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第八話 川発見!

「よいしょ、こらしょ!」


 畑づくりを始めてから数日後

 俺はゴーレムたちと木々を伐採して確保した、五十メートル四方ほどの土地を耕していた。

 ゴーレムたちとタローは、広くなった拠点周辺を警戒してもらっている。

 いずれは柵を作って守る予定だが、それまでは人海戦術だ。


「ふぅ……ひと段落着いたな」


 端まで耕したところで、汗をぬぐう。

 あとは探索に出かけたゴーレムたちが持ち帰ってくる種さえあれば、いつでも植えられるな。

 

「ん、服がちょっと臭うな……」


 汗をぬぐった袖から、独特の嫌な臭いがしてきた。

 ここに来てからはや一週間ほど。

 泉の水で洗ってはいたが、それだけではだいぶ厳しくなってきたな。


『村人の服の作成には、綿花もしくは羊毛が必要です』

「どっちも今のところは手に入らないな。毛皮を服にはできないのか?」

『毛皮のコートを作成可能です。しかし、現在の環境においては不適であると判断されます』


 その気になれば、裸でも過ごせそうなぐらいだものな。

 今の状態で毛皮のコートなんて来たら、暑苦しくって仕方がない。


「いずれ方法を考えないとな。……お?」


 話をしていたところで、木々の向こうからゴーレムが現れた。

 様子からしてあれは、先日、作物の探索へと送り出したものの一体だろうか?

 その手にした小袋は、パンパンに膨らんでいる。


「良く帰ってきたな! えらいぞ、えらい!」


 俺はゴーレムに近づくと、その背中をポンポンと叩きながら袋を受け取った。

 すぐさま口を開いてみると、中にはゴマ粒ほどの茶色い種がぎっしりと詰まっている。

 よほどの群生地を引き当てたのだろうか、大した量だ。


『黄金小麦の原種の種子です。これだけの量があれば、ソル様の消費分を十分に賄うことが出来ます』

「ひとまずは主食の確保ができたってわけだな。よしよし!」


 改めてゴーレムの方を見やると、ゴーレムは嬉しそうに頭を下げた。

 あとはコイツを畑に植えて、さっそく栽培を開始しないとな。

 俺は小屋の方へと向かうと、ちょうどそこで警備をしていたゴーレムに声をかける。


「この種をあの畑に植えてきてくれ。そうだな、スペースは畑の半分ほどでいい。できるか?」


 すぐさまうなずき、俺の手から種を受け取っていくゴーレム。

 あとはしっかり任せておけば、今日中には植え終わるだろう。

 そろそろ日暮れも近いし、俺の方は食事の支度でもするかな。

 まずは取っておいた種火を小屋の外に出して……。


「お、また戻ってきたのか! おーーい!」


 焚火で肉を焼いていると、またも探索組のゴーレムが戻ってきた。

 どれどれ、今度は何を持ってきてくれたんだ?

 俺がさっそく手を差し出すと、ゴーレムはからっぽの袋を返してきた。

 あれ、何も見つからなかったのか?

 俺が首をかしげると、ゴーレムは落ちていた枝を拾った。

 そしてサッサッサと線を引いていく。


「うーん、もしかして川か?」


 俺が問いかけると、ゴーレムは嬉しそうにうなずいた。

 おおお、そいつはいいな!

 川に行けば魚を手に入れることが出来る。

 肉と保存食ばかりで、さすがに飽きてきていたところだ。


「ぜひ行ってみたいところだな。その川まで、どのくらい距離がある?」


 俺がそう尋ねると、ゴーレムは大きく手を広げた。

 かなり遠いと言いたいようだ。

 ゴーレムが戻ってきた時刻から考えると、片道で丸一日ってところだろうか。

 拠点の防衛力は充実しているから、しばらくいなくなっても平気ではあるけれど……。


『タローに騎乗することを推奨します』

「あ、そうだ! このためにタローがいたな!」


 俺はパンパンと手を鳴らすと、声を張り上げてタローを呼んだ。

 バタバタバタ。

 森の木々を掻き分けて、黒い巨体が姿を現す。


「よしよし」

「クウウ……」


 顎をなでてやると、タローは気持ちよさそうに目を細めた。

 ほんと、こうしていると大きな犬みたいなもんだな。

 とても前に襲い掛かってきたクマと同じ生き物とは思えない。


「タロー、俺を背中に乗せてみてくれ」

「ガウウ!」


 どっこいしょっと。

 いざ背中にまたがってみると、思った以上に安定感があった。

 肩幅が広い分、スペースがあって身体が横揺れしない。


「タロー、走ってみてくれ」

「ガウ!」


 俺に指示に従って、警戒に走り出すタロー。

 おお、速い速い!

 五十メートル四方ほどある畑の端から端まで、すぐに走り切ってしまった。

 俺が全力で走るよりも、いくらか速そうだ。


「タローはこの速度をずっと維持できるのか?」

「ガウッ!」


 任せておけとばかりに、タローは力強くうなずいた。

 これなら、川までかかる時間を半分ぐらいには短縮できそうだな。

 さっそく明日、荷物をまとめて出かけるとしようか。


「それじゃあタロー、よろしく」

「ガウウウッ!」

「ははは、本当にお前は犬みたいなやつだな!」


 従魔の首輪の力か、それとももともとの性格か。

 タローは尻尾を振りながら、前足を持ち上げて吠えた。

 明日の遠出、少し楽しみだな!


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