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『13話 謎のダンジョン7』

『13話 謎のダンジョン7』




バシっ!

バシっ!


「ぎやああああああああ!」


「終わりだシャドウストーカー。残念だったな。オークジェネラルにも匹敵した力はあったか。だが相手が悪かったな」


「なななな、シャドウストーカーが終わりだと!」


「驚いている間はないぜグールマスター。俺の剣はお前を切っているのだ。気づいてないか?」


「えっ? 私の体を切っていたの?」


「切っていたよ。お前がくだらない会話をしている時には、もう切っていた」


 グールマスターと会話している間に剣を上から軽く切ったのを奴は気づいていなかったらしい。


 もう体は切られているのに、話せるのはアンデッドのなせる技か。

 人族にはとうてい出来ない芸だな。


 思わず褒めてしまうと、グールマスターは、


「あああああああ、まさか、まさか、冒険者を食すために仕掛けたダンジョンなのに、私が負けるとは、あり得ないだろ、お前、あり得ないだろ!」


「そう言われてもな、アスカ皇女は連れて帰る。悪いがお前はダンジョンで死ぬのがお似合いだ。長く生きたろそろそろ永遠に寝る時だ。お疲れ様です」


「嫌だあああああああ、なんなのだ、お前は、オークキングやジェネラルは一人で倒すし、シャドウストーカーはあっさりと倒すし、私も倒すし、あり得ないだろ、こんなことがあっていいのか?」


「あっていいだろ」


「良くない!」


「お疲れ様だ」


 バシッ!

 うるさいし、しつこいので、切ったら、完全に死んだようだ。


 家来のグールは怖がって逃げていって、アスカ皇女は置いていかれた。

 縄で拘束されているのは苦しそうだから、拘束を切った。


「あ、あ、ありがとう冒険者さん。いきなりグールに連れて来られたの」


「最悪だったな。俺はロメーロ。冒険者で、助けに来たので!ダンジョンから出よう」


「私はエルフ属性第一皇女のアスカと言います。助けて頂いて大変に感謝します。ことの始まりは、このグールが我がエルフ国に侵入してきたのがきっかけ。城にいた私を護衛兵を一瞬で殺してしまったの。残された私は抵抗も虚しく、グールマスターに連れて来られたのが、このダンジョンだった。グールマスターはどうやら私を連れてきたのを、国王が勇者パーティーに依頼をして連れ戻しに来るのを予定したみたい。勇者パーティーの勇者と賢者とかの冒険者のSランク級の生き血を吸いたいらしかった。老けたくないからで、若がえるらしいの。私の生き血ではダメらしく良かったわ、ロメーロ」


「それは良かった。こんなグールに血を吸われると考えただけで鳥肌が立つからな」


「それにしても強い、驚いたわ。こんな強い冒険者を見たのは初めてです。勇者パーティーも恐れていなかったグールマスターを、こうもあっさりと倒すとは」


「グールマスターは強かったよ。勇者パーティーでは負けていたからな。ただ俺は『器用富豪』スキルを使える。グールマスターにも負けない」


「『器用富豪』とは聞いたことないスキルです、器用貧乏ならよく聞きますが」


「始めは『器用貧乏』だったが、途中で『器用富豪』に進化した。それまでの、ありきたりの初級スキルがSランク級に進化したんだ。まぁここでの説明は省くが、もう安心だ。エルフ国に連れて帰る」


 アスカ皇女は、俺が言っているのを、何を言っているのかって感じで聞いていた。


 後は、エルフ国にアスカ皇女を連れて帰れば問題は解決だろうし、きっとエルフの国王も心配で、気が気でないだろう。


 本当はAランク冒険者を救いに来たのに、結末はまさか皇女を救うことになったのは、自分でも考えていなかった。


 冒険者とは道なき道を進むというからな、これも冒険者として良くある試練だと思えばいいか。


 ただオリオンらが来なくて良かったなと思うのは俺のおせっかいな性格からで、オリオンやボーデンらが来ていたら、たちまちオークキングの暴力に悲しい結末になったからだ。


 むろん聖女のリアンはオークキングやオークジェネラルの性欲のはけ口になったのは確実だった。


 今頃オリオン達のパーティーはどうしているかな、普通にエピック国で冒険者していれば問題ない。


 エピック国の隣のカイザール国は超危険な国になっている。

 グールマスター並みの魔物が、存在しているのを国王は把握しているのかどうか。


 勇者パーティーをも倒せる力があるのを知らないなら、国が潰れかねないのだ。


「それが帰れません、私は帰れないのです。帰りたいのに帰れないのですロメーロ!」


「どうしてだ、まさかこのダンジョンが気に入ったか?」


「嫌ですよ、グールがウロウロしているダンジョンに住みたい人がいますか。変態ですよ。違います、私はダンジョンに来てから、グールマスターに魔法をかけられたの」


「魔法?」


 それは考えていなかったのであるが、グールマスターは魔法を使えるので、アスカ皇女に何かしらの魔法、呪い魔法や、拘束魔法などをかけていても不思議はない。


 特にあの性格だ、アンデッドのくせに、老けたくないから、アスカ皇女を拉致した性格だ、魔法の一つくらいかけていても驚きはないか。


「どうな魔法かと言うと、グールマスターが言うには、私をダンジョンから出れなくする魔法で、物理的に出れないらしいの。もし強引に出ると、私の体はグールになるの。最悪です!」


「危なかった」


 俺の器用富豪スキルには瞬間移動スキルがあるからな。

 それで一発でカイザール国の王都にまで帰ろうとしていたのだ。


 もしスキルで瞬間移動していたなら、王都についた時にアスカ皇女はグールだったわけだ。


 俺もそんな呪いに近い魔法とは考えていなかったのは反省しておくものの、アスカ皇女には伝えるのは止めておこう。


 知ったら怒るのは避けられないからな。


「危なかったとは?」


「何でもない。アスカ皇女にかけられた魔法なら、問題ない。解除すればいいだけのこと。直ぐに終わる」


 アンデッドらしい実にくだらない魔法だな。

 見た目も醜いが精神も醜いときていて、それがアンデッドなのだとあらためて思う。


 人族には死者を尊敬して家族や友人で墓も作り、拝む習慣があるが、アンデッドのグールにはそんな精神は微塵もないのがわかる魔法だ。


 あまりのくだらない魔法に怒りを通り越してしまう。

 

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