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第16話 再ログイン そして卵の様子が……?

 愚痴と言うよりは弱音を聞き終えた俺は、タラコスパゲッティをサッと食べ終えて会計に向かった。

 私が出すよ……なんて言われたが、さすがに大学生が高校生におごってもらうわけにもいかない。いくらレシートのほとんどが香坂が頼んだ料理で埋められていても、だ。


 香坂はこの後、ぐっすり眠ると言った。久々にゆっくり眠れそうだと。

 その顔はさっきまでの無理やりな明るい笑顔ではなく、疲れが出ていたが自然な笑顔だった。


 こいつ……結局、誰かの悪口を言わなかったな。愚痴って言うのは、誰かの悪口になりやすいもんなんだけど。天然で優しいのか、今日出会ったばかりの俺に話すのはまずいと思ったのか遠慮したのか……


 少なくとも――俺はこいつのことが気に入った。友達と呼べる程度には。

 欠伸をしながら香坂家へ消えて行く彼女を見ながら、俺も自宅の玄関に入った。あんだけ食べた後にすぐ寝たら太るぞ……と言う突っ込みを我慢し続けた俺に心の中で拍手喝采を上げながら。




 ――そんなわけで仮想世界に再ログインである。風呂、戸締り、元栓の確認、電気をVRシステム以外は消して……暗闇に支配された部屋で手探りでヘルメットを装着。

 自分の精神状態とか、脳波とかはよく分からないが、ログアウト勧告が出ても強制ログアウトされるまで向こうで過ごす所存である。


 現在時刻は夜の九時。さて、どの程度向こうに居られるか……

 視界にロボゲー・オンライン起動の確認メッセージ。最初の時のようにYESを強く睨み、十数えて……


 俺は香坂のマイルーム――ではなく、あのガラスがドーム状に覆っている始まりの場所へと降り立った。両手にはログアウトした時に抱いていた、精霊AIの卵をしっかり抱き続けていた。


「ま、他人のマイルームでログアウトしたら、こうなるよな」


 予想はしていたことなので大した驚きもない。むしろ、香坂のマイルームに香坂がいない状態でログインできたら、ラムダさんに確認を取る所だった。仮想世界とはいえ、他人の家なんだし。


 外に広がっているのは草原。天気は変わらずの青空。コラムダさんとの会話じゃ、天候以外にも時間の流れがあるみたいだから、夜になるのだろうか? そこらへんも自分のマイルームで調べてみよう。


 背後の柱がマイルーム行きの柱なのを確認して、


「移動、マイルーム」


 ボイスコマンドを口にすると、香坂のマイルームへ移動した時と同じ、浮遊感が一瞬襲い、


「……悲惨な所を想像していたけど、十分良い部屋じゃないか」


 さすがに歌姫専用のマイルームと比べたら、広さは半分程度だろうか? いや、あのバカみたいに広い部屋の半分である。バスケットコートの半分くらいの広さか。縦、横ともに十五メートルほど……いや、広い。


 内装はさすがに壁一面に水槽などは無い。普通に白い壁があるだけである。

 テーブル、ソファー、ベッド、本棚、机、椅子、壁にあるのは液晶テレビ? モニター? みたいのもある。


 机の上には一冊の本が置かれていて、マニュアルとあった。何だか、仮想世界で本を読むって言うのも、変な気分だな。

 部屋の中心にあるテーブルの近くに置かれているソファーに座って、卵を膝の上に置きながらマニュアルに目を通す。


 さすがロボオンスタッフ。マニュアルとでかく描かれている表紙には、さりげなくVの字が刻まれている。

 俺はそんな些細なことでやる気を出しながら、マニュアルに目を通して行った……





 パタン、とマニュアルを閉じた。詳しいことは書いていないが、一通りのことは書いてある――つまり、ゲームの説明書に相応しい内容だった。

 この世界の設定……と言うか、歴史みたいなものを知りたければ、本棚の本を読むか、本を壁のモニターに放り込めば映像としてみられるようだ。うん、おかしいのはわかっているさ……でも仮想世界の技術に突っ込み入れるのもどうかと思うんだ。


 とりあえず、おのれの常識をぶっ壊すために、本棚の本をモニターに放り込もうと立ち上がろうとして、膝の上の卵を手にとる――


 その瞬間――卵が熱く輝きだした。






 今回から精霊AI編です。

 生まれてくる子たちがコラムダさん化しないように祈りましょう!

 ……いないとは思いますが、コラムダさんファンの人は、本人が復活? するかもしれないので、それまでお待ちください(笑)

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