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忌み嫌われた俺は異世界で生きていきます  作者: 弓咲 岬
第2章 少年編 王都騒動
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二十六話 少女たちは頑張ってます

これから基本の話の進みはレインなのですが一、二話ごとに違う視点を入れていきます。

 レインが帝国に行った後、倉庫内では二人の少女と一人のメイドが呆然自失となっていた。その三人を黙って見ているメイドも帝国があろう方向に心配そうな視線を向けていた。

 特にその中でも白金と金色の間の髪と真紅の目を持つミーナはその目に何も映していない様に微動だにしない。フェルナとラミリアはようやく元に戻りつつあるが、ミーナだけは兆しすら見えない。

 既に帝国の兵士がいない事は冒険者の人達が知らせてくれているので残っているのはミーナ、リリィ、フェルナ、ラミリアの四人だ。


「ミーナ様、そろそろお部屋に戻りましょう」

「……」


 リリィやフェルナが何を言っても聞こえていないのだろう。全く動かない。仕方ないとリリィは溜息をつき、フェルナと協力してミーナを抱え、倉庫を出る。


 ミーナとレインの部屋に着いたリリィ達はまず、ミーナをベットに横たわらせる。ミーナの脳は既に許容限界を超えたのか眠っている。

 その様子を見てリリィは分かっていた事ではあるが、やるせないのか再び帝国に視線を向ける。今度は非難の視線で。

 しかし、それも短い時間で終え、リリィはフェルナとラミリアに指示を出す。


「ラミリア様、フェルナ。いつまでも落ち込んでいてはいけません。早く立ち直りなさい。レイン様は戻って来るのです。その時までそのような顔を晒しますか?」

「……はい」

「……分かりました」


 二人は行動を起こそうとするのだが、ショックが大きいのか思う様に体が動かない。リリィもそれは分かっているのか意志を確認した後は二人も寝かせた。

 リリィ以外が眠った後、リリィは自身の両手で頬を叩き、気合を入れ直す。軽く体を伸ばし、通常の仕事に戻って行った。

 リリィが部屋を出て行って少し。ミーナの目からは涙がほろりと流れ落ちる。


 その翌日。三人の中で一番最初に起きたのは何とミーナだった。ベットから降りると動きやすい服に着替え、外に出る。その方法はベランダから風魔法を利用して降りる、レインが良く使う方法である。

 実はミーナもレインのそれを見て使えるようになっていた。流石は四属性を持つ天才だ。簡単そうに見えてあれ、実は結構難易度が高い。魔力を上手く使えないと落ちてしまうからだ。風魔法で飛行できる者が少ないのもそれが原因だったりする。


 簡単にストレッチをしたミーナは空に両手を掲げ、四属性の初級魔法を次々と発射していく。四属性の球や槍、弾が何十と絶え間なく注がれる。その数が百に届きそうという所で一旦、止まった。ミーナを見ると少し息を荒げている。

 ミーナはレインには遠く及ばないステータスではあるが、魔力関連のスキルはかなりある。それによって直ぐに回復したのを確認すると四属性の剣を作り出し、バラバラに操作する。

 この練習はミーナがレインの朝練に付き合い出した時から教えてもらった魔力操作の訓練だ。最初の頃は表すだけでも大変だったのに今は少し程度なら操れるようになっている。


「はぁ……はぁ……。火、水、土、風の四属性よ、剣の姿と成りて顕現しなさい―『四属剣(エレメンタルソード)』!」


 ミーナは再び現れた四色の剣を操る。それは攻撃だったり、防御だったりと本当に様々だ。偶に剣同士でぶつけて耐久を落とさないようにする。この練習はミーナの魔力が尽きるまで続ける。前までは八割ほどが無くなった所でレインが止めていた。しかし、ミーナは全て使うまで止めなかった。

 操っていた四本の剣が消え、ミーナはその場に倒れる。息は荒く、傍から見るだけでも辛そうなのは分かる。だが、ミーナの瞳はレインに認めさせてやると言う気概が見て取れる。それと褒めて欲しいという事も。……それまでに五歳の女の子に影響を与えるレインはどれ程凄いか。

 なまじ知っているだけに息を呑むし、実際にやれと言われて出来る者などこの世にどれほどいよう。


 やがて魔力が落ち着いた所でミーナは屋敷に戻る。汗を流し、朝食を食べた後はリリィに勉強を見てもらいに行った。さて、昨日の事は彼女の一体何を変えたと言うのか。

 一般教養を終えたら貴族としての事も習う。ちなみにレインは全て終えている。だからこそ、迷宮暴走直前に迷宮や魔物についての本を読んでいたのだ。レインの場合、前世の記憶持ちと言うチートが加わるが。


 フェルナやラミリアも負けてはいない。フェルナはメイドとしての当然の仕事の他に空いた時間で自分が可能な範囲のスキル・魔法の練習をする。彼女は獣人の特性を活かしてスピード重視だ。

 ラミリアはまだ魔力操作が使えないので必死に頑張っている。勉強の方は殆どを済ませてしまっている。城でしていた事が功を奏した。


 三人の目には同様に認めて欲しい、褒めて欲しいと言う欲求が剥き出しになっている。一晩寝た事で彼女達に何があったのだろうか。

 しかし、少々オーバーワークなのでリリィが止めさせた。そのリリィも一見冷静そうに見えるがかなりの頻度で帝国がある北の方角を見るのでレインの事が心配なんだと分かる。


 そんな日が数日続き、ある日の夜。ミーナの部屋のベットの上で四人は円を描く様に座っている。これから話すのはレインが帰って来た時の事だ。正確にはお願いの内容だったりとレインがいれば間違いなく逃げてでいたであろう。

 この話し合いは三人が頑張り始めた日から毎日している。つまり、最初からと言う事だ。


「では、始めましょう。昨日の続きからですね」


 これまで決まった事と言えば婚約する事(確定)、一日二人きりで過ごせる権利、ぐらいで今日も今日とて悩んでいる。

 この時は三人とも年相応に戻り、雰囲気がパジャマパーティみたいになる。内容は異性であれば歓喜と恐怖の色んな意味で震えそうになるくらいだ……。果たしてこれは尊敬なのか、同情なのか、判断に悩む所である。


 時折、リリィも仲間に加わりつつ、三者三様の物が作り上がっていく。これで恐ろしいのは本人以外は誰も知らないと言う所だ。言い方を変えれば疑似パンドラの箱とも呼べるかもしれない。疑似なのはレインの行動一つで変わるところだな。はてさて、箱の中身は厄災か希望か……レインにとってはどっちだろうか?





【ミーナ・フォン・フェスフォルト 女 五歳

 レベル19 人族

 HP・1050/1050

 MP・10790/10790

 力・430

 体力・770

 防御・1870

 精神・1140

 敏捷・240

 魔攻・7900

 魔防・7900

 <特殊技能>

 全魔法属性耐性、物理防御上昇、魔力量上昇

 <スキル>

 魔力操作、MP回復(極)、無詠唱、魔力消費減少、魔力効率上昇、緻密操作

 <魔法>

 生活魔法、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法、精神魔法、炎魔法、四属性魔法】


ステータスが中々凄い事になって来ました。あ、他の二人は現在作ってます。早く出せたらと思います。


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