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第六話 リベンジ! クマVSゴーレム軍団

 翌日。

 俺は丸太を抱えたゴーレム軍団を引き連れて、例の水場まで来ていた。

 ここでしばらく待っていれば、あのムーンベアが必ず現れるはずだ。

 奴とて生き物である以上、喉が渇けば水を飲みに来る。


「今のうちに、場を整えておこうか。ゴーレム、そこの木を倒してくれ」


 俺の合図に従って、水場に向かって伸びていた木を倒すゴーレムたち。

 さらに足元の土も整えさせて、戦いのための場所を確保する。

 これで準備はおよそ整った、あとはムーンベアが襲来するのを待つばかり。

 ゴーレムたちを草陰に移動させると、俺は息をひそめて待機する。


「あれは……」


 待ち続けること数時間。

 ついに前方の木陰から、黒く大きな影が姿を現した。

 首元に現れた半月の模様。

 間違いなく、先日のムーンベアである。

 奴はこちらの姿に気づくと、二本足で立ち上がる。


「グアアオオッ!!」


 雄叫びを上げると同時に、駆け出すムーンベア。

 黒い巨体が木々の間を滑るように疾走する。

 四足獣に特有の力強く無駄のない動きだ。


「いけ、ゴーレム!!」

 

 ムーンベアの速度が最高潮に達したところで、草陰から現れるゴーレムたち。

 それぞれに丸太を抱えた彼らは、一塊となってムーンベアに突撃していく。

 正面衝突。

 質量と質量がぶつかり合い、轟音が響く。

 十体のゴーレムたちは勢いよく丸太を押し込み、ムーンベアの動きを抑え込む。


「よし、そのまま決めろ!」


 俺の号令の下、ゴーレムたちはムーンベアを近くの大木へ押し付けようとした。

 しかし、このまま黙っているムーンベアではなかった。

 恐ろしい雄たけびを上げると、自身を抑える丸太の一部を払いのけた。

 そしてそのまま、思い切り腕を伸ばすと先頭にいたゴーレムの頭を吹き飛ばす。


「ちっ! 大丈夫か!?」


 頭部を失ったゴーレムは、そのまま機能停止して倒れてしまった。

 数が減ったことで、徐々に押し返してくるムーンベア。

 まずいな、こいつ思った以上に強いぞ!

 俺の予想では、最初の一撃でほぼ勝負が決まるはずだった。

 ムーンベアは確かに強力な魔物ではあるが、まさかこれほどとは……!


「厄介だな……!」

『ムーンベアの戦闘力が基準を大きく上回っています。魔力が高い環境により発生した変異種であると推測されます』

「よりにもよって、ついてないな!」


 そう言っているうちにも、ゴーレムの腕がもげた。

 まだ戦えるようだが、このままだとじり貧状態に陥りそうだ。

 ムーンベアだって、体力が無限にあるわけではない。

 あと少し、あと少しだけ戦力があれば状況をひっくり返せそうなのだけど……!


「グアアアオッ!!」


 無慈悲に振るわれる爪。

 頑丈なはずのゴーレムの身体が、大きくえぐり取られた。

 ゴーレムたちはもはや満身創痍、無事な方が少ないくらいだ。

 ムーンベアの方もそこら中に手傷を負ってはいるが、まだまだ気力に満ちている。

 血に飢えた眼は冴え冴えとした光を放ち、こちらをまっすぐに見据えていた。

 何かいい方法はないか……?

 とっさに周囲を見渡すと、破壊されてしまったゴーレムたちの残骸が目に入る。


「そうだ。こいつらを……!」


 木の剣から木のピッケルへと、獲物を持ち換える。

 そしてすぐさま壊れたゴーレムたちの残骸へと走った。


「グラアッ!!」

「くっ!」


 こちらの狙いを察したのだろうか?

 ゴーレムたちを振り払い、俺に向かって爪を伸ばすムーンベア。

 しかし、俺の方がわずかに動きが早かった。

 石くれと化したゴーレムたちが白い光を帯び、見る見るうちに修復されていく。

 ――壊れたならば、また作ればいい。

 ゴーレムたちを再利用できるかは未知数だったが、うまく行ったようだ。


「いけ、今度こそ倒すんだ!!」


 再生したゴーレムたちが、今度こそムーンベアを圧倒し始めた。

 ゴーレムたちの力によって、黒い巨体は今度こそ大木に押し付けられる。

 よし、このまま一気にとどめだ!

 俺は改めて鉄のナイフを取り出すと、再びムーンベアへと接近していった。

 すると――。


「クウゥン!」


 急に、子犬のような鳴き声を発したムーンベア。

 そのまま身体を仰向けにすると、手足をだらんと伸ばす。

 これは……もう降参したってことか?


『これは服従の合図かと推測されます』

「俺に勝てないと悟ったってわけか」

『このムーンベアは知能が相当に高いようです。こちらが戦力を補充できると知り、敗北を認めたのです』

「うーん……どうしようかな」


 服従したと言っても、相手は魔物だ。

 ゴーレムたちがいなくなった途端に噛みついてきたりしたら、たまったもんじゃない。

 安全策を取るなら、構わずとどめを刺してしまうべきだろう。

 けど、こいつの戦闘力と機動力は魅力なんだよな。

 ゴーレムたちは強いが、普段から護衛として使うには少しばかり足が遅い。

 この泉まで進軍するのも、実を言うと結構大変だった。

 その点、このムーンベアなら乗り物代わりに使うこともできる。


『裏切りを防ぐアイテムを作成可能です』

「ほう?」

『従魔の首輪と呼ばれるアイテムがあります。これを降伏した獣に嵌めると、それ以降、獣は主人を襲うことが出来なくなります』

「うってつけのアイテムだな。それで、材料は?」

『獣の皮と鉄のナイフで作成可能です。獣の皮は、猪やウサギの皮で問題ありません』


 それなら、昨日の猪の毛皮が小屋においてある。

 少し持て余し気味だったけど、使い道が出来て良かった。

 

「じゃあ、ひとまず家に帰るとするか。ついてこい!」

「ガウッ!」


 犬のようにうなずくムーンベア。

 こうして俺は、頼もしい味方を手に入れるのだった――。


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