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関係ないと思っていたんだけど、なぁ?


体術の授業中、対戦相手が加減を間違えて俺は腕を怪我してしまい、痛みに耐えながらとぼとぼと医務室に向かっている途中。

近道しようと中庭を突っ切ったのが悪かったんだろうか?茂みに隠れた場所から女性のあられもない声と肌を打ち付ける音、男性の呻き声が聞こえてきた。


俺も一応青少年なので、学園の授業時間にそんな声を発する行動を取っている男女に、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ興味を引かれてしまって、痛みも忘れて覗いてしまったのだ。


絡み合う男女が誰なのかを理解する前に、公爵令嬢方に贈ったブローチとは別のデザインの魔道具を身に着けていた俺は、録画機能を入れていた。

夢中で重なりあう男女は、俺の存在など気づきもせずに夢中で腰を振りたくり互いの名を呼びながら口付けを交わしてる。

暫く様子を見ていても一向に終わる気配がないので、録画を停止してから俺はそっとその場を離れた。


それからと言うもの、度々同じような場面に出会しては録画記録を増やしてしまう俺。

本当に偶然としか言い様のないタイミングで、何度も濡れ場を目撃してしまう俺って、呪われてるんだろうか?


絡み合う男女の女のほうは、毎回男爵令嬢なのだが、男のほうは毎回別の人物。

俺はこの記録映像をどうすべきか。


公爵令嬢に差し出せば、第三王子殿下を筆頭に、男爵令嬢の取り巻きをしている高位貴族の令息方を追い詰める証拠になるんだけど、本当にそれで良いんだろうか?


元は皆とても優秀な令息方だったのに、今は肉欲に溺れて見境がなくなってる。

流石にこの映像を見れば、己の愚かな行動を省みて、目を覚ますかもしれない。

俺はどう行動すべきだろう?


自分一人では結論が出ないので、相談してみた。爺ちゃんと婆ちゃんに。

爺ちゃんは元貴族だった時の事はあまり思い出したくないらしいけど、親を筆頭に嫌な貴族の事には詳しい。

婆ちゃんも元貴族令嬢だったので、多少知識は古いものの一般的な貴族の考え方的なものには詳しい。

現役の貴族家の夫人な姉ちゃん達も詳しいんだけど、相手が王子とか高位貴族の令息とかだとね。万が一口を滑らせてしまった時に、影響する範囲が平民の爺ちゃん婆ちゃんとは桁違いだからね。


「………って事なんだけど、俺はどうしたら良いと思う?」


相談した爺ちゃんは苦虫を噛み潰したような顔で黙り込み、婆ちゃんは手の甲で口元を隠し貴婦人みたいにホホホホホと笑ってる。


「近頃の若者は自制を知らんのか?」


「いやいやいや、そんな訳無いだろ!ちゃんと正気に戻った令息も多いから!この人達は…………どうなんだろうな?」


「まるで発情期の猿のようね?あまりに理性を放棄して、欲望が丸出し。これが高位貴族の令息だなんて、この国は大丈夫なのかしら?」


「確かに心配にはなるが、ミックの話では嫡男はおらんのだろう?」


「うん。嫡男は王太子殿下や、第二王子殿下の同年代が多いね」


「まあそれは当然だろうよ。王太子殿下や第二王子殿下ならば当然王家として国政に関わる仕事をされるだろうし、その様に教育も徹底されるだろう。だが王太子殿下が決定していて言い方は悪いが万が一のスペアである第二王子殿下もいらっしゃる。第三王子殿下が特別優秀で目を見張る功績でもあげられておれば別だが、王家としては有力な貴族家との繋がりを持たせる意味で、婿へ出すのは政策の一環としても悪くない手だ」


「ホホホホ、ですがその婿入り予定の第三王子殿下が、不貞行為に耽るなど、愚の骨頂よね。婿入り予定なのに他家のそれも男爵令嬢になぞ種をばらまいては、公爵家の面目も丸潰れですわねぇ?」


ホホホホホと笑う婆ちゃんがとても怖い。

顔がそっくりらしい俺はこんな怖い笑い方は出来ないと思う。


「ミック。これは見せる相手を選ばんと、大変なことになる」


「うん。だから爺ちゃんと婆ちゃんに相談してるんだろ?姉ちゃん達じゃなくてさ」


「ええそうね。ミックは賢いから、考えもなく公爵家のご令嬢に見せたり、第三王子殿下に見せたりはしないものね」


「公爵家にこの映像記録が渡れば、公爵家の出方次第では内乱に繋がり兼ねんし、第三王子殿下に渡れば握り潰されて終わっていただろうな。その場合我が家もただではすまんかったろう」


「だよね~。第三王子とは言え、平民の中規模商会なんて一捻りだろうし、その後何食わぬ顔で行動を改めたとか言って、公爵家に婿入りした第三王子殿下は、男爵令嬢の子供を公爵家の跡取りとかにしてお家乗っとりとかね~。考え出したら恐ろしいよね~」


「だからこそ私達に相談した貴方はとても賢いわよ」


婆ちゃんに頭を撫でられた。


「これは王家に直接渡すのが一番穏便に済むだろうな」


「王家に直接って、それが一番困難じゃない?」


「何事にも表と裏がある。望んで使いたい手ではないが、出来ないこともない。平民の我が家だとしても、王家と公爵家の争いなど望んではないからな」


「おお!爺ちゃん格好いい!」


「ふふふ、そうよ!貴方のお爺ちゃんは格好いいのよ!」


婆ちゃんがとても自慢気に笑うのに、爺ちゃんが照れていた。


◇◆◇


爺ちゃんのコネとか裏技で王家と連絡がついたのは一ヶ月後。

その間にも更に証拠映像が溜まり続けて俺はうんざりしてた。


何故俺の行く場所行く場所でちちくり合っているのか?別に俺が探し歩いてる訳でもないのに!

平民の俺には言い易いのか、よく教師に用を言い付けられたり教材を取りに行かされたりすると、かなりの高確率でちちくり合う場面に出くわす。

男爵令嬢はその全ての場所に居る訳だけど、授業は大丈夫なのかね?

男の方は日替わりと言うか、順番なので、その時々で違うし、だいたい三年なので選択授業で二年の俺達よりも自由になる時間は多いだろうけど、二年の俺達は必須授業もまだ多い。一年の男爵令嬢留年するんじゃね?


と思ってたら、爺ちゃんと共にお城に呼ばれました。

非公式ではあるが、直接お城に呼び出しを食らう平民というのは珍しい。というか前代未聞。

普通なら後見人となってくれる貴族家当主と共に登城するのだが、内容が内容なので、秘密裏に進められるらしい。


何の装飾もない馬車が迎えに来て、お城の業者用の門から入り、文官風の人に案内されて狭い部屋に通されて、待つこと暫く。

普段着なれない礼服がとても窮屈だし、お茶の一杯も出されず待たされるのも退屈。待たされ過ぎて緊張は和らいだけど。


平民の俺と爺ちゃんは許しもなく着席する訳にもいかず、部屋の入口近くで直立不動。

俺は良いけど、時々足腰に痛みを訴えるようになった爺ちゃんには辛くないかね?と爺ちゃんを見てみれば、俺より緊張してる様子で、痛みなどは感じてないみたい。


若い俺でも背を丸めたくなる程の時間待たされて、まず部屋に入ってきたのは執事っぽい人。

入口近くに立つ俺達に黙礼して、録画した映像を画面に投影出来る魔道具にセッティングしてから部屋を出ていき、その後間もなく近衛騎士が来て、俺達の身体検査を軽くして出ていき、やっと陛下と何人かが部屋に入ってきた。


俺と爺ちゃんは近衛騎士が部屋に入ってきた時点で、両膝を付き頭を下げて掌を下に向けて重ね、頭と同じ高さに上げて待つ体勢を取っている。

これが万が一平民が王族に会う際の最敬礼。

貴族ならば男性は片膝付いて胸に手を当てる、女性ならカーテシー。身分によって頭の下げ方が違う。

王族を前にして立って挨拶出来るのは侯爵家以上の身分の者だけ。

普段城内で働いている人達は略式の礼も許されてるらしいけど、詳しくは知らない。


「よい。姿勢を戻し着席を許す」


厳かな声とでも言うのか、太く堂々としていて、でも聞きずらい所のないはっきりとした声に、一度深く頭を下げてから立つ。

そして爺ちゃんと共に恐縮しながら席に座る。


初めて間近で見た国王陛下は、こう、実際に光っている訳でもないのに、その存在が輝いているように見えた。

隣に座る王太子殿下は第三王子殿下と似ているが、明らかに威厳と言うか、存在感が違う。


「早速だが実際の映像記録を見せてくれ」


「はっ」


前置き一切なく用件を切り出されたので、執事の方が魔道具を起動して、カタカタと微かな音の後に、白い壁に記録した映像が流れ出す。


そこには俺が見飽きた男女の絡むシーンが幾つも場面を変えて映り、女性が一人であるにも拘わらず、複数の男性と交わっている姿がバッチリと。

その中には複数回第三王子殿下の姿も映ってる。


国王陛下がこめかみを揉んで、王太子殿下が眉間に深い皺を寄せてる。


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― 新着の感想 ―
息子の濡れ場を第三者に見せられるという拷問……ツライ…… 陛下と王太子の苦痛たるや如何ばかりかと思うとツライ、辛すぎるぅ〜〜!!
 息子の濡れ場を視るハメになる事態とか、お労しい。
この学園って至る所がイカ臭いし、なんか庭も栗の花の匂いがしそうなんですけど
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