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第13話 それは彼女の復活フラグ

 元の姿に戻った香坂から、なぜか正座を強要され、女の魅力は胸なんかでは無いと延々と説教されること十分くらい。ようやく解放された俺は、別段理不尽を感じて怒ることもなく、ソファーへと座り直した。姉たちのおかげで慣れてしまっているのである。


 別段、元の姿の胸も普通にあるんだから、この手の話は大丈夫だと思ったんだけどなぁ……姉神二号には禁句なのは身にしみてわかっているんだけど。いや、そもそも俺はあの姿が良いと言ったのは、エルフなことも含めてだったんだが……もう、面倒くさいので放っておこう。


 ――ともかく。これからどうするかってことだよな。

 変身せずにあんな所に居る彼女が全面的に悪いが、だからと言って俺より年下で声優として頑張っている彼女の前途を閉ざしてしまうのも後味が悪すぎる。


 無論、俺は誰かにしゃべるつもりもないし、提示版とかに書き込んだことも無かったので、この手の話題を投下してもスルーされることは間違いない。

 問題なのは、情報漏洩そのことに関してだろう。大物声優に驚くほどの完成度のVRMMO……そんな、様々な会社が力を入れている企画の重要機密を、サービス初日にプレイヤーにバレてしまったこと自体が問題なのだ。


 俺が黙っていることは大前提だとしても、問題なのは……


「ラムダさんが、問題だと思って運営に報告したら……ってことだよな」

「うん……会社に迷惑が掛かっちゃうかな~……って」


 香坂曰く、別段自分の進退はどうでも良いとのこと。

 そもそも彼女は、ロボオンとは別のVRMMOで歌い手の職業をやっていたら、今の会社の先輩に誘われたらしいのだ。

 まだ高校生だし、声優と言う道を選ぶ気は誘われるまで全然なかったので、それほど声優業界を追われることには危機感がもてないらしい。


「そもそも、女の子AとかBとかしかやってないしねー……知名度なんて無いし、顔出しも今回が初めて。他は一流から中堅の皆様で固められて、この第九ワールドだけ無名の新人声優なんて、絶対イジメだ……って落ち込んでたんだもの」


 仕事も明後日の日曜日まで無いから、学校をサボって自分が歌姫としてデビューする仮想世界にいち早くダイブしてみたと言うことらしい。

 そして――あまりの完成度の高い仮想世界に驚き、次に恐怖した。マジで、こんな所で歌ったりするのですかと。


 しかも、第九ワールド……日曜のサプライズイベントがあるまでにすら、人が集まりにくい世界だ。第一ワールドなら、新人の自分が歌姫だろうと関係ないと言う攻略組のおかげでそこそこ賑わうだろうが……


 そうして落ち込んでいたと言うわけらしい。気持ちはわかる。こりゃあ、マジでいじめに近い。下手すれば、この第九ワールドを選んだ俺みたいな奴がいても、好きな声優がいれば別のワールドに移動するだろう。


 自分のせいで、ワールドに人がほとんどいないと言う恐怖。イベントで歌を歌っても、誰にも見向きもされない恐怖。

 俺だったら、銀河の果てまで逃げているレベルだな。来たなプレッシャー! とか言っている場合では無い。


「なんで、会社は新人声優の香坂を推したんだ?」

「うちの会社小さいし、ベテランは男の人ばかりだし、VRMMOの経験者ならもしかしたら……ってことで」


 うっわー……理由が軽ー……VRMMOをやっていたから、どうだと言うんだ? 新人を育てる気がまるでないとしか思えないぞ。


「断ろうにも、新人が仕事を選ぶなって前から言われてたしね……新人仲間からは、逆に嫉妬の視線が送られましたー……もう辞めておけばよかったかなぁ? 一応、アニメで自分の声は流れたわけだし……一言だけど」


 涙目でテーブルに突っ伏す香坂。現実でもかなりのプレッシャーを受けて来たらしい。何と哀れな……


 まあ、ともかく。俺にはこれ以上どうしようもないのは事実である。どうにかできる人に登場していただくしかないのである。

 俺はメニュー画面を呼び出すと、サポートに問い合わせする。電話の呼び出し音が鳴り響き、ガチャッと言う受話器を取る音が耳の近くからした。だが、声は天から出る。


「セイチ様。何か問題がありましたでしょうか?」

「ええ、実は――」


 俺のいきなりの行動に口をパクパクさせている香坂はとりあえず放っておいて、俺はラムダさんに事の顛末を話した。


「――なわけで、俺も黙っているんで、ラムダさんも黙っていただけると……」

「かしこまりました」

「はやっ! いいの!?」


 香坂が立ちあがり、天上に向かって叫ぶと、


「はい、私はプレイヤーの皆さまのサポートAIなので」


 ……うん。最初に思った通り、この人、自分の生みの親をサポートする気はなかったようである。だからこそ、あっさり俺も相談させていただいたわけなのだが。


「ですが、朱音様の不注意な行動は他のプレイヤーの皆さまに迷惑をかけかねない行為でしたので、ペナルティーを受けていただきたいと思います」

「まあ、それくらいなら全然OKですよ。俺は既に迷惑をかけられているわけですし。むしろ、痛い目にあわせてやってください」

「他人事だと思って~……まあ、いいけど」


 香坂はホッとしながらも落ち込んだ。


「それでは、朱音様にお渡しする予定だった高レベルの精霊AIをちょっと問題のある子に代えさせていただきたいと思います。性能的には問題ないので、そこはご安心してください」

「それはやめておきましょうラムダさん!」


 仮想世界なのに、背筋がめちゃくちゃゾクッとした俺は、すぐさま返事を返しておいた。なぜだろう? その罰は俺の全身全霊を込めて阻止しなければならない気がしたのだ!


「? なんでセイチがそこまで慌てているのかわからないけど、私は別段かまいません。むしろやらかしたことの大きさに比べれば、軽い罰だと思いますし」

「かしこまりました。それでは精霊AIのお渡しは最初のイベント戦の前にさせていただきます。あの子、今日から多少忙しくなりそうなので」


 そうして、ラムダさんとの通信は切れた。

 ……よし。


「香坂! 俺、ワールド移動するわ。元気でな!」

「ちょーっ! 下手したら最初で最後の第九ワールドのお客さんになりそうなあなたを逃がすわけにはいかないー!」

「はーなーせー! いやな予感がするんだ! せっかく黒歴史にできそうな話題を握った奴が復活しそうなんだよー!」

「意味がわからないから!」

「地球がもたん時が来ているのだっ!」

「エコだよ、それは!」 

「おしい! 濁点が足らない!」


 結局――ラムダさんに『俺がワールド移動しないこと』が黙っている条件として追加されるまで、俺たちはドタバタと香坂のマイルーム内を走り回ったのだった……






 投稿を始めてから二週間がたち、日別PVは、初日は273PVだったのに今ではその十倍近くになりました。ユニークPVは初日が102PVだったのがその五倍ほどになりました。合計PVは18000、ユニークPV3700にもなりました。


 お気に入り登録数もいつのまにか80名も超えて、評価ポイントも10名の方が入れてくださいました。感想も五件入っております。


 皆様、本当にありがとうございます。


 とくに感想で次回の話の予想を立ててくださった方々、本編よりも予想が面白かったりして大変困っております(笑) 読者の皆様もよかったら、感想のほうものぞいてみてください。


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