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『17話 勇者オリオン 視点』

『17話 勇者オリオン 視点』



 俺は冒険者ギルドにいた。

 パーティーで次の依頼を思案していたからだ。


 いつもなら、ギルドの受付嬢から依頼を頼まれて、まぁやってやるかくらいの横柄な態度であった。


 勇者パーティーだし、こちらはお願いされるまで待っているのだ。


 それが今日は違う。

 いつもと違う雰囲気だった。

 なんだよ俺を見る空気はよ、勇者を見る尊敬の目じゃないよな。


 周りからの会話が聞こえて、


「勇者のオリオン達は、Bランクの依頼に失敗したらしいぜ」


 と言い、


「スケルトンに負けて帰ってきたらしいぜ」


 とも会話していた。


 くそっ、もう噂になっていたのだ。


 僧侶のハニーは、


「なんでスケルトンに負けたのかな、みんなの魔法やスキルがうまく発動しなかったもんね」

 

 言う。

 ハニーの言うのはわかる。

 最悪だ。

 ロメーロを追放して、パーティーの雰囲気は良いはずなのにだ。


「ロメーロがいなくて良かったのに、なぜか魔法が使えない」


 と賢者のボーデンが不満をぶちまける。


「気にするな、また依頼受けたらいい、きっとみんな疲れていたんだよ、少し休んだし、大丈夫だ」


 とクランクが言った。

 クランクの言ったのが俺も同感だったのは、これまで難易度の高い依頼を受けてきたから、気づかぬうちに、精神的に疲れていたのだ。


「ただロメーロを追放したから、こんな失敗になってことはないかな。あいつは『器用貧乏』だったが」


「ありえねぇよ、ボーデン。『器用貧乏』は『器用貧乏』。全ての膨大なスキルを使えるらしいが、全てのスキルがFランクのスキル。使えねえスキルばかり使えるのがロメーロだ。だからロメーロが追放したからとかないぜ」


「俺もそう思う。ハニーは?」


「私も。ロメーロの『器用貧乏』は、逃げるのは最強よ」


「あはははは、言えてる」


 ロメーロが追放されたのが原因かというのは完全に却下された。

 それでみんな疲れから不調におちいったのだろうと考えはまとまり、受付嬢から新規に依頼を受けた。


 スケルトンは失敗したが、今回は大丈夫だと伝える。

 依頼はBランクで、場所はダンジョンであった。

 聖女リアンも一緒である。


 リアンは前回の失敗した依頼を、まるで前からわかっているような言い方をしたのが気になった。


 リアンは重要な仲間でありロメーロとは同じじゃないのは代わりはいないからだ。


 ギルドにいる低ランク冒険者に、俺の強さをいま一度見せる必要があるので、負けられない依頼になるな。


「普通にやれば難なく達成できるダンジョンでしょ、普通に行きましょうよ、怖い魔物もいないさ」


 と僧侶のハニーが言ったところで、出発した。

 ダンジョンに到着してから、いつもの落ち着きを取り戻す。


 タンクのクランクが調子がいい。

 前列に突き進み、いつもながらの盾役に徹した。


 相手の魔物は、マンドラゴラで、野菜のにんじんの形をした魔物。

スケルトンと同じくらいの強さだな。


 なら今回は余裕だろう。

 俺の剣術でマンドラゴラを粉砕していったのは、いつものパターンだ。


 やっといつもの調子が出てきたな。

 ハニーの言うとおり、怖くもないし、ただ疲れてていただけなのだろうな。


 知らないうちに、魔物を倒すと疲れが溜まっていたのだ。

 ハニーからは、


「これでもう怖くはないわね」


 俺は、


「ハニーがいればいい」


 付け加える。

 ハニーは少し赤くなっていたのは、俺を意識したからだろう。

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