20/20
二十、暗い底から這いあがる
一話目の続きです。
暗い。体を得体のしれない何かが包んでいる。
感覚が薄い。
まとわりついてくる、妙なもの。
水のようでもあるけれど、息ができる。
僕はいつまでここにいていいんだろう。
ここに来てから、大分時間が過ぎたけれど。
気持ち悪い感覚は薄れ、今では心地よいとさえ感じている。
暗い底。上は果てしなく続いている。
足元には確かに感覚がある。
前まではなかったのに、今ではある。
安心感が薄れてきたのかもしれない。
感覚の一つ一つが戻ってくる。
安心が消え、僕に残ったのは「恐怖」だった。
こんなところにいる場合じゃない。
僕はここにいちゃいけないんだ。
上を見る。
果ては見えない。
上までどこまでかかるだろうか。
でも構わない。
今からでも間に合うはずだから。
暗い底。体を得体のしれない何かが包んでいる。
動かせなくてもいい。感覚がなくてもいい。
今は少しでも「上」を見なくちゃ。
暗い底。上まではだいぶかかるだろう。
それでも別にいいんだ。
暗い底から這いあがる。
一応ここで完結とさせていただきます。




