1-4.戦乙女(ヴァルキリー)の紹介
この作品は、タイトルに執筆裏話とあるように、全37話で完結しているアクション小説「ゲームに侵食された世界で、今日も俺は空を飛ぶ」の設定集になります。本編を読まれていない方は、先ずはそちらへ。単行本一冊程度なのでサクサク読めると思います。
【戦乙女】
兵科:機動歩兵
分類:メカ&少女系ご当地戦士
ランク:熟練者級 ※現役なので。実力的には伝説級
レーティング:PG-12
重量:着地して見えても常時浮遊の為、着地面への荷重は発生しない
備考:車両並みの前面投影比なので狭い通路は侵入不可
比較の為、一般的な陸自の自衛隊員、初回登場時の運命、通常装備時の戦乙女のレーダーチャートを並べてみた。
自衛隊員の情報戦、AI、索敵は仲間との相互連携や各種支援を受けられることが前提、防御は身を隠せることを考慮したものである点に注意。ご当地戦士達は着弾ダメージを防御エネルギーと相殺することで耐えられるが、普通の兵士にそんな便利なSF機能は付いてないのだ。
運命の初回登場時の能力分布と比較するとわかりやすいが、戦乙女は広域索敵と情報戦能力をAIの力も借りて最大限発揮し、高速移動&機動を活かして、各個撃破を行うことで「常に先手を打って有利な状況下で戦うので、防御力に頼ること自体が稀」という戦闘スタイルである。なので、撃ってるエネルギー弾の威力や、本体や大盾の防御力に差は無かったりする。
ただ、この手のチャートに現れにくい部分として、武器を取り回しは悪くなるが射程が長いロングライフルに換装していたり、高速移動&機動を支える高出力ジェネレーターのおかげで、本体や大盾の回復速度がノーマルに比べれば格段に早かったりして、継戦能力はかなり高かったりする。
索敵範囲の異様な広さのおかげで、武器の最大射程を活かせたり、隠形状態を解除して遠距離狙撃をしてくるフライングオクトパスに対しても、エネルギー弾が届く前に彼我の位置関係から退避ルートをすぐ選べたりなんかもして、何気に索敵能力の高さも戦闘力の底上げに役立ってもいた。
<一般的なメカ&少女との違い>
そもそも一般化できるほどいるのか、という話はあるが、敢えて言うなら、空を飛べる、という機動歩兵としての優位性を極限まで伸ばしている点が特徴と言えるだろう。戦乙女以上に空を自由に飛べる、ご当地戦士は存在しないのは確実だ。
戦乙女にとって、移動力と機動性能を極限まで高めるのは前提で、その中で敵を倒せるだけの必要最低限の火力を持つ武器を持ち、飛行性能に支障をきたさない範囲で索敵能力、情報戦能力、それと全体を支援するAIも伸ばした、といった流れで、延々と戦っていく中で洗練された姿を振り返ってみれば、防御能力は初期から伸ばしてなかった感じだ。
たまにしか被弾せず、被弾するとしても基本は大盾で受けるし、次に被弾するまでにエネルギーも回復し終えているから、更なる防御は必要なかったのだ。勿論、敵を散らすための身代わりなども必要に応じて使うことで、処理しきれない状況に陥ることを避ける戦術を実行できているからこその話ではあるが。
<武装による能力値の変動>
多機能ロングライフルを選ぶと、攻撃力は2→3に上がる。ボムは範囲は広いが火力が強い訳ではないので攻撃力は3止まりだ。
<唯一無二スキル>
伝説級のご当地戦士は何かしら人外域のスキルを発揮するものだが、戦乙女の場合は、飛行とそれに付随する能力全般の逸脱っぷりがそれに該当する。全周囲視界とエネルギー弾を見て避ける反応速度だけで、他のご当地戦士から「何言ってんだか訳分からない」と言われるレベルだ。
更に周辺状況の把握、予測とベストな選択を行うまでの思考時間の短さも突出している。本編であれだけ好き勝手飛びながらも、敵と衝突することが一度も無かったのがその証左だ。
つまり、敵機や飛び交うエネルギー弾に注意を払いつつ、回避しやすいルートを選択し、行きがけの駄賃とばかりに射撃を叩き込んでいく、と言ったように、自由自在に飛びながら、余裕を持って他の事まで手を回せる、それが戦乙女の唯一無二スキルなのである。
敢えて敵機の射撃範囲に突入して身を晒すことで、流れ弾が空に向かうように誘導して、民間への被害を防ぐ、なんて真似は、戦乙女も昔からできていた訳ではない。研鑽を積むことで手に入れたモノであり、慣れ親しんだホームグラウンド、よく戦う板橋区とその隣接区だからこそできる話である。実際、新宿区では夜戦ということもあったが、索敵にAIの誘導を必要とするなど、市街地の立体空間を活かしきれてはいなかったのだ。
同じメカ&少女系の運命も全周囲視界は持っているし、電気&科学反応併用式頭脳、つまり人間の脳の処理限界を超える超反応も備えているのだが、血讐の支援を受けても、戦乙女の域には届かない。これは、戦乙女が自分から先に動くことで、状況を自分に有利なように、予想しやすいように誘導しているからこそ生まれる差であり、全方位に好き勝手に推力を発揮することで、一般的な航空機が持つ飛行上の制約に縛れることもなく、遮蔽物のない大空の広さを活かしきる戦いを十年も続けてきた経験の差とも言えるだろう。
<特徴的な戦闘シーン>
運命のような戦法、戦術としてピックアップできるようなものは少ないが、本編でも描かれていたように、戦乙女はビルや水路、高速道路の高架といった戦域の地形を巧みに利用して、敵の射界を分断したり、敵の合流タイミングを遅らせたりといったことに用いることが多い。これによって、敵軍勢の数の強みが発揮できず、分断されることで各個撃破されることに繋がるのだ。
また、水面すれすれの超低空飛行をしたり、人類の飛行機器では激突が免れないような急速度で突っ込んで行ったりと、慣性を無視した飛行と、全周囲視界と、超反応と、探索ユニットによって戦域全体を死角なく把握できるという特徴を最大限に活かしていた戦闘スタイルと言えるだろう。
<ゲームメーカーの嘆き>
本編でも語られているように、平面ディスプレイという限られた視野では、全周囲視野には到底及ばず、両手で扱うコントローラー程度では操作がまるで追い付かず、何より操る人間の側が完全三軸な機体制御を行えない、という限界があった。その為、実際に戦乙女が飛ぶ姿を見ている人達からすると、頑張って作ったゲームも「これじゃない感」が強く、それっぽい雰囲気を楽しむくらいで妥協するしかなかった。
<AI>
市区町村単位の広域索敵や、各種公共機関の運行状況把握、戦乙女がその時欲している情報だけに限定して示す賢さ、などその能力は極めて高い。本編でも語られていたように、基本的に、主の後方に控えていて、必要に応じてサポートする執事といった性格である。まるでRTAのように最短時間でミッションをクリアしていく戦乙女の戦闘スタイルもあり、会話は必要最低限といった形だった。
ただ、運命が現れて、共闘をするようになったり、高難度ミッションで長時間戦うことになったりしたことで、戦術面で意見を述べたり、暇な時間に話題を振ったりと、それまでに無かった面を出してくることも増えて行った。
本人も語っていたように、自分がいてこその戦乙女だ、という自負もあり、戦士達の休日チケット利用時には、主任も突っ込みを入れていたが、まるで姑のように鋭いチェックを入れたりしていた。随分と人格も育って、物語を動かす上でも大活躍してくれた隠れたヒロインと言えるだろう。
<作者コメント>
空飛ぶ歩兵=機動歩兵として、自在に空を飛べるように、ただし、他のカテゴリーの戦士との差別化を図る為、何でもできる方向性は避けるように注意した。敵の弱点を狙わないとボスを落とせない弱火力、多少耐える程度の紙装甲、オマケ程度の近接戦能力、高いけれど特化型には敵わない情報戦、AI、索敵能力、最大飛行速度もボスには劣るといったように、とにかく万能化、最強・無敵化は避けた。
強いけれど限界はある、得手/不得手がはっきりしている、あくまでも身近な街中にふわりと降りてこれる等身大のメカ&少女、そんなコンセプトとしたが、ラストまでその路線を崩さずに済んで良かった。
武器の二丁持ちで火力倍増にするとか、バックパックに肩武装を追加で載せるとか、重量過多になる武器を満載して、使い終わったらどんどん捨てていく最終決戦仕様とか、色々と誘惑はあったものの、映像作品系のように、見た目で一発理解ができる、といかないので避けた。結果としては正解だったと思う。
まぁ、武器は右手に持ったライフルしかないと言いつつ、射撃パターンがシングルショット、対空ホーミングショット、対地ホーミングショット、チャージショットと4種類もあり、一斉ロックオンで最大8連射なんてのもあり、レールシステムを使ってボム投擲器を付けられるなど、戦い方のバリエーションに困らなかった、というのも、武装変更や重武装化を避けられた要因だっただろう。
2022年10月5日(水)までは毎日7:05に投稿していきます。
第一章は全11パート、ご当地戦士達の紹介です。