一、暗い底で何かに体を包まれて
暗い。体を得体のしれない何かが包んでいる。
水のようでもあるけれど、僕は息をしていられる。それが妙に気持ち悪くて、胃の中のものを吐き出してしまいそうだ。体を動かすと、「それ」も一緒にかすかに動く。まとわりついてくる。
地に足はついていない。
腕はなかなか動かせない。
頭がどっちかわからない。
息苦しいのかもしれない。
ものが良く考えられない。
動いているのかもわからない。
それよりも、「生きている」のかがわからない。
感覚が乏しい。
視界は薄暗く、深い緑にも、暗い青にも見える。
匂いはしない。
まるで何かの底のようだ。
浮いているのか、はたまた立っているのか。
目は開かれているのか、閉じているのか。
腕はついているのか。足は動くのか。
全ての感覚が薄くて、不安で仕方がない。
ちゃんと機能するのは心だけ。
いや、心も壊れているのかも。
どうせなら、ずっとまどろんでいたい。
この得体のしれない「何か」に包まれたまま。
いつかきっと、自分が「何」かわかるから。
口を開く。
声にならない叫びが口から洩れる。
耳は聞こえず、目も見えない。
それすらも、わからない。
僕はいつまでここにいるんだろう。
僕はいつまでここにいていいんだろう。
この暗いなにかの底に。
体を優しく包まれたまま。
多分夢で見たのをもとにしています。すごい動きにくかったけれど、不思議と心は軽く、息をすることもできた、みたいな。




