新しいまち
『娼婦のデパート』では、世界中の珍しい衣装に身を包んだ、色とりどりの美しい女性たちが働いている。お客はまずサロンで楽しく娼婦たちとおしゃべりをして、合意が取れたら上層階の個室へ行ってお楽しみ......というシステム。
「いやー、ここは天国ね!おとなのおねえさん(=娼婦)もジェントルマン(=客)もいるし。」
「まあ、移動の必要が少ないぶん、合理的ではあるな。倫理的にどうかはおいておいて。」
「にやけてるわよ、顔。」
ゴッホもきれいな女の人をたくさん見ることができて嬉しいのか、文句を言ってこない。デメリットといえば生活が完全に夜型になったことくらいかな。
「そういえば、ゴーギャンは南の島についたのかしら。」
「彼のことだ。きっとどこでもやっていけるだろう。」
アロハシャツのさわやかイケメンは、噂によると「ちょっとしばらく楽園に行ってくるわ」とか言って急に消えたらしい。
らしい、というのはもうあの町にいないから。私たちも少し前に移動をして、新しい街へと活動拠点をうつしていた。そして、以前にも増してガンガン金を稼いでいる。
心残りといえば、食い逃げ騒動をおこした一流レストランへ再訪できなかったことくらいか。行きはしたのだが「レイナ&ゴッホお断り」とか扉に貼ってあった。今度こそきちんと払おうと思ったのに、飲食代。味はおいしかったしね。
町を去った理由は、それだけではない。最後に戦ったあの女と二度と遭遇しないためだ。思い出したくもないのに、今でもありありと恐怖が蘇る。
ゴッホが見つけた『おとなのおねえさん』は、実はとんでもないバケモノだったのだ。