハチャメチャなコラムダさんですら、ラムダさんから見れば人見知りが激しいとのことだし。

 そんなわけで、色々いじくった後に何だが、部屋で待機していることが多くなるであろうアイリスの意見は重要だ。


 アイリスは言われてから部屋をきょろきょろ見回して……


「よく、わかりません……」

「だろうな」


 肩を落とすアイリスの小さな頭を人差し指でグリグリなでてやる。比較対象が無いのだから、どこより良いとかわかるはずもない。データで調べたものと、データとはいえ自分で感じたものの差異はある。


 過ごして行くうちに、不満が出たら変えてやろう。

 さて、後は……


「この世界の歴史とか、この場所のこととか調べなくちゃな。歴史を映像としてモニターに流して、この辺の地図を本として見るか……アイリスも知ってるかもしれないけど付き合ってくれるか?」

「はい、マスター」


 俺が二つの本を本棚から取り出して、一つをモニターに放り込むと……おお、映画っぽいのが始まった。

 そして残りの一つ――地図帳を手にソファーに座ると、当然のようにさっきの幼女の大きさに戻ったアイリスが膝の上に座った。


 ……まあ、いいか。

 俺たちは仲の良い兄妹……いや、この年齢差だと下手したら親子? ……みたいな感じで、歴史映画を見始めるのだった。





『歌姫』と言う存在が、この世界――『ゼロ・ガイア』に異世界の技術の産物である『ハイ・ゴーレム』に乗って現れたことから始まった。

 増え始めた強力な巨大モンスターに絶滅の危機に陥った人類に『ハイ・ゴーレム』の技術を伝えるために、それを操る才、それを造る才を持つ人間――つまりは俺たちプレイヤーだな――を集めたのがここ、『始まりの遺跡』だった。


 俺たちはこの大陸で修行を積み、ハイ・ゴーレムを生産し、それを操り、他の大陸へその技術や戦力を広げて行くことになる……ようだ。

 一応の目的はそんなことだが、自由度が偉い高いので、ストーリーに沿わなくても全然のOKみたいだ。まあ、普通のMMOもそうだしな。


 さて。二十分ちょいの映画から得た知識はその程度で、後は地図帳に目を落として手似れた情報だな。

 この遺跡から東が風の草原。南が火の荒野。西が地の森。北が水の湿地。


 風とか言うのはその土地の属性を現していて、その属性の素材やモンスターが出やすいらしい。この世界には、火、水、風、地の四属性があるようだ。

 ……とは言え、どの属性でどんな武器や防具が造れるのかわからないからな―……


「アイリスはどこから行った方が良いと思う?」

「……そうですね。パイロットや生産者の両方に重要なのが『魔法』と聞いています。私の初期属性が『地』ですから、まずは地以外の属性の場所で発掘などを繰り返してコアを見つけると良いかと思われます」

「……コア?」


 あっれー? なんだか、既に持っている気が……


「はい。コアはハイ・ゴーレムのコアになるのはもちろんなのですが、魔法を覚える触媒になったり、強力な属性の武器や防具を造るのに使用したり、鍛冶場などの設備を造るのにも必要になります」

「……えーと、アイリスの初期属性が『地』だと、俺も地属性の魔法は既に使えるようになっているってこと?」

「はい。ですので、地属性以外のコアを手に入れて、全属性の魔法を使えるようになるのがよろしいかと」

「……アイテム倉庫、オープン」


 ボイスコマンドを口にする。コラムダさんが預かっていたアイテムがあるであろう、マイルームの機能の一つであるアイテム倉庫のメニュー画面を開いて、スライムを倒した時に手に入れたアイテムを指先でタップする。


「……とりあえず、目指すのは地と火以外だな」

「……さすがです、マスター」


 俺は赤いコアを手に持ってアイリスにそう言うと、アイリスは呆れたような驚いた様な微妙な感じで俺を称賛した……






 最初に手に入れたコアでロボを造る……と言うのはドラマチックだとは思うのですが、レベル一のスライムから手に入れたコアだと性能はそこまで高くないので、火の最初の魔法を覚える触媒に消えることと相成りました。


 次回から修行編です。装備を整え、クエストを受け、フィールドに出で素材を集めて、いろいろ作ってスキルレベルを上げるお話となります。間に日曜日の各ワールドの歌姫の発表も入れないといけないので、修行編は長くなってしまうと思います。そして修行編が終わらないとロボットが造れない……すいません。


 お気に入り登録、感想、評価をしてくれた皆様がた、ありがとうございます。これからも皆様に楽しんでいただけるようがんばっていきます。


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