表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

夏のホラー参加作品

殺処分


親子と思われる猫数匹を殺処分場に連れて行く。


俺は猫が大嫌いなんだ。


犬のように人の役に立つことを何一つせず、悪戯仕放題で好き勝手に暮らしている癖に、餌の時間になった途端媚を売ってくる。


だから近くの猫捨て山と言われている公園で猫を捕らえては、殺処分場に連れて行く。


まあ殺処分場の係官には、家の田んぼや畑に捨てられていた猫を連れて来たと言っているのだが。


何時ものように書類にサインして殺処分場を後にする。


また数匹の大嫌いな猫があの世に旅立つ。


そのことを思い気分良く帰り道を歩いていた俺に、車で追って来た殺処分場の係官が声を掛けて来た。


「三木さん、勝手に帰らないでくださいよ」


「猫を引き渡したらもう殺処分場に用なんて無いぞ」


「法律が変わりましてね、殺処分場に動物を連れて来た人も動物と同じように拘束されるのですよ」


「なんだと? どういう事だ?」


「殺処分場に動物を連れてくる人たちの中に、仲の悪い家族や近所の人が飼っている動物を勝手に連れて来る人がいるのです。


殺処分した後でそのことが発覚し、係官である私たちとトラブルになることが偶にあるのです。


ですから連れて来た人も拘束して家族でも誰でも良いのですが、連れて来た動物は連れて来た人が言った通りですと証言を頂くまで拘束を解けないのです」


そう係官は言い、手際良く俺に手錠を掛け拘束する。


「逃げないから手錠を外してくれ」


「すいませんね、規則なんで外せないのです」


係官は俺を車に乗せて殺処分場に帰り、殺処分場の檻の中に放り込んだ。


「先程三木さんが書いた猫を連れて来た理由が本当の事だと証言してくれる方、何方でも構いませんが、に電話して、三木さん自身を引き取りに来て貰ってください」


俺はスマホを取り出し家族に電話を掛ける。


俺を除く家族は全員沖縄旅行に出かけていた。


だから家族の目が無い今日、猫捨て山で猫を捕える事ができたのだ。


家族には俺が書いた理由は嘘だとバレるだろうが、犯罪者を家から出すよりはと本当の事だと言ってくれるだろう。


何故か動物たちと同じように俺も、1日目2日目3日目4日目と檻を次々と移動させられる。


家族から台風のため足止めされていて直ぐには帰れないと言われていた。


だから見回りの係官に聞く。


「拘束には期限ってあるのか?」


「ありますよ」


「何日だ?」


「動物たちと同じく5日です」


「それを過ぎたら?」


「動物たちと同じです」


「同じって、殺処分するつもりか?」


「当然です」


「待て待て、俺は人間だぞ、人間を殺処分するのか?」


「人間も動物ですからね」


俺はもう一度家族に電話した。


返事は俺を絶望の縁に追い込むものだった。


台風の動き次第だが、動きが鈍い台風の為あと1週間は帰れないと言う。


6日目、処分室の扉が開き始める。


ニコニコ顔の係官が声を掛けて来た。


「誰も来ませんでしたね」


「待ってくれ、台風で足止めされ旅行に行った家族が帰って来れないんだ。


だからあと数日猶予をくれないか?」


「駄目です、規則ですから。


それにこんなに嬉しい事を途中で止める訳が無いじゃないですか」


「どういう事だ?」


「動物を此処に連れて来るだけの貴方のような人たちは分からないでしょうけど、私たちは毎日毎日罵声を浴びせられているんです。


動物を殺す虐殺者と言う罵声をね。


だから三木さん貴方のような動物の命を何とも思わない人を殺処分出来るのが、嬉しくて嬉しくてたまらないのです」


殺処分室の扉が開き切り俺はそこに押し込まれた。


「助けてくれー!」


助けを求める俺の耳に係官の最後の言葉と笑い声が響く。


「さようなら、アハハハハハ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 人を呪わば穴二つ。 これは殺した猫の祟りなのかもしれませんね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ