二十五話 プリムリアの現状
ま、毎日投稿が結構つらい……遅れたのはリアルでちょっと忙しかったので。すいません。
街を出た俺はレルカと一緒に歩いている。他の帝国の兵士は外で待っていると言っていたが、本当の所は先に行かせた様だ。現在はレルカから俺を脅してまで帝国に連れて行く理由を聞いていた。
「ねぇ、レルカさん。何で脅してまで僕を連れて行こうとするんですか?」
「簡単よ。帝国を潰す事を手伝って欲しいの。あんな国、早く無くなればいいのよ」
詳しい事までは教えてくれなかった。だが、一つ分かる事はそれ程までに帝国を憎んでいる事って言う事かな。別に知りたくはないけどさ。
交換条件として俺が考えている事を伝えた。レルカは二つ返事で了承してくれた。と言うか元々それと交換条件で手伝ってもらおうと思っていたそうだ。レルカ曰く、ランパードはほぼ確実に仲間になってくれるらしいので思った以上にニナやヘレナさんの家族を取り戻せそうだ。
それで互いの目的を知った所でレルカは空間魔法の『扉』で移動した。……レルカは空間魔法に適性があった。改めてステータスを視てみると確かに魔法の欄に空間魔法がある。しかし、それ以外の魔法は使えないみたいだ。そう言えばリリィが空間魔法と時間魔法は強力な分、それしか魔法の適性が無いって言ってたな。
世間って意外と狭い、という事を身を以って知れた。まぁ、傍には四属性持ちみたいな天才もいるけどな。
着いた帝国に来てまず感じた事は前世で言う、我儘な雰囲気だった。何だろう、体格的には大人であるのに精神が子供の様な、それも我儘な部分だけ残ったみたいな不思議で吐き気がする感じだ。前世でも結構いたけど、ここまで濃密なのは初めてだ。
レルカに聞いたらその通りの答えを貰った。皇帝含めて幹部以上は俺の感じた通りの言動を日常的にしているそうだ。しかもぶくぶくと太っていて、女性なら誰でも生理的に無理だとの事。
しかも処女権と言うものが本当に存在し、果てには優先権がある。優先権の意味が分からないので意味を聞いたもの、国内の女性は四元帥以上が最初に相手できるという権利らしい。それに年齢が関係ないので、子供でも呼ばれれば行かなければならない。……ふぅ。ミーナ達も連れて行ったりしたら速攻でこの国を誰かれ問わず潰す所だったよ。
帝都を城に向かって進む間、人達の元気は殆ど無かった。いや、無気力と言った方が正しいか。表情からは絶望と言うよりも諦め、諦観が漂っている。
民の様子を見て余計に感覚が冷めていくのが分かる。最早、帝国プリムリアに銅貨一枚の価値がないのが分かった。そんな状態で俺は帝城に着く。そして、俺を待っていたのは罵詈雑言と暴力の嵐だった。それと地下牢への招待状と無表情を貫くのが至難の業と思える所業だった。
「おい、レルカ! 何故こいつだけだ!? 王族の女共とフェスフォルトの娘はどうした!? 貴様はそれが役目だろう!」
「申し訳ありません。ですがレインの強さが予想以上で彼を連れて来るのが精一杯でした」
「なら、後日連れて来い。それと今回の失態に対する仕置きだ。夜に部屋まで来い」
「……承知いたしました」
「小僧は牢にでも突っ込んでおけ。必要な時に出す。それ以外は外に一切出すなよ」
お仕置きと言う名の欲望丸出しの命令と目的丸見えの言葉に思わず『獄氷世界』を出しそうになったのは言うまでもない。
抵抗するのも馬鹿らしいのでされるがままに連れられ、入れられた牢屋は何かもう……テンプレと言える物だった。
寝る所は藁を敷いただけの場所らしく、背中が痛くなりそうだ。トイレは壺すらなく、漏らせと言うのだろうか。そして、スキルや魔法が上手く使えないのは牢屋の壁中にそれらを封じ込める魔法陣が書かれてあるからだ。
まぁ、俺の場合、入って暫くしたら耐性系のスキルを覚えたので無駄だし、封じられた状態でも普通に使えたので問題は無い。消費魔力は通常の数倍だけど。そこはほら、人外だから。
俺が牢屋に入ってから一日ぐらい経ってからレルカがやって来た。隣にはランパードがいて、俺が牢屋に入っている事を知り、憤慨した態度を取る。
「何故あんたが牢屋に入ってる!? ……もうあいつには呆れ果てた。レルカ、てめえの提案に乗った。俺はあんたの下以外につく気はねぇからな」
「ふぅ、良かったわ。さて、レイン君。ランパードも賛同した事だし、始めましょうか?」
「分かりました。それにしても昨夜の事は大丈夫なんですか?」
「ええ。あんなクズに身体を許す程愚かじゃないもの。対策なんて幾らでもしてるわ。それじゃあ、まずはこの牢屋から出ましょう。その後はランパードの部屋で待っていてちょうだい」
レルカは牢屋の扉を開ける。本当は自力で開けれそうだけども面倒くさい。牢屋から出た俺は二人の後を続いていく。定番の地下に在る牢屋から一階へ、そして、二階。その一部屋で二人は止まる。どうやらここがランパードの部屋らしい。
思ったよりかは綺麗だ。だが、所々には片付けの跡が見え、急いで掃除をしたのが分かる。まぁ、それでも暮らせなくはないので気にはしない。
部屋は国王様の城の部屋よりも豪華で金を掛けているのが分かった。後で聞いた話だが、全皇帝が亡くなって現皇帝が元帥以上をこうしたらしい。白金貨が何枚も消え、皇帝の部屋は白銀貨が掛かったらしい。……何だろう、典型的過ぎてどこから言えばいいのやら。もっと酷いかもしれない。
家具とかは大き目のソファが二つ、テーブルが一つ、シングルベットがあるだけでシンプルだ。現在は夜で外は真っ暗だ。
……牢屋は一切光が入ってこなかったんだ。『灯り』があれば問題は無かったので時間はそんなに気にしていなかった。
それと不眠のスキルを使っても半日が限界みたいでそれからは疲労が溜まっている。『灯り』も消費量が少なくてもずっと使い続ければ結構疲労する。消費量は数倍だし。お陰で眠い。
「……そろそろ寝ていいかな? 結構疲労が溜まってるんだ」
「ならベットを使ってくれ。俺はソファで眠るから」
「そうよ。疲れてるのなら尚更ね」
「良いよ。そこまで世話になれない。触った感じ、ソファも良いしね」
二人が何か言う前にさっとソファに寝転び、収納箱から毛布を取り出す。金を掛けている事もあって寝心地は良い。若干、手元が寂しいが……考えるのは止めよう。
自分でも思った以上に疲れていたのか直ぐに意識が遠くなる。一応、誰か来た時に対応できるようにしておいた。……何事も無いと良いが。
***
体は今までの生活の習慣を覚えている様でまだ若干疲れはあるんだが、いつも通りの朝に目が覚める。それで俺はベットに寝ていた。……レルカから抱き締められる様な感じで。
何かデジャヴ……ミーナの時以来か。
顔が胸に押し付けられて息がしづらい。動いてそれから解放された次に見たのは当然の様にレルカの寝顔。起きている時とは違って何とも純粋な顔をしている。果たしてこれがレルカの素顔なのか、これもレルカの素顔なのか……。
俺はレルカの腕の中から抜け出して周りを見渡す。ランパードはソファで寝ていて他は誰もいない。窓の近くまで来て陽の光を浴びながら体を伸ばす。ずっとやって来ただけあって意識がすっきりしてくる。
可能な限りの朝の訓練を終えてゆっくりしていると二人共起き出した。
「ん……。あら、レイン君は早起きなのね」
「まぁ、そうですね。……僕はこれからどうしましょうか?」
「暫く待ってて。情報は私が持って来るから」
「大丈夫なんですか?」
「ふふ。心配いらないわ。私は四元帥よ?」
そう言ってレルカは自身のステータスを見せて来る。
【レルカ・リーン 女 17歳
レベル86 人族
HP・6420/6420
MP・12669/12669
力・580
体力・3055
防御・1022
精神・4890
敏捷・2200
魔攻・8740
魔防・8740
<特殊技能>
魔力強化
<スキル>
魔力操作、体術、空間認識、気配遮断、気配感知、MP回復、HP回復
<魔法>
生活魔法、空間魔法】
確かに気配系のスキルがあれば問題は無いだろう。それと魔力強化は日に一度、自身のMPと魔攻、魔防の数値を二倍にするそうだ。強力だな。
だが、最も驚きなのは年齢だ。17歳とは思えない。まぁ、決して顔には出さないが。
レルカは部屋に備え付けられている浴室でシャワーを浴び、情報を集めに行った。既に帝国を潰すのは実力行使が決定していて、必要なのは俺の方の情報だ。それとシャワーは俺も二人から許可を貰っている。
俺もシャワーを借りて、部屋でゆっくりしているとランパードが声を掛けて来た。
「なぁ、レイン。もう一回戦ってくれねぇか? 今回は素手だし、殺しと魔法は無しで良いからさ」
「別にいいですけど……」
「なら早速しよう!」
この部屋は意外と広いので武器それも槍なんかはやりづらいが、素手の戦闘は結構しやすい。俺も武器を持っていなかったのでする場合は丁度いい。本当はあまりしたく無いんだけど。
互いの距離は十歩くらい。合図は無い。動き出した時が合図だと思う。
時間にして五分かな? それくらい経った時にランパードが詰め寄る。左右のストーレート、蹴りを放って来る。
俺は敢えてぎりぎりで避ける。あまり大きく避けると無駄だし、こっちの方が疲れにくい。この技術はアル達との訓練で得た。
それからもランパードの拳打や蹴りを避ける。次第に汗が滲んでくるランパードに対して俺は一切の汗をかかない。それもそうだ。ランパードは唯でさえ、モーションが大きく、体力の消費が激しいのに対し、俺は最小限の動きだけなので体力は殆ど消費していない。他にもステータスの差もあると思うけど。後、体格的な問題もあるな。
勿論オレもただ避けるだけじゃなく、攻撃を仕掛けてみたり、目を瞑って気配だけで避けたりとアル達とやっていた様な事をする。
そして、その戦闘が始まってから三十分経った頃にランパードの限界が来た。足をもつれさせ、倒れ込んだ所に首に手刀を当てる。
「終わりですよ」
「はははっ。こりゃあ、面白くなりそうだ」
どうやらこれはランパードにとっての最終試験的な物だったらしい。レルカが言った通り、自分よりも強い相手じゃないと下につかないのはある意味徹底している。
じゃあ、何故今まで帝国にいたのかが気になるのだが……あくまで前皇帝に仕えていただけで現皇帝には何も思う所が無かったそうだ。寧ろ、苛々していた。
それからはランパードから帝城の見取り、情勢なんかを教えてもらう。それから脱出経路を幾つか探しておく。もしもの時だ。情勢はリリィ達から聞いた通り、帝国の上層部が裕福な暮らしをし、平民は重い重税や処女権、優先権で苦しんでいる。また、奴隷も結構な数がいる事が分かり、かなりの頻度で使い潰している。男も女も。
……いやぁ、本当に連れて来なくて良かった。つい最近、考えた魔法を即座に使いそうになった。……後で話し合おう。それで使えるかどうか決めようか。
レルカが帰ってくるまでランパードから色々な事を教えてもらう。
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