2-8.要塞(フォートレス)
この作品は、タイトルに執筆裏話とあるように、全37話で完結しているアクション小説「ゲームに侵食された世界で、今日も俺は空を飛ぶ」の設定集になります。本編を読まれていない方は、先ずはそちらへ。単行本一冊程度なのでサクサク読めると思います。
【要塞】
要塞コアによって、既存の大型施設が要塞と化したモノ。施設は要塞化が進むことで、壁が強化されたり、通路が増えたり、減ったり、防衛設備が増えたりする。どの施設にも必ず、一般敵(ファンファン、テクニカル、スパイダー)を送り出す生成ユニットが存在し、機数上限などもなく、黙々と一般敵を送り出してくる。
生成ユニットはかなり頑丈であり、戦乙女達が四人がかりで合計32発の対地ホーミングショットを叩き込んだものの、機能を一時停止させることしかできなかった。だが破壊はなるべく急いだほうがいい。要塞には修理機能もあるので暫くすれば、また子機を放出し始めるからだ。
要塞はミッションスタート時に配置されており、一般敵も合わせて配備されているので注意が必要だ。放置していれば、要塞自体も強化されるし、送り出された一般敵が十重、二十重の防衛網を構築していくことになって、最終的には手が付けられなくなるからだ。
自己修理能力があり、要塞近辺や内部では、こちらの動きが把握されるからか、戦術的な戦い方もしてくるなど、指揮能力もある程度備えているようだ。また、要塞内ではファンファン、テクニカルは通常よりも頑丈だ、との報告もあるので、外とは違うつもりでいた方がいいだろう。
要塞を撃破するには、コアを破壊しなくてはならない。ただし、要塞側もそれを認識しているので、その守りは堅く、コアルームまで辿り着くには、幾重もの防衛網を突破する激戦は避けられないだろう。
要塞だが、あなたが中堅だとしても、一人で攻略するのは止めておいたほうがいい。安定した勝利を得るなら、せめて複数人で共闘すべきだろう。内部は狭くて移動が制限される上に、敵はこちらの動きを把握しているかのように複数の戦力を連動してくるのだから。情報戦に長けた戦士がいれば、要塞の制御を奪うことで、戦いも有利に進めることができるに違いない。
本編でも戦乙女が語っていたように、前面投影比が車両並みのメカ&少女系戦士にとって、要塞内に侵入するというのは悪夢、死地に赴くことに他ならない。中が狭過ぎて避けるスペースがないからだ。戦闘機に格納庫から出ずに戦え、というような話である。大人しく、FPS系戦士や魔法使い系戦士に頼ろう。
<バス要塞>
新宿にあるバ○タ新宿が要塞化したモノ。テクニカル生成ユニットを備えていた。初期配置時点で渋滞が起きるほどのテクニカルを展開しており、真面目に戦うならかなり苦労したに違いない。ただし、以降のミッションで出てきた要塞に比べれば規模は小さく、難易度も要塞系にしては攻略しやすいレベルだった。……なお、規模が小さいといっても要塞であり、こんなのを一人かつ短時間に撃破できた♰預言戦士♰は、伝説枠の実力を持っているからこそできたのであって、普通のご当地戦士は真似をしない方が身のためだ。
<池袋の駅要塞>
乗降客数世界第二位(2021年)の巨大ターミナル、池袋駅が要塞化したモノ。JR線のホームが全てフラットに設置されているせいか、ファンファン生成ユニットは設置されていなかった。戦乙女達が駅周辺のファンファンを駆逐した後は、雷人達が要塞攻略に専念できたのもそのためである。広大かつ、多層な地下構造を備えており、いくら複数の戦士達が集ったと言っても、経験年数の浅いメンバーを抱えての攻略はかなりの苦労があったようだ。♰預言戦士♰が合流してからは防衛戦一方だった状況から、反転攻勢に出ることができたが、彼女の強過ぎる火力によってフロア全体が崩壊しかけるなど、別の意味で苦労したようだった。首都決戦では二番目に攻略されたが、他が増援抜きでは現状維持がせいぜいといったところだったので、♰預言戦士♰が鬼札だったことが証明されたシーンでもあった。
<新宿の駅要塞>
乗降客数世界第一位(2021年)の巨大ターミナル、新宿駅が要塞化したモノ。こちらは屈指の規模と広大さ、複雑さを持っている為、池袋駅と違い、ファンファン生成ユニットも設置されていたようだ。後述の渋谷駅と違ってファンファンに埋め尽くされる悪夢にならなかったのは、渋谷駅に比べると生成ユニットの規模が小さかったこと、射撃戦に優れたFPS系戦士が高層ビル群の上に陣取ってハイペースで撃ち落とせたこと、そして、知を欲す者による情報統制によって、新宿駅周辺で普段通り情報連携を成立させていたことが大きかった。
首都決戦においては、三番目に攻略されたが、戦略爆撃機による地中貫通爆弾投下後の混乱を速やかに終息させて戦士達を軍勢として投入できた知を欲す者の指揮、池袋から合流してきた戦士達、雷人や♰預言戦士♰といった豊富な戦力を備えていたからこそ行えた快挙だった。
<渋谷の駅要塞>
乗降客数世界第五位(2021年)の巨大ターミナル、渋谷駅が要塞化したモノ。地上も地下も多層構造なだけあって、最大規模のファンファン生成ユニットを備えており、雲霞の如く埋め尽くすファンファンという悪夢が生まれることになった。雨のように降り注ぐエネルギー弾の前には、百戦錬磨な戦士達とて手の打ちようがなかった。
戦乙女達が到着した時には、地下に逃げ込んで防戦一方となっており、実はかなり危機的な状況にあった。幸い、戦乙女達による統制射撃によって、膨大な数のファンファンも叩き落され、その直後に森で隠遁する者がファンファン生成ユニットを破壊したことで、何とか戦線崩壊を免れることとなった。それでも、補給ポイントも地上近くに設置するなど、援軍が来なければとても攻略などできなかった。
戦略爆撃機による地中貫通爆弾投下後、池袋+新宿の攻略チームと知を欲す者による全域の情報共有と指揮が加わったことで、四番目に攻略できた。ただ、工事中領域では崩落によって、テクニカルが埋もれることになり、それを掘り起こして撃破するまで首都決戦は終わらなかった。
<市ヶ谷の塔要塞>
市ヶ谷駐屯地にある電波塔(+下部のビル)が要塞化したモノ。規模はあまり大きくなく、その為、生成ユニットはファンファン、テクニカル、スパイダーとフルセットを備えていたものの、一度に出てくる数が少なく、市ヶ谷に駐屯している自衛隊の即応部隊によって、溢れる前に撃破し続けることができていた。
ただし、本編でも語られていたように、この要塞は他と違って、電波攪乱を行っており、この塔要塞が陥落するまでは、23区全域で無線系技術に頼る通信、レーダーが機能を喪失していた。
また、これも特筆すべき点だが、バリアが常時展開されており、外部からの攻撃はまるで通じなかった。力押しで抉じ開ける事が成功しなかったので、バリア強度がどの程度あったのかは不明だ。
内部は人が利用することが前提の一般的なビルなので、テクニカルが歩けるほどの広さはなく、内部の防衛は固定設備とスパイダーに頼る形だった。通路が狭いので、メカ&少女系はもとより、装甲服系戦士も突入はできず、真面目にFPS系戦士や魔法使い系戦士を投入していたら、攻略にはかなり手間取ることとなっただろう。
本編では電波攪乱に力を注いだいたせいか、内部の要塞化が遅れており、だからこそ、♰預言戦士♰の呪文による崩落レベルの内部破壊、戦乙女達による隔壁の一点突破からのコアルームへのボム×4投擲、という策も成功したと言える。
首都決戦では一番目に撃破されることとなった。電波攪乱が続いていてはまともに仲間達との通信すら不可能だったので後回しにすることはなかっただろうが、初手撃破を選んだのは正解だった。
<大手町の駅要塞>
東京メトロの5路線が乗り入れている地下鉄としては最大規模の大手町駅が要塞化したモノ。全てが地下にあるので、ファンファンは初期配置のみでファンファン生成ユニットは存在せず、池袋の駅要塞を小規模にした、といったように思える。ただ、ここの特徴は、新宿駅をも凌ぐ規模の東京駅と地下通路で繋がっている点にある。つまり、他の要塞と違い、大手町と東京は二か所の要塞が連携していたのだ。
その勢いは凄まじく、市ヶ谷からの増援を加えて、要塞間に楔を打ち込む突入作戦を敢行したことで、連携を止めることに成功したが、多くの戦士を失うことにもなる序盤最大の激戦となった。
何とか戦線崩壊を免れることができたのは、大手町駅側のチームを率いていたずる賢い者が、味方強化、敵弱体化の魔術に長けた支援特化型だったことが大きかった。相手は弱く、こちらは強く補正をかけることができたからこその突入作戦成功だった。
ただ、それでも渋谷駅と同様、やはりすぐ補給ポイントを設置して防戦に専念せざるをえず、コア攻略には、戦略爆撃機による地中貫通爆弾投下と、他地区からの増援合流を待つこととなった。
<東京の駅要塞>
乗降客数世界第七位(2021年)の巨大ターミナル、東京駅が要塞化したモノ。圧倒的な規模と深さを誇り、要塞内で狙撃戦が発生するほどであり、渋谷駅ほどではないがファンファン生成ユニットも稼働しており、集まった戦士達も地下での防戦に手一杯な状況であった。
狙撃戦に長けた生き延びる射手の指揮によって、防戦一方ではあるが戦線はある程度、安定化させることはできていた。ただし、初戦では自分達だけでは東京駅の戦力を食い止めることができず、かなりの戦力が大手町側へと流れ込むことになり、戦線崩壊一歩手前にまで追いつめられることとなった。崩壊しなかったのは、市ヶ谷にいた夜の風が、自分以外の全戦力の大手町―東京駅間戦線への投入を決め、自衛隊車両によって迅速な移動を行えたからだった。
広大な規模に合わせて、戦略爆撃機による地中貫通爆弾投下も合計6発と大盤振る舞いとなった。その後の攻略も規模の割にはハイペースで進んだが、これは残存する全攻略チームが合流できたからこそ達成できた結果だった。
<作者コメント>
空を飛ぶ敵、移動する地上の一般敵だけでは、他の戦士達との共闘が薄味になってしまう、ということで、一般敵を際限なく出撃させてくる敵拠点、要塞を出すことにした。何もないところに出現するのではなく、既存施設が要塞コアに侵食されて、要塞と化すとしたことで、馴染みのある巨大施設を登場させることもできて良かったと思う。
肉付けしてみると、中に戦乙女が入るのは自殺行為であり、だからこそ、他の戦士との役割分担もスムーズに行うことができた。仲間が攻略することを信じて、自分は目の前の敵と戦い続ける、という熱い展開はやはり良いものだ。
戦乙女が入っていけないので、要塞内の戦闘は、通信越しに聞く程度だったが、空を飛ぶことがメインの本作において、違うところを濃く描写しては、メイン描写が埋もれてしまうので、本作程度の塩梅で良かったと思う。
複数の要塞が残っている中、ラスボスのアーチャーフィッシュが登場することから、要塞からのエネルギー供給があるからこそ、アーチャーフィッシュの船体ビーム砲やバリアが使えると設定したのは良い閃きだった。力を合わせなくては撃破できないラスボス、最高難度希望はないに相応しい演出とすることができた。
2022年10月6日(木)までは毎日7:05に投稿していきます。
第三章は全3パート本作に登場した現代武器、兵器群の紹介です。




