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第91話。十年前。姉一号編

 ありもしないチップを探して数分……最早、希望……と言うより絶望はパンツの中にしか無いと決断して……まさかのネタバレである。

 恐ろしい……東京の街中で、パンツの中を必死に探りまわると言うアホ決定の小学生になってしまう所だった……! 既に全身をまさぐっていたという事実はパンツの中をまさぐるという行為の前では霞んでしまうのだ。


 こちらが安堵と虚しさと切なさを感じて崩れ落ちると、愉快そうに笑う姉が一人。自他共に認めるドSである。


「それじゃあ行くわよ」


 そう言って猫を持つように、こっちの襟を掴んで軽々と俺を持ち上げて運ぶ姉一号。女口調になっているから、多少は機嫌が直ったようだ。

 この姉、機嫌が悪い時や真面目な時は男の様な武骨な口調になるが、機嫌が良いと女口調になるのである。だが、安心してはいけない……機嫌が良い時ですら弟を物の様に扱うので、本当に口調が変わるだけなのだ、いきなり優しい姉の人格にチェンジとかそういうことではないと言う、何と言う無駄設定。おい、世界。仕事しろ。


 つまりビルの前で待たされてイライラ。弟をおもちゃにしてニコニコと言うことである。恐ろしい……

 そのまま階段を下りた道路に止められてあったものは、


「サ、サイド○ァントム!?」

「そんな廃スペックな乗り物じゃないわよ」

「ですよねー」


 とりわけ、昔の特撮は『とりあえずマッハ超えとけばいいんじゃね?』的にマッハ越えが多く存在する。

 マッハを超えられないこの物体の名はサイドカー。バイクの横に側車が付いた形である。


 俺は側車の方に座らされ、オープンフェイス型のヘルメットを乱暴に被らされた。姉は横のバイクの方に座って説明を始めた。


「医者を目指すことにしたから、おじいさんの所に行っててね……移動手段をきかれて答えたら、『頼むからこれに乗って三人で帰ってくれ……あげるから』って必死に頼まれて。何だか、あんたの運び方について話してた時は、涙ぐんでたわね……一番面白い所だったはずなんだけど」


 うわーい!! さすが嫁いで草壁家に染まってしまった母さんと違って、まともな思考をお持ちでいらっしゃる! 安易に新幹線のチケットとか用意しなかったのは、あんな狭い空間にライオン二匹を放り込むようなまねはできないと言う思慮深い考えがあってのことだろう……孫がこわ――可愛いので言わなかっただろうけど。


 これで帰りは少なくともGによる拷問とはおさらばである……うん?

 いや、違う違う違う!! 完璧に出鼻をくじかれて、誘拐事件のことをすっかり忘れてしまっていた!


「あの、ねえさ――」

「あ、後。何だかあの子が誘拐犯を見つけたらしくって……車の後をつけているらしいから、少し寄り道していくわよ……で、なによ?」

「ううん……なんでもないっす」


 そうでしたね……あなた達は、物語の主人公レベルで厄介事に巻き込まれる、もしくは厄介事に首を突っ込んでいくタイプでしたね……

 俺の事件に立ち向かおうとするまでのプロセスとかを、全力で明後日の方向に蹴り飛ばされてしまったが、まあ結果オーライと言うことにしておこう……ぐっすん。




「なに、それ? まるで物語の主人公みたいに事件に巻き込まれるわね、あんた」


 ――どうやら人様から見れば、俺の今日の一日も十分、物語の主人公ぽかったらしい。あれ?

 お互いの情報を交換しながら、俺達――サイドカーは東京の街並みを突き進む。


「しかし、なるほど。あいつが聞いた話ではどうやら身代金目的の誘拐だったようだからな。そのお金持ちの家の子で間違いないだろう」

「いや、まあ、これが複雑な推理物とかだったら、実は別々の事件でしたーとかいう展開もあると思うけど」

「そこまで日本の治安は悪くないと思うがな」


 サイドカーを巧みに操りながら、二号のGPS反応に向かって突き進む。サイドカーって、かなり運転が難しい筈なのだが……本当に今日初めて乗ったんだろうか? 


「しかし、いきなり車を壊して救出せずに、私に連絡して後を追うだけに留めるなんて……あの子も成長してるのかしらね」

「普通は生身で車は壊せないんだけどね……」


 格ゲーのボーナスステージじゃあるまいし。

 しかし、確かに今までの二号とは違う気がするなー……思い立ったが吉日ではなく、思い立ったら即行動が本来の姉二号の行動である。


「食べ歩きで悪いものでも食べたのかな?」

「食べ歩き? あの子がそう言ったの?」


 あれ? 一号は二号の今日の目的を聞いてなかったのか?


「なるほど……あの子もあんたには素直に言えなかったか……」


 そう言って一人納得したように頷くと、運転の最中だと言うのにこっちを横目で見つめて……


「セイチ。あの子が家を継ぐって言って、お前じゃダメだ……って言われたの知らないだろう?」

「え……?」


 それは初めて聞くことだった。




 遅くなってしまい申し訳ありませんでした。

 次回ちょっとした伏線回収とかの回です。十年後の姉神二号が、なぜに実家の道場ではなく東京の空手道場にいるのか? 疑問に思っていた人は果たしているのか!? という程度の伏線でしたが。


 お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます。またお待ちしております。


 それでは次回で。

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