二十七話 決行日を決めました
話のストックが完全に切れてたのでそれを作っていました。遅れてすいません。
帝国に来て一週間ほど経った。その間、レルカから情報を待ちつつ、ランパードと対人試合を繰り返した。数日間やってみて分かった事、それは……ランパードは槍以外がからっきしだという事だ。
攻撃してくる時に威力は強そうなのだが、大振りなので避けやすい。そう思って小技を組み入れてもあからさま過ぎて何とも言えない。
そして、俺が攻撃に入ったら予想通りの場所に入るので大体いつもこれで終わる。
「何でこうも簡単にやられちまうんだ?」
「うん……攻撃がね、正直なんだと思うよ。モーションも大きくて遅いし、小技も分かりやすいから」
「そうか。……じゃあ、今度は武器持ちでやろうぜ」
そう言ってランパードは壁に立てかけてある木で作った木剣と木槍を取って来て、木剣を俺に渡す。これらは素手だけじゃ楽しくないと言ったランパードが俺に作らせた物だ。
この部屋はかなりの広さで耐久力もある事が分かったので木までなら何とか大丈夫だ。それ以上になると壁を貫いたり、地面や天井に穴が空いたりする。……原因は全てランパードだ。その後の修復が大変だった事は記憶に新しい。
それぞれの武器を手に持ち、一定の距離を作る。それから十秒経ったら開始だ。
十秒経つと同時にランパードが飛び込んで来た。まずは槍を真一文字に斬る。それをしゃがんで避けたら素早い返しで振り下ろす。
それも避けた俺はステップで後ろに回り、突きを繰り出す。この攻撃にランパードは木槍の石突きで外す。さらに石突きの突きを利用して回転し、再び横に斬る。俺はそれをスウェーバックで避け、距離を取る。
ランパードはその距離を詰めに駆け抜ける。普段はこの後ランパードの猛攻を受け流して終了なのだが、今回はちょっと攻めてみよう。
俺は速さのギアを一つ上げ、向かって来るランパードの真横に移動する。そのまま胴に一撃入れ、もう一つ膝裏にも入れる。崩れた所を後ろに回り、木剣の刃の部分を首に当てる。当てた部分は後ろ側ではなく、前なので余裕の勝利である。
「かぁ~、参った! まだまだ余裕かよ」
「ランパードさんは普通に凄いですよ。最初の一撃で大抵の人は終わりですから」
「でも、まだスキルすら使って無いんだろ?」
「……ええ、まぁ」
「くっそぉ。せめてスキルだけでも使わせられるようにしねぇとな」
ランパードは木槍を放り投げ、本気で悔しそうに両手両膝をつく。俺はそれを宥めているとレルカが帰って来た。どうやら今日の分は終わったらしい。まだ日数には余裕はあるが、もうそろそろ進展が欲しい。……本格的にこちらでも動いてみるか。
「帰って来たわぁ~。レイン君~、癒させてぇ」
「ちょっと、レルカさん。いきなり抱き着くのは止めて下さいって言ってるでしょう?」
抱き着いて来たレルカに離れる様に言い、取り敢えずシャワーを浴びる様に言う。時間的にはまだ昼なんだがレルカは一、二日くらいずっと情報を集めて来る。最初は現在のニナたちの場所で安全だと分かっただけで良かった。今回はどうだろうか。
シャワーから出て来たレルカは俺を抱き上げ、ベットに横たわる。……ランパードもそうなんだがお前ら、少しばかり馴れ馴れしくないか?
基本的に俺はギブアンドテイクで行こうと思っている。だから、抱き締められても逃げようと思えば出来るのだが、逃げない。ランパードとの疑似戦も運動を目的としている。
「ひょ、ひょっと、しょのみゃみゃねにゃいで(ちょ、ちょっと、そのままねないで)」
「お話はぁ、後でぇ~」
俺を抱き締めたまま眠り始めたレルカ。いや、疲れてるのは知ってるから。離して欲しいだけだから。
絶妙な力加減で押さえつけられ、上手く動けない。リリィ、偶にミーナもこんな動きをするので早々に諦めた。
抜けるのを諦めた俺はその場で回転させるように動かす。すると簡単に動く。この体験は何回もしてきたが未だに慣れない。一体どうなっているのか、本人に聞いてみたい。……聞いた所ではぐらかせるのがオチだろうけど。
それに対する思考を止め、辺りを見るとランパードが何やら準備をしていた。
「何か用事ですか?」
「ああ。皇帝のな。反旗を翻すのを悟られる訳にはいかねぇしよ」
「そうですね」
荷物をまとめたランパードはそう言い残して部屋を出て行った。
結局、この中で意識があるのは俺だけ。しかも、身動きが取れないので特にやる事がない。必要な道具の作製は前回で終わらせてしまったし、どうしよう……ステータスでも見るか。ここ最近、見てなかったし。
【レイン 男 五歳
レベル109 人族
HP・145360/145360
MP・628180/628180
力・135400
体力・222720
防御・134300
精神・153710
敏捷・145110
魔攻・196280
魔防・196280
<特殊技能>
特質、偽造、精神強化(極)、剣神術、ステータス補正、鑑定(極)、調合(極)、魔力最大量上昇、自然治癒、魔力回復増加(極)、収納箱
<スキル>
魔力操作(極)、身体強化、無詠唱(極)、体術、格闘術、観測、礼儀作法、緻密操作(極)、MP回復(極)、HP回復、武器作成(極)、魔道具作成(極)、気配遮断、回避、狙撃、魔力弾(極)、刀術、観察眼、二丁拳銃、気配感知、立体機動、天駆(極)、不眠、併用、並行思考、採取、解体、完全耐性
<魔法>
生活魔法、水魔法、風魔法、光魔法、召喚魔法、氷魔法、回復魔法、雷魔法、嵐魔法、使役魔法、吹雪魔法、空間魔法、風雷魔法
<称号>
忌避体質(神仕様)、転生者、神と邂逅せし者、孤児、上位属性取得者、合成属性取得者、変化属性取得者、魔物を従えし者、大量殺戮者、全てを見通す者、空に浮かぶ者、苦難を乗り越えし者、魔力を操りし者、獣と戯れし者、限界を超える者(レベル100)】
……なるほど。魔力量の上昇は特殊技能やスキルのせいかな。いやぁ、ここに来て初めてまともに見えたよ。ほら、いつも上がり方が尋常じゃなかったからさ。……これを見てそう思えるだけで末期だと思うけど。
特にする事も無く、しようと思っていた事もレルカがいたんじゃ、出来ない。よってボーっとする。
***
いつの間にか俺も寝てしまったようで気付いた時には日が暮れ始めていた。寝返りを打つとレルカは未だに寝ている。レルカは寝た時の最初辺りは離さないが、時間が経てば離れる事が出来る。
それを知る俺はレルカの腕の中から抜け出す。そろそろメイドが来る時間なのでちょっと気配を消した。……あ、そう言えばランパードは今日、どこか行ったんだっけ。
その後待っても誰も来なかったので気配遮断のスキルを解除する。一安心した俺はイスに座ってくつろいでいると後ろからレルカに抱き着かれる。半分寝ぼけている様で足元が覚束ない。
抗うのも面倒なので着の身着のまま、合わせていると目が覚めたらしいレルカはシャワーを浴びに行った。
シャワーから出た時は目がしっかり覚めていて、俺の反対側のイスに座った。
「じゃあ、今回集めた事を伝えるわ。今回はレイン君が知りたがってた事、ヘレナの旦那さんと娘さんの二人の場所よ」
二人の場所は灯台下暗し、つまり、俺がいた牢屋の一つだ。レルカも他の場所から探していた為か見つけるのが遅れたらしい。
落ち込む態度を見せたレルカを気遣うと俺への視線が猛獣のそれに変わったので、釘を指しておく。偽物の態度だという事は最初から分かっていた。だから、行動を起こす前に伝えれば良いだけだ。
ただ、二人を助けるのは俺の都合次第なのは分かるが、実際の決行時期が二週間後だと言うのは何故なんだ?
「レルカさん。何で決行が最低二週間も先なんですか?」
「二週間後にランパードが帰ってくるのよ。そうじゃなければいくらレイン君でも危ないわ」
「僕だけでも大丈夫だと思いますが……何ならレルカさんがランパードさんを迎えに行ったらどうです? 空間魔法が使えるでしょう」
「私も色々あるから出来ないのよ。魔力的にも時間的にもね」
レルカには余裕が無い、か。もしかしたら今後バレる可能性もあるし、仮にバレて敵に回っても問題はないし、言ってみるか。……一日でも早く帰らないと怖いんだよ。帝国に来てからリリィの顔が消えた事は無いからな。普通は一ヶ月って長いのに、今は結構短く感じるんだ。
「じゃあ、ランパードさんを連れて来れるのがもう一人いればどれくらい期間を短く出来ますか?」
「そうねぇ……一週間、ぐらいかしら。まさか、レイン君が……?」
「はい。実は僕も使えるんです、空間魔法」
少し驚くがレルカは笑みを浮かべる。その後俺の提案は了承してもらえて、一週間後にランパードを迎えに行く事になった。ちなみにランパードと一緒にいる兵たちはどうでも良いので放っておいてもいいそうだ。良かったぁ。空間魔法って唯でさえ、魔力使うから余計には使いたくなかったんだよ。
そして、俺が空間魔法を使える事を知ったレルカはどれくらい使えるのか詳しく聞いて来た。俺は『引き寄せ』、『空中移動』、『空間移動』、『転移』、『扉』しか使えないと答えるとレルカは溜息をついた。あれ? もしかしてやっちゃった?
「あの、レルカさん? どうしたんですか?」
「あのねぇ、普通はその年で五つも使えないわよ。私だって『空間移動』と『転移』くらいなのに」
「もしかして……やっちゃいました?」
「……(コクリ)」
……はぁ。自重していないのはこんなステータスを付けた神だと思っていたのに……まさか俺もなんて。ん、ちょっと待てよ。確か特質は……これだ。
特質はスキルや魔法を行動で習得できる。という事は魔法書でも読めばその魔法を使えるようになるという事だ。よし、全ては神のせい。俺は何もしてない。
まぁ、それでも俺がやった事には変わりないのでこれからはしっかりと自重しよう。
「そうだ。一つ気になっていたんですが、レルカさんは帝国を潰した後はどうするんですか?」
「うふふ。ランパードと同じよ。レイン君の下につくわ。……色んな意味で面白くなりそうだしね♪」
うわぁ、凄い面白そうに目が笑ってるよ。絶対ロクでもない事考えてるよ。しかもその将来が見えるから余計に質が悪い。何か違う所にでも行ってくれると嬉しいんだけどなぁ。
「そうそう、例え私を置いて行ってもそっちに行くから。覚悟しておいてね」
「あ、はい」
……逃げるつもりは無いんですね、分かります。分かりたくないけど。
空間魔法や全てが終わった後のレルカの生き方を聞き終わった後、また俺の身の上について根掘り葉掘り聞きに来たが、全てをシャットアウトした。
途中から色仕掛けで落としに来たが、そもそも精神年齢は俺の方が高く、恋愛感情の「れ」の字も持った事のない俺にどうして効くだろうか。いや、効かない(反語)。
一向に話さない俺に諦めたのかレルカは明日からの為に寝ようと提案してくる。寝る事自体は賛成なのでレルカにベットを勧める。一緒に寝ようとレルカは捏ねる。それを俺は無視してソファーに横になる。そして、そのまま意識が落ちた。
……翌日。俺はレルカの抱き枕としてしっかり機能していた。
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