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転生した愛犬は異世界でも主人を想う(仮)  作者: 知紅八斗
第1章 
2/3

コハクの転生

私が目を覚ますと、見たことのない顔がじっと見つめていた。


何かがおかしい。


体は上手く動かないし、唸ることも吠えることもできない。


唯一、動かせる目で情報を得ようした。


まず、先ほどからこちらを見ている存在は、人間であることが分かった。


でも、人間にはないはずの獣の耳が生えている。


牙も人間のものではない、獣のものだ。


そして、もう一つ気が付いたことがある。


あの目は、母が子を見る目だ。


メグミがヒカリに向ける目だ。


優しい目。


体の感覚に徐々に慣れていくと、自分が頭を撫でられていることに気が付いた。


もう、私には理解できていた。


私は、生まれ変わったんだね。


この人が私の・・・お母さん。


でも、なんで記憶があるんだろう。


もしかしたら、これが普通なのかもしれない。


考えても仕方がない。


とりあえず、出来ることは特にないのだから何も考えずに、時間が進むのをまとう。









こうして、3か月くらいたっただろうか。


私は立てるようになり、話すこともできるようになった。


そう、私は人間に生まれ変わっていたのだ。


正確にいうなら、人間ではない。


人間と獣の間、獣人である。


人間と違い、成長が早いため、立てたり話せたり出来るわけだ。


母に聞いた話によると、私たちは神獣の血を引く一族らしい。詳しくはよくわからない。


その一族の村に私は生まれたらしい。


それに、不思議なことがある。


一つは、日本語がこの世界では通じること。


確か、ヒカリが英語という言葉を勉強していた気がするが、日本語、英語のほかに沢山言葉があったはず。なぜ日本語が通じるんだろう?ここは日本なのかな?


もう一つは、私の名前についてだ。


この世界に来てから私は新しい名前を貰った。


その名前が


「コハク、ご飯出来たわよ!」


そう、犬だったころの名前と同じなのだ。


「はーい」


私は返事をする。


言葉を話せるようになって私はとても嬉しく思う。


それにもっと嬉しいことがある。


それは、ご飯がとても美味しいのだ。


「いただきます。」


私は席に着き、さっそく食事を摂り始めた。


今日のご飯はキノコのスープと川で釣れた魚を焼いたものだ。

犬だったころは、人間の食べる物は食べられなかった。


体に良くないらしい。


しかし、今は獣人となり、人間と同じ物が食べられるようになった。


ヒカリから貰うご飯も美味しかったのだが、出来ればヒカリたちと同じ席に座って同じものを食べてみたかった。


それにしても、生まれ変わって3か月経つのに、ヒカリたちの事ばかり考えているな・・・


本当に無事なのだろうか、しっかりご飯を食べているのかな・・・


「どうしたの?コハク元気ない?」


母が私を見てそういった。


「大丈夫だよ!ちょっと考え事してた!」


母を心配させないように、生まれ変わる前の話はしないようにしている。


でも、いつかは話そうと思っている。私は嘘が苦手なんだ。


「考え事?ふふ、生まれてまだ3か月なのにずいぶん大人っぽいわね。」


もしかして天才だったりして、と母が笑顔で話している。


もう、犬だった頃の記憶があると言ってしまおうか。


たしか、獣人は15歳で成人となると聞いた。


その時に話そう・・・。


ちなみに、生まれたばかりの頃は成長が早いけど歳をとるにたびに、それが緩やかになるらしい。


寿命も人間より長い。これは犬とは大きな違いだ。


その代わり、中々子供が生まれないらしい。


そういえば、私の父はどこにいるんだろう?


私はスープの飲んでいる母に聞いてみた。


「お母さん、私のお父さんはどこにいるの?」


ぶふっと母がスープを吹き出した。


「あ、ああー、お父さんね〜、お父さん・・・」


なんだろう、この反応は・・・


「お父さんはね・・・龍なの、だから殆ど会えないのよ・・・。」


私にでもわかる。嘘だ・・・。


もっとマシな嘘があったのではと思うけど、口には出さない。


きっと話したくない何かがあるんだ。


もしかして、もうこの世にいないのだろうか・・・。




そして、15年経った。


私は15歳となり、明日成人の儀を行う。


そのため、明日使う食材を集めるために山に狩りをしにきていた。


「うーん、向こうかな?」


獣人の優れた嗅覚を活かし、獲物を探す。


匂いを辿っていくと、少し離れたところに鹿が見えた。


そう、この世界の動物は基本的に前の世界と同じ動物が存在する。


でも、あのヒカリたちがいた世界とは全く別の場所だ。


私は肩にかけていた弓を構える。


「ここかな?」


獣人は嗅覚以外にも、視力、聴力、腕力、脚力等が優れており、身体能力が極めて高い種族らしい。


その、身体能力をフルに活用した弓使いで矢を放った。


「よし、仕留めた!」

矢は見事に鹿の心臓を貫いていた。


「さっさと、血抜きをして運んじゃおっと」


鹿を木の枝にぶら下げ、首の血管をナイフで切る。


血を抜いている間に鹿の皮も剥いでしまう。


一通り作業を終えると、母のいる家へ向かった。


「ただいま〜!」


「お帰りなさい!コハクはやっぱり狩りの天才ね!あとは私に任せなさい!」


私が狩りをして、母が調理をする。これが、いつもの流れだ。


「じゃあ、私は体が汚れたから水浴びでくるね!」


「はーい!いってらっしゃい!」


この村の近くには川が流れており、そこでは魚も釣れるし、もちろん飲み水としても使える。


川下についた私はバシャバシャとまず顔を洗う。


そして、服を脱ぎ川の中に入り、体を洗っていく。


「ふぅ〜・・・お風呂入りたいな」


この村にはお風呂がない。


基本は川の水で体を洗うか、濡らした布で体を拭いたりする。


だから、ヒカリと入っていたお風呂が懐かしい。


今思えば、すごかったな。


なんで、暖かい水がでたんだろう。


あの、いい匂いのする泡はなんだったんだろ。


「まぁ、考えても仕方ないか」


私は川から上がり、ブルブルと犬と同じように体を震わせ水気を飛ばし、服を着た。

気持ちの良い風が体を包み込む。


「いい風・・・ちょっと横になろうかな・・・」


私は大の字で寝っ転がった。


本当は無防備になるから危ないのだが、しっかり音や匂いに気をつけていれば大丈夫。


目を閉じると、先ほどよりも風の音を感じられた。


木の葉っぱが揺れる音、川の流れる音、鳥の声。全てが鮮明に聞こえる。


「あー・・・こうしてる時が一番好きかも・・・」


しばらく横になっていると、どこからか森とは違う匂いが鼻に触れた。


私の意識は一気に覚醒する。


この匂いを忘れるはずがない。


忘れるわけがない。


なんでも、なんども、なんども嗅いだ匂い。


大好きな匂い。


懐かしい匂い。


体に電撃のような衝撃が走る。


これは、ヒカリの匂いだ。


「ヒカリ!!!」


私の体は勝手に動いていた。


その匂いの元へ走り出した。


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