『2話 勇者パーティーを追放2』
『2話 勇者パーティーを追放2』
冒険者ギルドのテーブルで罵倒される俺は一番に気になったのは聖女のリアン。
彼女はいつも俺を影で見ている風に思えたし、どこか俺を監視している風にも感じた。
それは俺が役に立たない、単なる補助要員とし、どれだけパーティーに貢献しているかをはかっていたのだろう。
そんなことに気づかずに勇者の為に俺は尽くしてきたわけで、これ程の貢献をしてもなお、追放する勇者には何も言うべき言葉はない。
なにしろ、俺は貢献していたのだからな。
貢献していないのでなく、お前らが貢献しているのを見逃していたのだ。
そこを見逃している勇者どもに俺から残す言葉はなくて、むしろ呆れたわけだ。
「よくも偉そうに言えるな」
「なんだとロメーロ。偉そうに言っているのはお前なんだよ。追放される立場をわきまえろよ。バカ」
ボーデンはバカ呼ばわりしてきたら、僧侶ハニーは、らしからぬ汚い言葉で、
「そうだ、オリオンに失礼だ、土下座しろロメーロ。恥をしれ!」
「オリオンに失礼だぞ。キサマごとき、補助の冒険者が。器用貧乏しかない、無能スキルしかない!」
ここで感情を出して来たのがタンカー役のクランク。
彼は22と少し年上なのに、勇者のオリオンには逆らわない性格だ。
タンカーの強さでは国家最強の強さという噂もあるほどに強い。
戦闘中には必ず恐れずに前衛となり、オリオンやボーデンの盾となる。
彼がいるのといないのでは、戦況は大きく変わる場面を何度も見た。
パーティーには彼のような盾約は必要なのである。
「ロメーロ、土下座しなさい!」
「俺が、土下座? なぜ土下座する。もうパーティーから追放したのだろ俺を。命令される義理はないだろ」
もう追放された後だ。
仲間ではなくて、元仲間である。
聞く耳を持つかは、俺の勝手だろうに、なぜいつまでも要求するのだと、つい言ってしまう。
仲間の時はこんなひどい罵声はなかったが、急に態度がこうなったのは俺が無能な器用貧乏だかららしい。
以前から俺を追放する計画があったと思えるし、その日が今日なのだ。
この日まで俺は気づかなかったが、それは俺が悪いとは思いたくない。
「無能の器用貧乏男のくせに、無能スキルしかない能なしだわ!」
「追放されたのが気に入らないわけ、ならオリオンさ、説明してあげなよ。追放する理由を」
「納得したいのだ俺は。追放されるなら、それだけの理由を。教えてくれてもいいだろう?」
「あはははは、追放される理由が聞きたいって、思ったよりバカか。とりあえず世話にはなったから、お前の悪口はあまり言わずに追放してやったのに、自分からちゃんと説明してかよ、どこまでバカなの。まぁいい、教えてやろう、勇者の俺が」
「頼む」
勇者のオリオンが強い口調になった。
それでは何か、俺に気を使ってくれて、傷つかないようにしていたのか。
ありがたい話だ、オリオン。
しかしありがたいよりも、俺はオリオンの口から聞きたいのだ。
オリオンが直接話し出して、
「クソやろう、話してやろう。俺らの破滅の団は最初はロメーロを雇った。雇った時はまだSランクではなく、下級ランクだった。あの時は俺達はみんな未熟だったのは認める。みんな必死に頑張った。ダンジョンにも行った。難易度の高いダンジョンでは苦労した。しかし、現在はその苦労のかいもありCランク、Bランク、Aランク、そしてSランクパーティーになった。驚異的な速度とギルドからは賞賛されたのはお前も納得するよな?」
「ああ、オリオンの説明したとおりだ」
全部俺が『器用貧乏』から『器用富豪』に進化したからだ。
「しかし振り返ってみて、みんなで相談した。Sランクになってみて、振り返った。そして疑問が生まれる。ロメーロは本当に必要なのかと。荷物持ちや回復薬を準備したりと雑用係もこなした。そして指圧で、毎晩に疲れた体を癒やしてくれた。おかげで体力は回復して、傷も癒えた。だが必ず必要かと言われたら、答えはノーだ。Sランクになった俺達は新しいステージに行く。魔王の討伐や魔族とも戦うステージだ。そのステージにお前みたいな指圧とか要らねえのよ。補助しか出来ない仲間はもう用済みなわけよ。わかるか、お前に。俺達は進化したんだよ、国家から期待されたパーティーなんだ。つまりは役に立たないスキルで、もう追放しかないんだよ!」
オリオンはギルド内にも関わらず、ギルド中に聞こえる声で俺を罵倒した。
これが罵倒じゃなかったら、何が罵倒なのか教えて欲しいくらいに。
よほど俺が嫌なのか、オリオンは言い終えると、スッキリしていた、そりゃそんだけ大声で言えばスッキリもする。
「邪魔なんだよ。トラブルなく追放してやるんだ、何も言わずに去れよ!」
「指圧は良かった、街で指圧士にでもなれよ、案外儲かるかもよ、器用貧乏。あははははははははは!」
僧侶のハニーは大笑いした。
可愛い顔をしているのに、腹は黒いな。
ハニーが何て言おうと気にはしなかったし、勇者のオリオンなど聞こえても聞き流した。
それと大賢者のボーデンに至っては何を言ったかさえ覚えていないかな。
なぜなら俺はリアンを見ていたからだ。
大聖女にして最高の美女とも称されるリアンを。
彼女は何ていうかを待つと、
「ロメーロはこのパーティーに居なくていいよ。早く出ていきなよ。私も賛成する………」
聖女のリアンまで賛成か。
彼女は他とは違い、声のトーンは低い。
追放すると言っているが、どちらかというと、出た方がいいよみたいにも聞こえたのは、俺が都合良すぎるか。
次に賢者ボーデンが、
「特別に攻撃力もない。魔物に対しても一度も攻撃したのを見たことない。いつも後方にいて、補助作業。テントを作るのが仕事。食事も用意する。それしか出来ねえじゃねえか。もう要らねえんだよ!」
ボーデンは思いっきり吐き出した感じだ。
ここまで人に罵声を浴びせるのはどんな気分なのか。
考えたくもないが、俺は我慢して聞いた。
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