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私の仕事は1日1枚ティッシュを引き抜く簡単なお仕事です。

作者: Tongariboy
掲載日:2026/05/14



ティッシュを1枚引き抜く。

それが私の仕事。

1日に1枚。

ここに来てから毎日欠かさずやっている。

好きな時間にBOXから引き抜く簡単なお仕事。

枚数は人によって違う。

それとルールがある。

当然だ。


□ □ □ □

ルール1。

1日1枚必ず引き抜かないといけない。


ルール2。

1度に2枚取り出してはいけない。


ルール3。

引き抜く際に破れてはいけない。


ルール4。

1度手にしたら引き抜くまで離してはいけない。

□ □ □ □



ズルは出来ない。

チェック担当がキラリと目を光らせているのだ。


このルールをやぶった人を知っている。

初日であえなく、だ。

BOXティッシュは最初の1枚を1枚だけ取り出すのが難しい。

意図せず2枚出てきてしまうことがあるのだ。

それでルールをやぶってしまった。

彼女はクビになった。

比喩ではない。

文字通り”くび”になったのだ。


さてさて、今日のノルマだ。

私は今日の1枚に取り掛かる。

BOXティッシュを目の前に置く。

ベストポジション。

私は正座した。


破らないコツは上から引き抜くこと。

あとはつまんで中心に寄せて引く。

素人はここをおろそかにするから事故るのだ。

ケアレスミスにご用心。



ティッシュの端を両手で軽く掴む。

ず、ず、ず……

ペーパーと引き出し口のビニールが擦れる音がなんとも刺激的。

引いては力を抜く。

その繰り返し。

BOXから伸びる紙が絶えず小刻みに振るえている。

指で掴んだところが湿って少し弱くなってきた。

いやはや。

この部屋が暑いのがいけない。

だけど先を急がないのが玄人というもの。


折り目が見えた。

半分まで来たということ。

やれやれ。

私はここに来てもう51枚目。

確かあと10枚かそこら。

楽勝だ。


そろそろ次のペーパーも見えてくる頃。

BOXティッシュは交互に折りたたんで、中に次のペーパーをくわえさせる。

だから1枚目を引くと2枚目もいっしょに出てくるわけだ。

シンプルで画期的。

すばらしい。


おや。

まずい。

2枚目が見えない。

ゆっくり引き抜くあまり途中ですり抜けてしまったのかもしれない。

私の息で紙が泳いでいる。

ここで勢いよく引き抜くのはよくない。

ヘタをすると2枚目が引きはがされてしまう。

大丈夫。

私は落ち着いている。



あ。



いや。

2枚目の頭がちょっと見えてきた。

なんとかなる。

1枚目もあと少し。

きちんとやれば問題ない。

私は真面目に業務をこなしている。

ルールをやぶったことは1度もない。

これが終われば私は出られる。

無事刑期を終えここを出てみせるのだ。


残り少ないBOX。

明日の分が引っ込むと困ってしまう。

中にあるペーパーを1度でちゃんと掴むのは高難易度なのだ。

シゴデキは明日の準備をしてから終えるもの。

なぁに。

問題ない。



よし。

今日の分が終わる。

明日もちゃんと繋がっている。

摩擦が軽くなってきて、しゅっ、しゅっ、とBOXが鳴いている。

かわいいやつめ。


急がば回れ、あと少し。

あと1センチ。


よし。


はなれた。


やった。


今日のノルマ達成だ!


明日の分も問題ない。

地面から伸びた新芽のようにひょっこり顔を出している。

BOXの中に落ちてなくて良かった。

さきっちょ探すクレーンゲームなんてやりたくない。


あと10日もすれば私は自由なのだ。

まずは記念にケーキでも食べようか。

それでテーマパークにいってみるのもいい。

でもジェットコースターなんてもう子どもの遊びだよね。

ふふふ。


うっ。

足が痺れた。

おっと。

なにかにぶつかった。


視線を落とす。

新芽が音もなくBOXの中へ消えていった。




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