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おうふっ!続々と誤字報告が!
ありがとうございます!精進してもなおらないかもしれないけど、頑張ります!
感想や良いね!もありがとうございます!すごく励みになります!
俺自身の日常は平和になったが、学園中がざわざわと落ち着かない。
高位の貴族家から順番のように婚約の破棄が正式に認められ、令嬢方が積極的に動いているので、その影響で令息達もそわそわしてる。
中には不貞を疑われない猶予期間であるのを良いことに、男爵令嬢並みに令息を複数侍らせている令嬢も居たが、他の令嬢方の冷たい視線を浴びて数日で自重した。
男爵令嬢程下品でもなかったので、気の迷いとしてちょっと笑われたくらいで済んだらしいけど。
で、まだ仮とは言えお付き合いが始まれば、当然贈り物は必須。
まだ仮なので、高価な宝飾品やドレスなんかは贈れないけど、ちょっと気の利いた小物とか、日常的に身に着けられるアクセサリーとか、学園で使える洒落た文房具とかを求める令息達が俺に相談に来る。
王家御用達の伯爵家が運営する商会の商品は、日常的に使えるアクセサリーと言っても、我が家で扱うアクセサリーとは桁が違う。
低位貴族のそれ程裕福でもない令息には手が出ない。
そこで程々の値段で相談に乗れる我が家を当てにして相談に来る令息が続々と現れる。
低位貴族の令嬢方の買い物ラッシュを経験してる我が家は、令嬢達の好みもばっちりリサーチ済み!
どこそこの令嬢と言えば、婆ちゃんが好みに合った品を用意して、令息が令嬢に贈り喜ばれる、と言った好循環が起こり、相談に来る令息が増える増える。
こんな事態を予想してたかのように爺ちゃんが、令嬢に喜ばれるようなちょっと変わった外国産の珍しい小物や可愛い文房具なんかを仕入れてたりするし。
道理で手紙を送りまくっていたな、と感心する。
あ、流石に高位貴族のご令嬢の贈り物を求める令息達は、高級路線の商会で買い物をします。
王家御用達商会であるにも関わらず、わざとのように伯爵家の商会で買い物する令息は居ない。
この絶好の買い物ラッシュに乗り遅れるとは、商会としてもこの先大変そうだ。
そんな乗り遅れてる伯爵令息は、婚約が解消になるかもしれないのに、呑気に男爵令嬢に夢中。
取り巻きも顔ぶれも変わらず男爵令嬢に夢中。
一度しか話したことは無いが、あの男爵令嬢のどこに夢中になる要素があるのかさっぱり分からない。
さっぱり分からないのでニアに聞いてみた。
「なあ、あの男爵令嬢のどこが良かったの?」
「顔。今となっては何であんなに夢中になりかけたのか思い出せないけど、何でかこう、目についたって言うの?」
「まあ確かに?顔は可愛い部類だよな?」
「あの甘ったれた顔と声で密着されたら、断れる自信は俺には無い。ただ、あの面子を放ってこっちに来るとも思えないけど」
「「「それな!」」」
「ふ~ん?」
「何で今更男爵令嬢だよ?興味なかったんだろ?今更ハマるとは思えないし」
「いや。全く興味は無いんだけど、あの人達、何で何時までも男爵令嬢に夢中なのかと思って。一人くらい正気に戻っても良い頃じゃね?」
「あー。何でだろうな?」
「ミックに止められてから、俺も改めて男爵令嬢を観察したけど、うん。自分の人生放り投げてまでハマる価値はないと思う。俺よりあの方々の方が、放り投げる荷物多そうだし重そうだけど。その事分かってないんかね~?」
「逆に自分なら相手が男爵令嬢だろうと、立場は揺るがないとでも思ってたり~?」
「うわ、それはどうなんだ?やってることはただの不貞行為なのに。自分が望めば立場なんて関係無く、望む相手と結ばれる、とでも思ってるって事だろ?それって貴族令息の考え方じゃないよな?」
「それくらいのわがままは当然通るくらい、自分は優秀だとでも思ってそうじゃね?元々は優秀だと褒められたことしかない方々だろうし?」
「「「うわ~」」」
皆して名前は出さないものの、当事者に聞かれれば不敬に問われかねない事を言ってる。
事実だし、声を大には決してしないが、そこここで言われてることだし、皆も遠慮する気配もない。
もう男爵令嬢共々破滅への道筋が完成してるのに、知らぬは本人達のみ。
自業自得だと思ってるので、誰も同情しないし助ける人も居ないだろう。
高貴な方々が落ちぶれていく様を楽しそうに見てる悪趣味な人も多いし。
そんな騒がしい学園内ではあるが、時間というのは止まることなく流れるもので、仮だった婚約は正式な婚約として成立した者も続々と現れ、仲睦まじい様子が学園内でもよく見られるようになった今日この頃。
本日は卒業パーティー当日である。
卒業記念式典は昨日厳かに執り行われ、本日は学生最後に羽を伸ばせるパーティーである。
卒業生は全員参加。在校生は希望者だけが参加するが、今年は例年になく在校生も多く参加するようだ。
我が家が営む商会では、今年初めて低位貴族向けの礼服やドレスの貸し出し事業を始めた。
お金さえ出せば、低位貴族向けとは言え誰でもドレスを借りられるとあって、始めた当初は平民の結婚衣装としてや、商人のパーティー参加用として使われることが多かったが、この卒業パーティーに向けて、低位貴族や平民への貸し出しが相当増えた。
学園の行事なので、制服での参加も可能だったが、低予算でドレスを着られるとなれば、ドレスを着たい令嬢は多い。
そんな令嬢にパートナーを申し込まれれば、令息だって礼服が必要になる。
高位貴族の着るような煌びやかでも豪華でも派手でもないけど、流行に左右されない基本的な型のドレスに、レースやビーズリボン等の装飾を追加できるドレスは、結構人気。
卒業後のパーティー用にと何件も予約が入ってるそうだし。
貸し出し事業の中心になってる母さんが凄く張り切ってるし。
この半年で我が家の商会は、貴族家に結構顔を売ったと思う。
忙しすぎて、親父や兄ちゃんが今後どうするのかは聞いてないけど、今のところとても順調に事業を拡大出来ている。
友人のよしみで割引してやった衣装を着ている友人達と、会場の隅で料理片手にパーティーの様子を見てる。
婚約者やパートナーの居ない生徒に配慮してか、開始直後はパートナー無しの生徒が自由に入場出来る時間が設けられている。
それが落ち着けば、今度は婚約まではしていないものの、パートナーの居る生徒の入場。
そして最後の方は正式な婚約をした婚約者同士の入場というのが慣例。
伯爵令嬢から異例の打診を受けたマシューは、その誠実さと好成績を買われて正式に伯爵家の婿に入る事が決まった。
ぎこちなく伯爵令嬢をエスコートして入場してくるマシューをニヤニヤしながら眺め、続々と続く新たなカップルや婚約者の組み合わせに驚いたり、事情を知っていれば解説したりされたりしてる内に、大体の生徒の入場が済んだ。
さてパーティーの始まり、と新生徒会長が挨拶をしようと登壇したら、バーーーーンッ!と入り口の閉まってた扉が開き、そこに現れたのは第三王子殿下を筆頭とした男爵令嬢の取り巻き一行。
一人の男爵令嬢に複数の高位貴族令息という取り合わせは、学園内では見慣れたものではあるが、パーティー出席者としては前代未聞で誰も声を出せない。
そんなシーーーンと静まり返り全員の注目を浴びる中、堂々と歩き壇上に立った第三王子殿下は、
「リグレット・マーシャル公爵令嬢!今この場で貴様との婚約は破棄する!そして私マローイ・グレンナールはこのミルキー・ブレンダと婚約することをここに宣言する!」
それを聞いたこの会場に居る全員が、たぶん思った事だろう。
「「「「あちゃ~、やっちゃった!」」」」
実際に友人達だけでなく、そこら中で同じことを言ってる人達が居るし。
婚約破棄宣言された相手である公爵令嬢の隣には今は誰も居ないけど、壇上の人達以外はほぼ全員が知っている。まだ公表はされてないけど、公爵令嬢の新しい婚約者は、隣国に留学している国王陛下の年の離れた弟である王弟殿下であることを。
その事を知らされていないのか、聞く気がなくて知らないのか分からないが、得意気な顔で婚約破棄を告げた第三王子殿下は、
「貴様は私の婚約者で公爵令嬢と言う身分を笠に着て、ここに居るミルキーを虐げた!これは決して許されることではない!今この場で地に頭を付けて謝罪しろ!」
得意気に大声を上げて、自分達が正義の行いをしていると自分に酔っている顔は、美形のはずなのにとても醜く見える。
学生最後の羽目を外せるパーティーなので、父兄の参加は無いとは言え、パーティー参加者は八割が貴族。未成年でもこれだけの人数がいれば、裁判沙汰になっても、十分な証言が集められる。
第三王子殿下方は惨敗することだろう。




