二十二話 その頃……(3人視点)
今日から十二月ですね。寒くなってきました。
それにしても作者はどうも大きな戦闘の前には前置きを置きたがるようです。次回から戦闘に入るので楽しみしみにして下さい!
アルトハイム王国に帝国プリムリアの開戦宣言が届いた頃、帝国は少し浮ついていた。何故なら今回の戦争でアルトハイム王国全てを得ることが出来るからだ。
アルトハイム王国は大陸の中でも戦力は高くない。寧ろ低い。それはこれまで武力よりも平和的に話し合いで解決しようとしたからに他ならない。まぁ、その為に戦力はしっかりしておけよとも言えるが……。先代の頃は中堅くらいの戦力があり、帝国とも多少は渡り合えるくらいはあったのだが……現在は全くだ。
それを見込んだ帝国は戦力を溜め、攻め入ろうとしていた。その時に王国にとって朗報となったのが迷宮の発見である。王国の資源の豊かさは近辺の国も欲しがり、迷宮もとなるとそれは激しさを増す。近くの国は軒並み権利を狙おうとしていた為、帝国は先にそちらを潰す必要があった。王国にとっては幸運、帝国にとっては苦渋を舐めさせられただろう。
それが今回でまとめて手に入るのだ。一石二鳥とも言えるこの展開に気分は高まらない筈はないだろう。それに加え、下層クラス三体を単独撃破できる人材もいると来た。上手く行けばそれも手に入るとなれば浮かれるのは仕方ないのかもしれない。
―――その頃の帝都、帝城内では。
「くくくっ。ロイツ、どう思う? これからアルトハイム王国は我らの物になる気分は?」
「最高ですね、皇帝陛下。それと陛下は他にも何かお考えがあるのでしょう?」
「ああ。噂では王国の王女は全員、『絶世』がつく程良いらしい。ならばそれを自分の物にするのはさぞかし気持ちが良いだろう。あの国は全体的にも優れている。お前達も良い思いが出来るぞ」
……浮ついていると言っても気持ち、ではなく下半身の方の様だ。そこかしこで下品な笑い声が木霊する。
それから定期的な話し合いが始まり、最後の確認を進める。兵の数、食料、武器。皇帝、四元帥以外の元帥、幹部クラスが全員集まっている。漏れなく全員男で次第に話はそちらの方向に向かって行くのは当然と言えた。
よく見ると全員ふくよかな体型でとても上の人間として君臨して良いような人間ではない。しかし、なってしまった物は変えられないのか話は進んでいく。
「ララハルド。本隊の調子はどうだ? どれくらいでフェスフォルトに着く?」
「あと数日で到着すると思われます。アルグリードが街を出て行った頃を計算しているので簡単に落とせるでしょう」
「うむ。ルーデラウスの方も同じ数の兵を仕向けておるし……万全だ。あとは高みの見物と行こうではないか、諸君」
「「「「はっ!」」」」
やはり帝国はルーデラウスではなく、フェスフォルトに攻め込むつもりの様だ。それもレインが来る可能性を見越して兵をそれぞれ十万人も出している。ルーデラウスに攻め込むと言っているのに違う所を攻め、レインへの対策もしてくるとは清々しいまでにクズである。しかも四元帥のランパードはルーデラウスの方に入れ、レインを攪乱させようと企んでいるらしい。救いようがない。
*****
時間は変わって王国からフェスフォルトへ馬車で戻っているのはミーナ一行。そこでは御者をフェルナが担当し、リリィはミーナとラミリアの面倒を見ている。その中でも特にミーナの機嫌は悪い。
理由は簡単。レインの事である。前回であれほどの思いをしたのにまたするのか、と怒りを露にし、それ故に機嫌が悪いのだ。リリィが何をしても一向に靡かず、フェルナとラミリアが説得に掛かるも聞く耳を持たないので途方に暮れていた。
その中で何かを閃いたリリィがミーナに耳打ちをする。今までは聞く耳を持たなかったミーナが初めて反応を示す。
ちなみにその内容は『レイン様が帰って来たら……即婚約発表。それから一ヶ月はずっと傍にいる。離れて良いのはトイレの時のみ。それと十回何でもお願いを言える』だったりする。
是非、レインにご愁傷様と言いたい。
改めて話を聞いたラミリアとフェルナも反応を示す。特にフェルナは犬耳と犬尻尾をピンと伸ばす程に顕著だ。
三人の反応を見たリリィは満足した様に頷き、馬車を止めさせ、一カ所に集まる。四人が何やら話し合い、反応を示す様は……客観的に言って混沌としていた。参考までにその話の一部をお教えしたい。
「リリィ。具体的にどうするの?」
「まずはレイン様が帰ってこられた時に問答無用で三人同時に抱き着いて下さい」
「でもそれではレイン様は驚かれないのでは? 私を相手にして下さった時も慣れているようでしたし」
「ご心配なく。その後、三人でお部屋まで連れて行き、ベットに飛び込んだ後、もみくちゃにしてしまって下さい。そして、判断が鈍って来た所で先ほどの事を確約させるのです。何なら私も手伝いましょう」
「でも、お兄ちゃん冷静だよ? それで出来るとは思えないの……」
「レイン様も今回の件は申し訳なく思っているはず。ならば行けると思います。ミーナ様は残念ながら第二夫人となりますが実質的に第一夫人です。フェルナもアルグリード様と相談して第三夫人とさせますので」
「そんな……」
「ふふふ。女を怒らせると怖いのだという事を骨の髄まで教えて差し上げましょう。ラミリア様もフェルナもかなり溜まっているのでしょう?」
「ええ、確かに」
「……もう少しは私達の事をレイン様は考えて欲しいとは思っていますけど」
「お兄ちゃんにはしっかり思い知ってもらわなきゃ!!」
「ミーナ様、その意気です。お二人も頑張って下さいね」
……以上だ。何とも女と言う生物が恐ろしい事が分かる。
それは馬車に戻ってからも続き、続いた。今度はお願いの内容について話し合っているようだ。
中からは「……初めては私」とか「……ずっと一緒にいる事を『永遠』に変更させる」とか色々物騒な声が聞こえて来る。……レインはその後、二度とこんな事はしない様にしようと思うのは明確だ。
そんな状態で馬車は街へと進んでいく。影には何者のかを纏わせながら……
※この作品はフィクションです。キャラの考えは作者の妄想なので気にしないで下さい。
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