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転生した愛犬は異世界でも主人を想う(仮)  作者: 知紅八斗
第1章 
3/3

再会

私はヒカリの匂いのする方へ森の中を走っていた。


今の私は全ての感覚が覚醒している。


絶対にこの匂いを逃すものか、死んででも見つけ出す!


もっと早く・・・もっと!!


今までに出したことのない速さで走る。


木の枝がぶつかり体に擦り傷がたくさん出来るが、気にしない。


もうすこし、もうすこしだ!


匂いが強くなってきている!


「ヒカリ・・・!ヒカリッ!」


そして、ついに匂いの元へたどり着いた。


そこにいたのは、あの時、最後にヒカリをみた時と全く同じ姿形のヒカリだった。


私は何も考えずに、ヒカリに抱きついた。


「きゃっ!だ、誰?!」


ヒカリが何か言っているが、今の私には聞こえていなかった。


嬉しすぎて、しっぽはブンブン、顔をヒカリに擦り付ける。


「ちょ、ちょっと!離れてください!!」


「ヒカリッ!ヒカリ!!」


私がヒカリの名前を呼ぶと、彼女は困惑の表情を浮かべた。


「え・・・?なんで知っているんですか・・・?」


そうだ、今の私はヒカリの知るコハクの姿ではない。


説明したいが、言葉が出てこない。


「ヒカリッ!私だよ!コハク!!」


「こ、コハク?」


「そう!話すのは初めてだけど、私はずっとヒカリといたよ!!」


「ど、どういうことですか・・・?話すのは初めてなんですよね・・・?」


どうしよう・・・どうやって説明したら・・・どうしたら信じてくれるの・・・


ヒカリとの思い出を話せば、思い出してくれるかな・・・


「ヒカリとお風呂に入ったこともあるし!」


「お、おお、お風呂!? そんなわけないじゃないですか!!」


「私に首輪も買ってくれた!!」


「首輪って・・・私にそんな趣味は・・・犬じゃないんですから・・・って、犬・・・?もしかして、コハクってコハクなの・・・?」


「コハクだよ!空色の首輪を私につけてくれて、そのあと家に帰ったら知らないやつに蹴られて・・・」


「コハクッ!!!!!」


ヒカリが私を抱きしめた。


「本当にコハクなんだね・・・!よくみたらその耳って本物だし・・・てか・・・コハクと同じ耳だ・・・あっ・・・それにコハクの匂いする・・・」


ヒカリも私の匂いを覚えてくれてた・・・嬉しい・・・


「コハクって、人の姿になるとすっごい美人さんなんだね・・・」


そういえば、容姿について一度も考えたことがなかった。


犬だった時の記憶も価値観も残ってるから、不潔にしてなければそれでいいと思っていた。


「私はヒカリからみて美人なの?」


「え・・・だって、髪の毛の色は犬だった時と同じ綺麗な色で、キリッとした目とか・・・そ、それに・・・胸が大きいね・・・私越されちゃった(ボソッ)」


私とヒカリはそれから少し今の状況について話をした。


「じゃあ、ここは日本じゃないんだ・・・」


「うん、多分違うと思う。それに、私がここに来てから15年経っているの。」


「え・・・?そんなに・・・コハク・・・」


「ん?ヒカリどうした」


ヒカリは私の頭を撫でてくれた。


「よしよし」


ああ・・・懐かしい・・・私の大好きな手の温もりだ・・・


私は思わずヒカリの膝に頭を下ろした。


「ふふ・・・やっぱりコハクだ。いつも頭を撫でるとこうして、私の脚に頭置いてたよね。」


すると、私の頭にポツリと水滴が落ちてきた。


「グスッ・・・どうしよう・・・コハク・・・私、どうしたらいいんだろ・・・お母さん・・・」


ヒカリが泣いている。


飼い犬として、由々しき事態だ。


「メグミは無事だと思う。あの時、私が最後にみたときはメグミはあの場所にいなかったよ。もしかすると、メグミもこちらの世界に来ているかもしれない。犬の勘はよく当たるから。」


「そっか・・・でも、コハクがいてくれて本当によかった・・・もしコハクがいなかったらって思うだけで怖いよ・・・」


私はヒカリを抱きしめる。


「大丈夫。ヒカリは私が守る。今度こそ、今度こそは守ってみせる。」


そう、私はヒカリを守る。それが出来るだけの力を得た。獣人に生まれて本当によかった。


母に感謝だ。私を産んでくれたおかげで、こうしてヒカリにも会えた。


「そうだ、ヒカリ!私の家に行こう!」


「コハクのお家?」


「うん!私のお母さんに会わせたい!」

「お、お母さんいるの!?そ、そっか、そうだよね!」


こうして、私とヒカリは獣人の村へと向かった。




村へ着くと早速、私のお母さんにヒカリのことを話した。


そう、私のことも含めてだ。


「なるほど、そちらの娘さんがコハクが生まれる前の飼い主で、なぜかこの世界に来てしまったと・・・私は信じるよ、その話。」


母は意外とすぐに信じてくれた。


「信じてくれるの?」


「当たり前よ。親が子の話を信じないわけないわ。それにコハクが嘘を着くような子じゃないって知ってるもん。あと、獣人って嘘をつくと尻尾に現れるからすぐバレるのよ?」


それは初耳だ。


「ふふ・・・ご、ごめんなさい!笑ってしまって・・・・コハク、犬だった時もすぐ尻尾に出てたんだよ?」


「そ、そうなの?」


「うん、わかりやすい子でした!」


「ええ、今もわかりやすいわよ〜」


どうやら、私の母とヒカリは意気投合したみたいだ。


「じゃあ、ヒカリさん。良かったらこの家に住んでらどう?」


「え?いいんですか!?」


「ええ!コハクのこと大切にしてくれてたんでしょ?それなら全然ウェルカムよ!」


「あ、ありがとうございます!!」


この日、私とヒカリは久しぶりに一緒に布団に入った。


「そういえば、コハクって夜中になると私の布団の中に入ってきてたよね」


「ば、バレてたんだ・・・」

「ふふ、わかるよ〜、コハク結構暑いんだよ〜?」


「そうか・・・不覚だった。」


「でも、すごい落ち着くの。今も目を閉じてコハクを抱きしめると犬みたい・・・」


ヒカリがぎゅっと私の頭を抱きかかえる。


あの頃は人間と同じ腕がなかったから抱きしめ返すことが出来なかったけど、今はできる。


私はヒカリの頭を抱きしめた。


「ヒカリ・・・私が絶対守るからね・・・」


「う、うん・・・ありがとう。えと、コハク・・・?む、胸が・・・息が・・・」


「あ・・・!ごめんなさい!!!」


ヒカリの顔が自分の胸に挟まれて息苦しそうだった。


「こ、コハク・・・前と違って色々大きくなってるからね・・・」


この後、ヒカリはいつの間にか寝てしまっていた。


私も寝よう。




朝になると外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。


辺りはまだ薄暗い。


横を見るとヒカリが寝ている。


そう、私はヒカリと再会したのだ。


夢ではない。


ヒカリはこの世界へやってきた。


理由はわからない。


「ヒカリ、朝だよ。起きて。」


犬だった頃も朝になるとヒカリを起こしてあげていたな。


あの頃は顔を舐めて起こしていた。


油断すると犬だった時の癖が出て舐めて起こしてしまいそうだ。


今の私は獣人なのでしっかり、手と声を使って起こす。


「ううん・・・あさ・・・?」


「そうだよ、今日は私の生活を見せてあげるから、早く起きて!」


「もう少し・・・寝る・・・5ふんだけ・・・」


ヒカリが再び寝ようとしたので、私は彼女をお姫様抱っこでベッドから連れ出した。


「ちょ、ちょっと!コハク!?わかった!わかった!起きるよ!」


またヒカリと暮らせて本当に嬉しい・・・。


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