『28話 王都に帰る』
『28話 王都に帰る』
俺はエルフ国皇女のアスカとダンジョンを出る。
アスカは魔法を解かれて嬉しそうであり、俺も来たかいはあるというもの。
アスカ皇女の今後のことを考えるのが大事だろう。
エルフ国の国王も、さぞかし心配しているはずだからだ。
「アスカ皇女、もうグールマスターは倒したのだから、国に帰るのがいいだろ?」
「ええと、私は、帰りません。ロメーロ様と一緒にいる。それと皇女てのは要りません、今後はアスカとお呼び下さいませ」
「はぁ?」
俺は思わず言ってしまう程に、アスカ皇女の発言が意外だった。
アスカと呼べと。
呼ぶのは構わないが。
「私はエルフ国王に会いません。ロメーロ様の行くところに……行きます!」
「いや、それはマズいだろ。心配しているし、エルフ国の第一皇女なわけで、俺が拉致したとなるだろう」
「ああ、そうか、ロメーロ様に連れ去られるなら、むしろ歓迎ですわ!」
「何を言っているのだ。俺は王都に帰るつもりだが、来るか?」
「はい、行きます!」
おれはアスカを連れ去るつもりはないのだが、なぜかアスカの方が俺について来るのである。
困った者だなと考えていても始まらないので、アスカを王都に連れて行くことにした。
王都からも『器用富豪』スキルの瞬間移動を使い来たので、帰りも瞬間移動する。
瞬間移動スキルは俺一人でなくても可能となり、アスカも一緒になる。
アスカは俺の器用富豪スキルを何度も見ているから、戸惑うことはないと考えていい。
グールマスターとの戦いを見ているから瞬間移動くらいなら大丈夫だろう。
「アスカ、これからカイザール国の王都に移動する」
「アスカも移動します。馬車もないですから、徒歩ですよね。構いませんアスカは、ロメーロ様と歩きます!」
「徒歩ではなく、瞬間移動だからな」
「えっ、瞬間、移動?」
「そうだ。心配しなくていい。そのままにしてろ」
「はい?」
「スキル、瞬間移動」
アスカは、やや困っている感はあったものの、そのまま器用富豪スキルを使用し、一瞬で王都にまで移動した。
移動て言っても、実際にはおれもアスカも動きは一切なく、場所だけ移動となる。
「ほら、着いたぞ王都だ」
「ええっ、ちょっとロメーロ様。これは何でしょうか、ワタシ夢を見ているのでしようか?」
「夢とは違う。現実の王都だ。見てみろ、王都だろ」
「あああああああああ、本当にダンジョンの辺りから、王都に来ちゃったああああああああああああああ!」
大丈夫かと思ったのだが、瞬間移動スキルは、それまでのスキルよりも衝撃的だったらしく、アスカは取り乱していた。
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