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クズな男がスキな理由  作者: あおぽん
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1.優しかった駅名さん

 社会人1年目の時に出逢ったのがこの人。

 駅名さんは、出逢った人の中で1番まともで1番無理な相手だった...。

 私は20歳の時、社会進出を果たしました。

 あのね、地獄だった!!!

 1年目って何をするにも初めてで、体力的にも精神的にも本当にキツかった。

 何をしても何が出来ても先輩には程遠くて、仕事について考えさせられる日々。

 あれ?時空歪んだ?っていうくらい学生の頃とは違う毎日。

 失敗なんて数え切れないくらいして、心はズタボロでしんどかった。

 誰か私をサポートしてくれる人いない?って生まれて初めて思った。

 そんな時、職場の合コンで出逢ったのが駅名さんだった。

 苗字が駅名だったから、あだ名は駅名さん。

 出逢った時の印象は、とっても優しそうで、柔らかい雰囲気の人。

 広告代理店勤務で、見た目も背も程々で、凄く普通の人だった。

 一眼見て、良い人そうだなと思ったことを今でも覚えてる。

 駅名さんとは趣味が合うしすぐに意気投合をした。

 合コンの次の日、向こうからLINEが来て、すぐに会うことになった。

 2人で会ってみても変わらない印象。

 私と駅名さんの仲は急速に縮まっていき、すぐに告白をされた。

 「スキだよ。俺と付き合ってくれる?」

 1年目のしんどい時を救ってくれる人が現れたと思った。

 私はすぐに告白を受け入れた。

 駅名さんは、本当に心が清らかな人で、私のことを凄く大切にしてくれた。

 毎日連絡を取り合うのは勿論、毎週末必ず会いたいと言ってくれた。

 でも私は違った。

 友達と遊ぶ時間もスキだし、1人で過ごす時間も大切。

 会うのは2週間に1度くらいのペースで良かった。

 正直愛情の比率が駅名さんの方が大きくて、私は少し戸惑った。

 でも、いつか私も愛情を返せるかもしれないと思って付き合っていた。

 尽くしてくれるってこういうことだなと思うくらい普通にデートも重ねた。

 きっとあれはどこにでもいる普通のカップルだった。 

 勿論凄く楽しかったけど、私はその状況をどこか冷めた目で見ていた。

 あ、今私普通に人と付き合って普通にカップルやっているんだなーって、他人事みたいに思っていた。

 それが相手に伝わってしまったんだと思う。

 付き合ってしばらく経って、会う度聞かれるようになった言葉がある。

 「俺のどこがスキ?」

 この言葉が私はとっても苦手だった。

 駅名さんは優しいから、私のスキなところを聞いてもいないのに言ってくれた。

 でも私は自分からここがスキだと伝えたことはない。

 質問されても毎回上手く返せないでいた。

 「優しいところがスキ。」

 いつもそう答えていた。

 駅名さんが不服そうだったことは気が付いていたけど、その返答しか出来ずにいた。

 私は気持ちがすれ違い始めてこう思った。

 相手の気持ちを聞いて、自分の気持ちを伝えて、人と向き合うことが付き合ってこと。

 あぁ、やっぱりこういうの無理だと...。

 10代の頃もそれなりに色々あったけど、20代の恋愛とは違った。

 別にスキなだけでどうにかなってたから。

 スキな人と同じクラスになって、席が近くなって話せるだけで幸せ。

 何なら目が合うだけで最高にハッピーになれた。

 でも、20代になると嫌でも結婚とか意識するようになって、向き合うことがより簡単じゃなくなる。

 それが分かって逃げ出したくなったけど、私はしばらくカップルの関係を続けていた。

 駅名さんが初めて1人暮らしをすると言った時は一緒に物件を見に行って引っ越しも手伝った。

 朝起きるのが苦手だからモニコをしたり、料理を作りに行ったり、ちゃんと彼女をしていた。

 "彼女をしていた"という表現は凄く良くないけれど、あの時の私は言葉の通り。

 良い彼女を創り上げることに必死だった。

 そんな状態がいつまでも続くわけもなく。

 7ヶ月程付き合った私たちの最後は、ちょっと切なかった。

 ある時私が深夜の2時まで友達と呑んでいて、酔っ払って駅名さんに電話したのね。

 向こうは寝ていたから出なかったんだけど、次の日の朝LINEが来たの。

 『寝ていて電話出られなくてごめんね。初めて頼ってくれたね。』

 そう書いてあった。

 そんな時間まで飲んでたの?とか怒る訳でもなく、駅名さんは最後まで優しかった。

 『今までも凄く頼りにしてたよ』

 そう返信したんだけど、結局駅名さんからLINEが返ってくることはなかった。

 私たちは別れようという言葉もなく、終わりを迎えたのだった。

 当たり前の結果、当然の結果。

 駅名さんはただただ良い人だった。

 そんな良い人を傷付けたのは私だった。

 悲しい別れを迎えたのに大した涙も出なかった自分の薄情さに虚しくなって、大いに反省した。

 私は優しい人が苦手なんだ。

 優しい人といると自分も優しさを返さなきゃいけない、尽くさなきゃいけないと思ってしんどくなるから。

 一緒にいて楽しくて面白かったらそれで良い。

 スキなタイプは優しくて頼り甲斐がある人だった私。

 優しさとか頼り甲斐とかもういーやいらない!ってスキなタイプを書き換えたのです。

 いや、書き換えたというより、本来の自分のタイプを思い出したの。

 10代の頃だって誠実で真面目な人よりも、面白くて一風変わった人をスキになっていたではないか!

 20代になったからって変える必要はない!

 スキなタイプを繕って人に迷惑をかけるくらいなら、素直に生きていこう!

 そう決めたのでした。

 ここからが私の人生の面白いところ。

 自分の心に正直になって、楽しくて面白い人を求めた結果、色々な人に出逢えたの。 

 そんな私の末路是非見て欲しい。

 


 


 

 


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