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無限収納袋に夢中なカラカルは、無言で中身を全て出そうとして、その多さに驚いて、仕方無しに俺が周辺を片付けて、荷物を出して、また無限収納袋に夢中になるカラカルに夕飯を作り風呂に入れ、勝手に部屋を片付けて泊まり、翌朝も無限収納袋に夢中のカラカル。


「ちょっとカラカル~?俺そろそろ出掛けたいんだけど~?」


「馬鹿お前馬鹿!こんなに貴重な物、じっくり観察できる機会はそう無いんだぞ!もう少し見させろ!」


「え~?でも俺行商の旅に出たばっかりなのに、こんな所で足止めって酷くない?」


「そんなに行商したいなら、荷物持ってその辺で売ってこい!まだこの魔道回路の解析が出来てないんだぞ!」


「いや、知らないし!俺の無限収納袋だし!この辺じゃ普通に売ってる物しかないから、行商じゃ売れないし!せめてあと何日掛かるのかだけでも教えなよ~。日数によっては待てないけど~」


「ぐ、せめて一週間!」


「長い!」


「う、5日!」


「む~り~」


「3日!3日待ってくれ!何としてもこの回路を解析してやる!そんで改良してやる!」


「ええ?改良出来るの?これ、かなり容量大きいヤツだよね?もっと入るの?」


「い、いや、流石に容量を増やすのは無茶だ!これはドゥディール王国でも一握りの人間しか作れない稀少な魔道具な上、ここ見てみろ、通し番号があるだろう?」


「うん、あるね?」


「この番号は国が管理してる正式な物だ。その辺の貴族でも買えないくらい稀少な品だぞ?お前の爺さんと親父は凄いコネと金を持ってんだな?平民なのにやるな?!」


「へ~そこまで貴重な物なんだ?!爺ちゃんと親父凄いね!」


「今かよ!まああまり知られてはいないからな」


「でもカラカルってば、これを改良出来るんでしょ?それもまた凄いんじゃない?」


「いや、改良ってのは、ある程度腕のある魔道具師なら出来るんだよ。魔道具の一番難しいのは、1から回路を引く事だからな。それに今俺が出来るのは、この回路を真似て劣化版を作る事くらいだ。それでもこんな間近でじっくりと観察できる奴は中々居ないんだからな?」


「へ~そうなんだ?」


それきりカラカルが黙ってしまったので、暇になった俺は、カラカルの家を掃除して過ごした。


掃除して掃除して掃除して、飯を作ってのんびり過ごした3日後。

家が普通に人の住める程度に片付いたところで、


「よっしゃ!これでどうだ!」


とのカラカルの叫び声で、作業部屋を覗いてみたら、ここだけは掃除してない汚い汚部屋の真ん中で、小さな箱になにやら詰め込んでいるカラカルの姿が。

次々にその辺の物を詰め込んでるカラカル。

部屋の中の目立つものを粗方詰め終えたカラカルは、


「ハッハー!俺天才じゃね!」


と一人悦に入っている。


「なに~、無限収納袋出来たの?」


「ああ!恐らくな!」


「恐らく?」


「まだ性能テストが済んでねぇ。だが、容量は小さいが間違いなく無限収納袋だ!ハッハー!俺天才!ドゥディール王国の秘密を暴いてやったぜ!」


得意気に自慢するカラカルは子供のように満面の笑みを浮かべたかと思うと、そのまま後ろにひっくり返り、爆睡しだした。

3日間ほぼ寝てないからね。

仕方無く別の部屋から毛布を持ってきて掛けてやる優しい俺。

完成したっぽい無限収納袋を手に取って見てみる。

箱型のポーチには、ベルトがついていて腰に装着できる中々お洒落な作り。

それ程大きくないポーチに、この部屋のほとんどの物が収納されてるなら、無限収納袋の魔道具は成功と言って良いだろう。

後は、叩いたり踏んだりしても壊れないか、中身が飛び出さないか、中身が壊れないか、収納しておける時間はどれくらいか、等々確かめる事は多い。

流石にそれに付き合える程暇ではないので、俺もそろそろ出発の準備をしても良いかな?


荷造りして、夕飯を作って、風呂を掃除して、荷造りの最終確認と洗濯物を取り込んでたたんで仕舞ったところで、朝倒れたカラカルが起きてきた。

一緒に夕飯を食べながら、


「俺、明日には出発するね」


と言ってみたら、


「ドゥディール王国に行くのか?」


と聞かれたので、


「まあ何時かは行くけど、爺ちゃんに頼まれた事もあるし、取り敢えずはイストーナツ国を回ってからかな~?」


「イストーナツ国を回ったら一旦戻るのか?」


「うん。この国の支店に商品卸さないといけないし、商品の補充もしなきゃだし」


「ふ~ん?その時は顔出せよ」


「うん。でもあんまり散らかさないでよ?俺だって掃除好きな訳じゃないから!」


「ぜ、善処する」


目を反らして言うのは怪しい限り。


翌朝、カラカルと朝食を食べた後に出発。

半日もかからない船便で酔って、ちょっと休憩してから爺ちゃんの辿ったルートで行商を始めた。

爺ちゃんのお陰でどこへ行っても歓迎されるし、爺ちゃんに頼まれてた商談も上手くまとまって、ゆっくりと行商しながら1ヶ月かけて島を半周してきたところで、ちょっと懐かしい?顔に再会した。

小さな集落をまとめる村長さんの奥さんは、この国の元姫様。

去年の夏に誘拐されて逆プロポーズされた相手。


「あら~!あらあらあら!以前わたくしがお誘いした方よね?あの時はごめんなさいね!今思い出すと、あの時のわたくしはどうかしていたわ!若気の至りと言うか、婚姻前でナーバスになっていたのか、とても恥ずかしいことをしてしまって!でも今はもう婚姻して子供も出来て、元気一杯に毎日を過ごしているのよ!……………」


怒涛のように喋り倒す元姫様。

勢いは変わってませんね?何故か俺と爺ちゃんが元姫様の行く末を心から心配しているのかのような口振りだけど、今ここで会うまで思い出しもしませんでしたよ?

元姫様の勢いに負けて何も返せないでいると、


「「「ウワーーーーッッッ、ンギャーーーーーーーーーー」」」


近くの村長宅から凄まじい悲鳴と言うか雄叫びと言うか断末魔のような声が複数上がった。

何事かと驚いていると、至って呑気に元姫様は、


「あらあらまぁまぁ!もう起きてしまったのね!もうちょっとお喋りしたかったのに~、残念だわ~!またこちらに来た時は寄ってちょうだいね!」


とそそくさと去っていった。

今もまだ続いてる断末魔の雄叫びは、元姫様の子供の声のよう。

ただ複数聞こえるんだけど?と疑問に思ってたら、


「っは~!今日も姫様の子供らは、絶好調だな!」


と笑う村人に聞いたところ、元姫様は婚姻後すぐに子供を授かり、それはそれは元気な三つ子を生んだそうな。

生後2ヶ月程の赤ちゃんの泣き声には聞こえないんだけどね?元気さはお母さん譲りのようです?


そんなこともありつつ、行商は問題なく、2ヶ月間かけて島を一周して、最初の港へ。

やはり船酔いに悩まされたが無事到着。

ヨロヨロしながら我が家の商会の支店に寄り、爺ちゃんに頼まれてた商品と、俺が買い付けてきた商品とを卸し、カラカルの家へ。


疲れていたので自分の寝床だけ確保してそのまま寝て、カラカルに起こされて渋々起きてみたら、屋台飯ではあるものの、カラカルが夕飯を用意してくれてた。


「えええ?どうしたのカラカル?俺、この家で水以外出されたの初めてなんだけど?!」


「それは何時も俺が調達してくる前に、お前が用意するからだ」


「えー?じぶんで用意するの面倒で食べないことも多いのに~?」


「俺だって腹が減れば多少は外に出る」


「携帯食料大量買いするために?」


「作業中以外は、店で買うこともある」


「ふ~ん?何か企んでる?」


「はぁ~、一応、感謝はしてる。希少な無限収納袋を実際に見て手に取れる機会なんて中々無いからな」


「なるほど~」


感謝のお礼が屋台飯とは微妙だけど、照れてるカラカルは中々に可愛いと思う。

女性が放って置けないタイプだと納得出来るね。


「ところで、見たこと無い程家が片付いてるんだけど、誰かお世話してくれる人見つけたの?いや、でも掃除はしてないのか?」


物は少ないけどうっすらとホコリの溜まった部屋。


「いや、片っ端から無限収納袋に入れて、検証中」


「あ、成る程。でも俺が出て行ってから2ヶ月持ってるなら成功じゃない?」


「まあそうだが、最初に作った2個は、物を詰めすぎて壊れたし、容量のでかいものはまだ作れねぇ」


「前から思ってたんだけど、無限に入るから無限収納なんでしょ?何で容量の違いとか出るの?」


「あー、まー、それはだな。言ってみれば、この無限収納を作った魔道具師の心意気みたいなものだ」


「心意気?」


「いつか本当に無限に収納出来る袋を作るぞ、とか、な」


「あー、好物を無限に食べられるとか、夢中になってる事を無限に続けられる、とかと同じ感じ?」


「まあ、そうだな。野望とも言う」


「なる程ね~。それでも見様見真似で形に出来ただけでも凄いと思うけど」


「そうなんだが、改良出来てこそだろ?」


魔道具師としては納得してない様子。

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― 新着の感想 ―
まぁそこは「米が無限に食べられる(食べられない)」みたいな感じでw
――限度があるなら「無限収納」ではないのでは? カラカル「そういう魔導具を『無限収納袋』というのだから仕方ないだろ」
容量の差があるなら無限じゃないじゃんw って書こうと思ったら書かれてた
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