コント「風邪の診察」
医者「次の方どうぞー」
患者「よろしくお願いします」
医者「今日はどうされましたか?」
患者「いや、一昨日から頭痛が酷くてですね。昨日から喉も痛くなって、咳も出始めたんで、風邪じゃないかなあと思ってきたんですけど」
医者「そうですか。熱はどうですか?」
患者「熱はないですね」
医者「まあ、熱がなくても風邪の症状は出ますからね。特に今は季節の変わり目ですし、具合が悪くなる方も多いですよ」
患者「ああ、やっぱりそうなんですか」
医者「ええ。昔からよく言うでしょう? 季節の変わり目に風邪を引くヤツはバカだって」
患者「聞いたことねえよ」
医者「聞いたことないですか? おっかしいな……」
患者「おかしくないわ。夏風邪はバカが引くとごっちゃになってねえ?」
医者「ああ、そうとも言いますね」
患者「そうとしか言わねえわ」
医者「とりあえず診察しましょう。頭はどのように痛みますか?」
患者「どのようにって言われてもなあ」
医者「頭痛にも種類があってですね、症状にあわせて薬を出すんですけど」
患者「ああ、なるほど」
医者「まずは波乗り型ですね。ズキンとした痛みが波打ってやってくるような感じなんですけど」
患者「そういうのではないですね」
医者「では、ハリネズミ型はどうですか? チクチクと刺すような痛みの感じ」
患者「んー、ちょっと違うかなあ」
医者「なるほど、そうするとボウガン型ですかねえ……」
患者「ボウガン型?」
医者「頭に矢が突き刺さった状態なんですけど」
患者「刺さってるわけねえだろ」
医者「ないですか?」
患者「見りゃわかるだろ、刺さってるか刺さってないかぐらい。刺さってたら救急車呼ぶわ」
医者「それもそうですね」
患者「ああ、もう。話してるだけじゃなくて、何かあるだろ。風邪の診察なんだから、胸を見るとか」
医者「露出癖が?」
患者「あるかバカ。聴診器! 肺の音聴くとかあるだろ!?」
医者「ああ、そうでしたね。じゃあ、服をまくって深呼吸してください」
患者「大丈夫かな、この先生……」
医者「うん。肺の音は綺麗ですね。じゃ、採血しましょうか?」
患者「は? 採血?」
医者「ええ。血を調べると身体の状態がすぐにわかりますので」
患者「いやあ、先生……。恥ずかしい話なんですけど、オレ注射苦手なんですよ」
医者「何だそんなことですか。安心してください、私も苦手ですから。注射打つの」
患者「もっと怖いわ。嫌だよ、絶対任せたくないわ」
医者「アッハッハ。ヤだなあ、患者さんの不安を取るための冗談に決まってるじゃないですか」
患者「全然、不安取れてないけどね。むしろ増幅してるけどね」
医者「大丈夫ですよ。私の注射、患者さんに評判なんですから。痛くない上に、注射を刺したあとがキレイだって」
患者「ホントに?」
医者「ええ。注射のあとを線で繋ぐと、北斗七星みたいだって」
患者「星座じゃねえか。え? メッチャ、注射針刺してるじゃん」
医者「はい。そうしないと血が採れないので」
患者「いや、何かおかしいこと言いました? みたいな顔してるけど、すげえおかしいこと言ってるからね?」
医者「そうですか?」
患者「ああ、もういいよ! とにかく薬出して薬! 風邪薬ならすぐ出せるでしょ!?」
医者「ではとにかく頭の痛みを抑える薬ですね、これをまずお出しします」
患者「そうそう。そういうの早く頼むよ」
医者「で、この薬を飲むと、お腹が痛くなる恐れがあるので、それを抑えるための胃薬もお出ししますね」
患者「ああ、そういうの大事だよね」
医者「で、この胃薬飲むと、便秘気味になりやすくなるので、整腸剤も一緒に」
患者「あ、そうなの?」
医者「それでこの整腸剤を飲むと、食欲が無くなることがあるので、食欲を増進させる薬も一緒に……」
患者「めんどくせえな! いいよ、もう頭痛薬だけで」
医者「頭痛薬だけでいいですか? それじゃあそれをお出ししますので、それを飲みきっても具合が悪いようなら、もう一度お越しください」
患者「うん、まあ、もう二度と来ないだろうけど、一応覚えとくわ」
医者「とりあえず薬を一年分出しておきますので」
患者「長えわ。一年後とか同窓会かよ」
医者「……いや、同じ学校だった覚えは」
患者「例えだよ、例え! ああもういいわ! 帰るわ! 別の病院行くからな!」
医者「あ、ちょっと待ってください!」
患者「何だよ」
医者「患者さん怒りっぽいので、カルシウムを採るといいですよ」
患者「お前のせいだよ!」