表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み嫌われた俺は異世界で生きていきます  作者: 弓咲 岬
第1章 幼少編 迷宮暴走
2/32

二話 異世界に放り出された俺

 ……確かに転生だから赤ちゃんなのは分かるよ、いきなり高校生の状態だと違い意味で違和感があるからな。でもさ、これは無いんじゃないかな。雪の振る夜に外に放置は!

 創造神様よ……次に会ったらタダじゃ置かない。その為にも取り敢えず助けてもらわないとな。幸い、目の前には家の玄関があるし。豪華だけれども。


「おぎゃー! おぎゃー!」


 取り敢えず叫んでみた。だが、そう簡単に人が来る訳もない。と言うか何か騒がしいけど気付いて貰えるのだろうか……


「あうあうあー!」

「あう、あう!」

「うぅー!」


 赤ちゃんなのでこれ位しか言う事が無いが、通じたのか中から物音が聞こえる。誰かが歩いて来たみたいだ。

 扉を開けて出て来たのはメイド服姿の少女。年は十五。六くらい。俺を見て慌てて、それでも直ぐに中に入れてくれた。家は屋敷と言っても良いぐらいに広く、まるで中世ヨーロッパみたいな感じだ。

 ……待てよ。創造神はファンタジー世界って言ってたしまさかこの屋敷……貴族じゃないだろうな。もしそうなら、どうか良い貴族だと願う。テンプレみたいな悪徳貴族は御免だ。


「――……―、―!? ――!? ――……―――、――!」


 少女は茶髪のセミロングで鳶色の目と相まって可愛らしい美少女だ。そして、俺を抱き上げて階段を上って一つの部屋に入る。当然、違う世界なので日本語でも英語でもない。これは早く覚える必要がありそうだ。まだ、この世界の事何にも知らないし。神も教えてくれなかったからな。

 部屋はベットが一つに簡素なテーブルとイスが一つ。後は暖炉があって、暖かい。ベットには一人の女性と俺と同じような赤ちゃんがいた。少女は少し慌てた表情で何か言い、女性の方は優しそうな雰囲気で対応している。しかし、言ってる事が分からないと不便だな。


「――! ……――。――」

「―。……――、―」

「――」


 話が終わると先ほどの赤ちゃんと一緒に女性の傍らに置かれ、少女は部屋を出て行った。女性に目を向けるとやはり優しそうな雰囲気で見守っている。

 もう一人の赤ちゃんは俺の手をギュッと掴んでいて、安心した様に眠っている。女性はそれを見て微笑み、優しく撫でている。

 俺も叫び疲れたのか身体が重くなっていくのが分かる。瞼も重くなっていく。これは無理だと悟ると女性に見守られながら眠りに入った。


 翌日。目が覚めると昨日の女性が俺と赤ちゃんを見ていた。俺と目が合うと優しそうな表情で見つめて来る。何か反応をと思った俺は赤ちゃんに握られている手と逆の手を伸ばして反応すると驚きながらも嬉しそうな顔をしてその手を握り返してくる。その顔には安心したと分かりやすく書かれていた。

 やがて赤ちゃんの方も目覚めた。


 女性も部屋を出て行き俺と赤ちゃん以外いなくなった部屋で創造神が言っていた事を思い出す。

 確かここはファンタジー世界って言ってたし魔法とかあるのか。なら魔力もあるはずだしちょっとやってみるか。

 俺は気分を落ち着かせて自分の内側に意識を集中みてみる。すると、お腹の下辺りに熱く渦を巻くようなモノが感じられる。……これが魔力だろう。よしこれを全身に循環させてみようか。……意外と難しいな。それに魔力を結構使うみたいだし。

 ……きつくなって来たし、そろそろ止めるか。


 俺は何となく全身が疲れ、頭がフワフワしてきた所で止める。部屋の扉が開き、そこから昨日の少女がベビーベットを持って来た。

 俺は赤ちゃんと一緒にそっちに移される。どうやら今日からこっちで寝るようだ。それから別の部屋に移動する。そこはさっきの部屋と似ているがあるのは暖炉くらいな物で他には特にない。俺的には魔力を扱う訓練がやりやすいから良いけどさ。結構ハードだね。


 それから色々な世話をして貰い、直ぐに三ヶ月が過ぎた。


「はーい。ミーナ様、レイン様。ご飯ですよー!」


 赤ちゃんの成長速度は速いらしいがもう言語が分かるようになって来た。お陰で色々な話を聞けてこの屋敷の現状を少しは知ることが出来た。

 まず目の前にいる少女。彼女は俺を拾ってくれた人でいつも世話をしてくれている。名前はリリィと言うらしい。それにやはりメイド、つまり使用人だ。茶髪を一つにまとめ元気に楽しそうに俺たちの世話をしてくれるので嬉しいのだが、同時に申し訳なくも思う。


 それと俺がリリィの次に出会った女性はリーフェスと言い、奥様だそうだ。腰まである白金の髪に翡翠(ひすい)色の目を持つ美女で赤ちゃんの母親だ。よく様子を見に来て俺たちを見ては嬉しそうに微笑んでいる。

 また、赤ちゃんはミーナと言う。女の子でリーフェスさんみたいな白金よりも金色に近い髪をしている。それと真紅の目で将来は魅力的になるだろう。

 俺はレインと呼ばれているので多分それが俺の名だ。二人が付けてくれたのか元々あったのか知らないけれど早く動けるようになりたいな。恩返しもしたし。日本人らしく黒髪で黒目だ。


 他にもリーフェスさんの旦那、ミーナの父親はアルグリードと言い、公爵らしい。リーフェスさんも元伯爵でどちらも高そうだ。

 良く部屋に来るリリィが教えてくれたのだが、この世界の貴族は下から騎士爵、男爵、子爵、伯爵、辺境伯、侯爵、公爵となっていて、国王の親族に大公がある。貴族には下級、中級、上級と分かれていて男爵までが下級、伯爵までが中級、辺境伯以上が上級となる。級が上がる毎に家の数は少なくなる。現在貴族の最上位である公爵は全部で五家だそうだ。アルグリードさんの侯爵は十家、辺境伯も十二家らしい。一代限りの栄誉爵位もあるみたいだ。

 かなり物知りなリリィのお陰でそれを知れたのは大きい。貴族なら無礼な態度を取っただけで打ち首だ、とか言いそうだし。

 それとリーフェスさんは三番目の奥さんで後二人いるそうだが、今は王都にいるそうだ。これらを踏まえるとこの世界は一夫多妻制なのだろう。つくづく異世界使用な事で。あ、家名はフェスフォルトだ。この辺りが知らない人はいないそうだ。


 それから三ヶ月、俺は世話をしてくれる人たちの目を盗んで魔力の訓練を続けた。訓練と言っても魔力を全身に循環させるだけの簡単な事だ。火や水を作ったり風を起こすといった“これぞ魔法”みたいなのはいまいち容量が掴めず、出来る事は無かった。全く出来ない訳じゃないが、ほんの少しの水だったり、微風程度なのでまだまだ訓練は必要なようだ。火については種火すら出来ていない。適正とかないんだろうか。


 この間にアルグリードさんと出会った。金髪紅眼のイケメンで何ともモテそうな雰囲気だった。ミーナの瞳って父親譲りなんだな。

 彼は俺の事を知っている様でミーナと同様に接してくれた。

 後、もう一人リリィと同じメイドがいた。リリィよりも一回り年下で何と! 犬耳の獣人だった。空色の髪と一緒の耳や尻尾はふさふさでいずれしっかり堪能させてもらおう。


 この四人はミーナの世話で大変なはずだが、俺の世話もしてくれている。偏見でしかないが、貴族の悪感情もアルグリードさん達で少し改善された。勿論、そういう貴族もいるだろうが。


 結局、俺は暖かい人たちに育てられているので前世の地球の頃と比べれば雲泥の差だ。あの時は生まれた時も結構余所余所しかったからなぁ。何で知っているかって? 死んだ時にあの神たちから聞いたんだよ。いやほんと、良く生きてこれたね。


 他にもリリィに頼んで本を読ませてもらった。言語は早く覚えないと大変なので早く覚える様に頑張らないとな。

 首もすわったのでベビーベットから降りてハイハイをしたりと体を動かす事も日課にした。成人すればこの屋敷を出て行く可能性が高いので外でもしっかり生きなければならない。生きるには働かないといけないし、その為には体力が必要だ。

 この屋敷を見る限り木造建てなので力仕事は何かあるだろう。こんな世界ならギルドとかありそうだし、そこなら生活もできるはずだ。なら当分の目的はギルドに所属する事か。この世界は魔物もいるみたいだから、戦う事も視野にいれないと。……前世の武術が通じるといいけど。

 世話をしてくれる人たちにはいずれ恩返しをしたい。だから、これからも努力は惜しまない。

 ミーナも少しずつ成長していった。俺が傍に居ないと直ぐにぐずるので懐かれているんだと思う。何故懐かれているのかは分からない。




 それからリリィに色々な知識を教えて貰い、魔力の訓練や運動をしていく内にあっと言う間に半年経った。


 この世界に生まれ変わって半年。この世界は一ヶ月が三十日ある事が分かった。そして、一年は十三ヶ月だ。地球よりも若干日数は多いが体の方は大丈夫だろうか。それと一週間の概念も存在し、六日で一週間となる。五日間が平日で最後が休日となる。

全ての知識はリリィからだ。常識とな面も多いが、この世界の事を知れるのは嬉しい。


 そんなリリィに成長の証としてちょっとしたサプライズ。


「おはようございます、ミーナ様、レイン様」

「りりー」

「!? え、今何と?」

「りりー」

「!!?? レイン様が……レイン様が……これは奥様に伝えなければ……!」


 ようやく単語程度だが話せるようになったのでやってみた。地球の知識では一歳前後らしいのでちょっと早いかもしれない。……地球とこの世界は色々と違うので何とも言えないが。


 俺はベビーベットから降りる。外から少し大きめの足音が二つ聞こえてくる。リリィとリーフェスさんだろう。そんな二人にもう一つのサプライズ。


「奥様! レイン様が喋ったんです。本当ですよ!?」

「そんな訳無いわ。普通は一歳ぐらいからなのよ。もし、そうならレインは天才だわ」

「りーふぇー。りりー」

「「!?」」


 扉を開け部屋に入って来た二人に向かって歩く。通常、赤ちゃんは一歳くらいから歩き始める。早い子は八ヶ月程度で歩き始めるそうだ(地球の知識)。こちらとしては急ピッチなので了承して欲しい。


「りーふぇー。りりー」

「あ、あ、歩いてる……」

「信じられない……レインは天才よっ」


 天才ではないと思うが……。前世の記憶もあるんだし。しかし、自分の子でない俺を歩いただけで本物の親の様に喜んでくれるのは素直に嬉しい。俺を肯定してくれたのは今まで陽菜唯一人だったからなぁ。

 その日は二人共ずっとテンションが高かった。話を聞いたアルグリードさんも泣いて喜んでくれた。ここまで来ると流石に大げさな気もするけど。


「はーい。レイン様。今日は魔法についてお話しますね」


 その次の日の夜。ミーナを寝かしつけて俺の所に来たリリィは手に分厚い本を持ってやって来た。表紙には『魔法について・初級編』と書かれている。魔法についてようやく知れるか。魔法は興味があるし。地球の知識なら一応あるけど実際どうなんだろう。

 リリィの膝の上に乗せて貰って本を見る。まだまだ部分的にしか読めない。早く読める様に頑張るか。


「レイン様ならご理解できるかもしれません。ええと、『魔法とは己が使う魔力を具現化した物である。己の中にあるエネルギーを使って様々な現象を起こす力が魔法である』ですって。流石に難しいですよね。これはですね、レイン様自身の中にある魔力と言うもので火を起こしたり、水を作ったりするんですよ」


 それからリリィが本に書いてある内容を噛み砕きながら説明してくれた。とても分かりやすく理解しやすかった。リリィは教師とか似合ってるかもしれない。

 まとめると魔法は自身の体内に存在する魔力を消費して現象を起こすらしい。その魔力は精神力とも言われ、これを大きく消費すると気分が悪くなったり、気絶する。最悪死んだりする事もあるそうだ。

 魔力には属性があって基本は火・水・土・風・光の五種類。それに当てはまらない闇・精神・召喚・空間・時間の五つがある。前者は基本五属性、後者は特殊五属性と呼ばれている。属性に適性が無いとその属性の魔法は使えないらしい。という事は俺は火魔法は使えないのか。後、普通は基本属性が一つか二つで、三つは百万人に一人。四つは一千万人に一人。全属性を持つ者は未だ現れた事がないらしい。特殊五属性は最低でも百万人に一人という稀有な属性で、持っている者は優遇される。


 その所で今日は終わりとリリィは言って、本を閉じる。早くその手の知識を得たいのだが如何せん文字も読めないし、どちらにせよダメなようだ。明日とお預けを食らってしまった。

 ……結構、面白かったのに。





ブックマーク、レビュー等してもらえると作者としても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ