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『16話 エルフ族アスカ皇女』

『16話 エルフ族アスカ皇女』



 グールマスターを死なせてあげてダンジョンを出る。

 念の為、グールマスターの魔石だけは回収しておき、あとで役に立つ時もある。

 そのついでに、オークキング、オークジェネラル、オークダーク、オークの魔石も同様に回収。

 アスカ皇女はこの数のオークに、


「なんですかこのオークの数は、もしかしてロメーロ様が倒したと言うの?」


「いかにも俺の邪魔をしたからでオークは全滅させた。魔石を回収するので少し時間をくれ」


「はいロメーロ様」


 オークの数には驚いていたが、俺は驚いていていた。アスカ皇女が俺のことをロメーロ様と呼んだのだ。


 仮にも皇女であり、確か第一皇女と言っていたから、次の記事エルフ国の王女になる立場の人だ。


 そのアスカが俺をロメーロ様と様を付ける呼び方は、いいとは思えないな。


「ちょっと待ってくれよアスカ皇女。俺の呼び方の事なんだが、様付けはまずいだろう?」


「なぜですか。私の命の恩人でもあるのですから、あなたをロメーロと呼び捨てでは、私は納得しませんね。しかもあの汚いし、陰湿なグールから救って頂いたのですから、ロメーロ様です。気に入らないですか?」


「そう言うことではないが、周りの人が聞いたら変に思うだろうからな。無理矢理言わせているみたいに聞こえる」


 当然だろうな、俺は勇者オリオンのパーティーを追放されたばかりの落第者の冒険者となっているからで、まだこのカイザール国では知られてなくても、直ぐにわかることだ。


 そしたら追放された男を様と呼んでいたら、俺が言わせていると思う人がいるはずだ。


 意外と俺はそういうところに敏感であったりする。


「それではご主人様でしたら、よろしいですか?」


「もっとまずいだろう」


「それでしたらロメーロ様にします。エルフ族は助けて頂いた方には特別な扱いをしますので、エルフ国においては、ロメーロ様は英雄となる」


「俺は英雄とか興味ない。つい先程、勇者パーティーを追放されたばかりな男だ」


「えええっ、ロメーロ様を追放したの! 信じられないミスでしょう。あれだけのオークキングを倒せる冒険者パーティーがあるのかと思いますから、それにグールマスターはエルフ国に来たとき、私の護衛を圧倒的に抹殺しました。あのグールマスターを倒したロメーロ様を追放した勇者は本当にバカと言ってやります」


「言ってくれていい。会えばの話だが。俺は勇者パーティーには『器用富豪』スキルを常時発動していたのだ。そのため後方支援にまわっていたら、役に立たないと決まった。一人で来たのは、追放され、どこのパーティーにも所属していないからだ」


 俺はフリーでどこにも所属しないのが合っているのかもな。

 オリオンみたいに自分が一番だと誇示するのが恥ずかしい性格だ。


 堂々とみんなの前で、勇者を自慢するのが、どうにも出来ないのだ。


「ロメーロ様が勇者になったらいい。まさにふさわしい人物です。国に帰ったら国王に進言します」


「いや、俺は勇者は苦手だ。世界を救うのが求められるプレッシャーが凄いからな。勇者のオリオンとパーティーで一緒だったが、オリオンはなぜかプレッシャーに耐えられる性格していたのだ」


「オリオンですか、知っている、あのオリオンのパーティーにいたのですね、そしたら勇者オリオンは今頃は困っているはずですし、ロメーロ様を追放したのを失敗と思っている」


「俺はそれが心配だ。オリオンは完璧主義者だから、失敗を認めがらないのだ。俺を追放したのを認めないと、大きな失敗をするのだ。それが心配だ」

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