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『21話 勇者オリオン 視点』

『21話 勇者オリオン 視点』



 あまりいい状況ではないが、クランクを最前列から撤退させた。

 こんなことはパーティーが弱い時にはあったものの、強くなってからは一同もなかった非常事態だ。


「ハニー、ヒールでいいから頼むよ」


「わかった、今する」


 ハニーが撤退したクランクにヒールをするも減少した体力が大きいから苦しいだろう。


 クランクがいない分は俺とボーデンで補うしかない。

 すでにボーデンも前にいき、俺も魔法でいく。


「ファイアボール」


 普段ならこんなヨワイ魔法は使いたくないのだが、俺も魔法が使えなくなっていたから、ファイアボールくらいしかないのだ。


「だああああああああああああ!」


 ファイアボールで向かったものの、ハーピーを下に見ていた。

 ハーピーはファイアボール程度の魔法を難なく防御していて、逆に攻撃に転じて来たのだ。


 俺はハーピーの攻撃をくらい体力を減少させた。

 激痛が走った。


 こんなザコ魔物から激痛を受けるなんて、最悪だ。

 俺の勇者としてのプライドがガタ落ちしたのを感じた。


 あまりの痛さに、言葉が出ない。

 これもロメーロを追放したからなのか。


「オリオン!」


「ファイアボール!」


 少しでも攻撃しないとハーピーに押されていく。

 このままだとまたも負ける!


 前回はスケルトンに押されてしまい、ダンジョンから撤退という汚名となった。


 今は撤退できないし、撤退したら勇者の資格やSランクパーティーの地位も危ないからだ。


「オリオン、ファイアボールをもっと打て!」


「お前も魔法を!」


「ああ、ストーンブレスト!」


 ボーデンも魔法を使った。

 ファイアボールよりも下級の魔法なので、大丈夫だろうが、ハーピーにはキツい。


 ハーピーのランクよりも低い魔法では、倒せるわけなく、ボーデンにも攻撃が届いた。


「くがあああああああああああああああああ」


「ボーデン!」


 ボーデンはハーピーの猛攻を受けて、倒れた。

 クランクにボーデンに俺も動き出せない。


 それに僧侶のハニーも魔法は期待できないとなると、厳しい。


「だから言ったのに、みんな私のこと信じないからよ。ロメーロがいないパーティーには、この依頼は困難。撤退でしょ」

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