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プロローグ2

 もうお嫁にいけない……いや、もとから嫁には行けない性別なわけだが。

 そんなわけで、両親にすら見せたことのない胃の中までばっちり検査されてしまったわけである。なんの問題もないとのお墨付きだが、それだと一日入院してまでの検査は一体何のためだったのか……などというのは贅沢な発言であろう。


 同室の脚の折れた中学生の少年が、ヘルメットタイプのVRシステムを持っていたのでいろいろと話を聞かせてもらった。最近のは一分かからずに仮想世界にダイブできるが、一昔前のはダイブするのに十分近くかかっただの俺より若いのに随分詳しかった。


 俺がロボゲー・オンラインをやってみたいという話をしたら、複雑な顔をした。


「あれ、ベータテストやってないんですよ。だから、ゲームソフトを買うまでどれほどのものなのかはCMや雑誌なんかで判断するしかないんですけど……それにしたってソフトの値段が五万円ですから。普通のVRMMOの2.5倍の値段はちょっと初日から手を出すには勇気が要りますよ」


 むう。俺はVRMMOのソフトの値段がどんなものか知らなかったため、百二十万円と言う値段を見た後には安いじゃんとすら思っていたのだが……なるほど、普通なら二万円程度で買えるものなのか。


「その分、月額は千円で安いんですけどね。それでも、五万円は……一昔前に問題になった有料ベータテスト状態になったら笑えないってことで、ネットの世界じゃ様子見派が結構いますよ」


 有料ベータテストとは簡単に言うなら『金払ってやるゲームってレベルじゃねーぞ!』のことらしい。バグが満載で、当初言っていた機能が全く実装されていないのに値段は据え置きと言う擁護できない暴挙に走った会社があったのだとか。


「まあ、今回ロボオンを作った会社は、名作VRMMOを数多く作った会社で実績がありますから、そんな心配はいらねーよっていう人も多くいるんですけど」


「そもそも、なんでベータテストをやらなかったんだろうな?」


 俺の疑問に、あー……と少年は呆れたように、


「なんでも開発スタッフの一人が、『ロボットものと言えば、初めて乗った機体のスペックで勝利! がお約束だろ!』とか言ったらしくて……それで事前情報は購買意欲がわく程度に小出しにしているんだとか……いや、バカなんじゃないかと」


 うん。俺はそういう馬鹿が大好きです。俺はそういう馬鹿が大好きです。大切なことなので二度言いましたよこのヤロー。

 

「まあ、それほどの自信作ってことなんでしょうけどね。僕も評判がよかったら親に誕生日、クリスマス、お年玉の全てを前借して買うつもりです」


 だとしたら向こうの――仮想世界でまた会うこともあるかもしれない。サーバーがいくつもあるらしいから、その確率は限りなく低いだろうが。

 俺たちは看護師さんに怒られるまで二人でずっと話し合っていた。




 無事に退院をした俺は、少年から勧められた最近のロボットアニメを見ながら二週間を過ごした。最近のは画像がすごいが血生臭さがないな。いや、人は死ぬんだが血が出ないとか最近の論理コードは厳しすぎるぜ。いや、別に血が見たいというわけじゃないんだが……


 姉神様からもらったVRシステムは椅子型だった。のんびりとできるマッサージチェアに似ている。これはヘルメットとシステム同期してより快適に、より安全に仮想世界にダイブできるのだとか。


「ま、少し高くなったが。反省はしていない」

「問おう。あなたが、私の神様か?」


 うちの家族の特徴として、口下手でうまく愛情を表現できないが、その実中身は甘々なので時折こんなサプライズが待っているのだ。

 すでに病院から持ってきた俺のパーソナルデータは入力してくれたらしいので、明日の発売日を震えて待つだけである。


「ん? 全裸待機とやらをしないのか?」

「あれって都市伝説の類じゃね?」


 とりあえず、姉が帰った後に全裸で待機してみた。後悔はしている……


マジで全裸待機をしても主人公は二十歳です。主人公は二十歳です。大切なことなので以下略。

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