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忌み嫌われた俺は異世界で生きていきます  作者: 弓咲 岬
第1章 幼少編 迷宮暴走
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十一話 迷宮の暴走Ⅲ

 思考の海から戻るといつの間にか近接の冒険者が戦場に出ていて魔物達と戦っている。それはゴブリンだったり、コボルドだったりと様々だ。フェスフォルトの街の冒険者は実力者揃いの様で、魔物ランクBのオークやオーガとも互角に渡り合っている。

 ちなみに魔物ランクとは魔物の強さを表すもので、最高がSランク、最低がGランクだ。Gランクはゴブリンとかコボルドとかで、初心者なら一人で倒せる。Bランクは中級冒険者が二パーティ以上で倒せる強さだ。にもかかわらず、一パーティで戦っている。内訳も盾、攻撃、遊撃とバランスが良い。それに加え、所々にいる冒険者達は仲間に回復やバフ何かを掛けている。数もあっと言う間に減り、五百を切ったみたいだ。


 掃討戦となってする事も無くなったので魔力を回復させながらボーっとしていると、いきなりアルから連絡が来た。


『主様! 魔物が追加されました! 数は推定一万です。それと非常に強力な魔物が三体います!』

『何? 取り敢えず、強力な魔物の特徴を教えてくれ』

『はい! 一体目は緑色の(うろこ)で覆われた竜と思われます。二体目は黒い体毛のおそらく虎です。最後は銀色のたてがみの獅子(しし)です!』

『分かった。アル達は無理をしない範囲で追加の魔物を倒してくれ。ただし、絶対にその三体には近づくなよ』

『分かりました!』


 竜に虎に獅子か。全員迷宮の魔物だろうが、知らないな。今更無い物ねだりをしても仕方ないし、ベルジに聞いてみよう。ライビスに言った事があると言ってたし、知ってるかもな。


「ベルジさん。良くない報告です。私の狼達が追加の魔物を確認しました。数はおよそ一万です」

「何!? ……追加があるのか。残りは掃討戦だと思っていたんだけどな。で、他に詳しい事はあるか?」

「三体の魔物を中心としています。その三体の特徴は緑の鱗を持つ竜、黒い体毛の虎、銀のたてがみを持つ獅子です」

「本当か!? だが、あんたが言うなら本当なんだろう。そいつらは恐らく迷宮竜(アビスドラゴン)、黒虎、銀獅子だ。三体ともライビスにいた時に聞いた事がある。そいつ等は迷宮の下層クラスの魔物で強さはSを超えるらしい。にしても三体か。こりゃあ、年貢の納め時かな」


 まさか、今までじゃなくてこの三体が『これから』とかないよな……。あり得ないステータスもこの三体相手なら納得出来るし。今なら倒せるとは思うが、正直五分くらいだしな。……もしかして、これから死にに行く人たちの気持ちってこんな感じだったのかもしれない。まぁ、そう思っても死ぬつもりは毛頭ないけど。


「ベルジさん。ベルジさん達冒険者の皆様には一万の魔物の相手をお願いします。虫たちは置いて行くし、アル達もいるので何とかなるでしょう。私はその三体を倒します」

「待て! それは幾らなんでも無茶だ! 迷宮竜なんて全員上級冒険者が何十人で協力して倒せるかどうかだぞ!? 黒虎や銀獅子だって上級冒険者パーティが最低五パーティは必要なんだ!」

「心配してくれるんですか? ありがとうございます。別に死ぬつもりはありませんし、勝算もあるので大丈夫ですよ。ですが、事が終わって余裕があったら屋敷へ私の体を持って行って下さい。多分疲れて動けないと思うので」


 俺はアル達を呼んで殆ど誰もいない城壁前に降りる。直ぐに来て貰ったアル達の中でキャロとサンに屋敷の倉庫に行く様に言う。当然反論されるが、何だがミーナの方にも嫌な予感がするので二人にはミーナを守って欲しいお願いする。それにキャロとサンは渋々ながらも了承してくれた。帰ったらしっかり労ってやろう。

 ドーレとトリアにはここで冒険者達と一緒に魔物と戦ってもらう。アルにもここでやってもらうが、三体の所まで乗せてもらう。


「行くよ、皆」

「「「「「ウォン!」」」」」


 アルの背中に乗って森の中を進む。なるべく気配を隠して進んでいるので直ぐ近くにいる魔物達には気付かれていない。多分、気配遮断とかのスキルを覚えたのかもしれない。チートなステータスもこういう時に役立つから何とも言えない。

 魔物の軍勢の隣を反対に進んで行くと一番後ろに一際デカい魔物が三体歩いていた。配置は迷宮竜が真ん中に黒虎と銀獅子だ。

 三体とも体高は十メートルはあるだろう、特に迷宮竜は頭から尾まで三十メートル近くある。滅茶苦茶デカい。

 この時に三体のステータスを視てみる。


【迷宮竜 女 ???歳

 レベル129 魔物

 HP・40650/40650

 MP・35700/35700

 力・20430

 防御・66870

 敏捷・1030

 魔攻・50000

 魔防・50000

<スキル>

 威圧、HP回復、MP回復、咆哮、竜の体

<魔法>

 火炎魔法、振動魔法】


【黒虎 男 ???歳

 レベル89 魔物

 HP・38000/38000

 MP・1200/1200

 力・9980

 防御・5400

 敏捷・50420

 魔攻・20000

 魔防・20000

<スキル>

 立体機動、夜目、敏捷強化】


【銀獅子 男 ???歳

 レベル84 魔物

 HP・23400/23400

 MP・8000/8000

 力・10200

 防御・6230

 敏捷・120000

 魔攻・4000

 魔防・4000

<スキル>

 神速、ギア、風爪(ふうそう)、獅子の威厳(いげん)


 三体とも俺よりレベルが高いな。それに黒虎と銀獅子はかなり早い。……迷宮竜が女なんて誰が思うだろうか。驚愕の事実である。

 二体は迷宮竜に合わせているのか他の魔物達は少しずつ距離が離れていっている。それも当然だ。迷宮竜はかなり敏捷が低い。だが、これなら一万も相手にしなくて済むから寧ろありがたい。

俺が仕掛けないのはそれが理由だ。流石にあんなのと一万の魔物は無理だ。

 ニ十分ぐらい経つと距離も良い感じに空ける。これだと万が一、魔物が気付いても来るまでに逃げるぐらいは出来るかな。魔物達が街まで着くのは三十分くらいだろう。結構近いな。見られないと良いけど。


 収納箱から刀と銃を取り出して迷宮竜たちの前に出る。迷宮竜たちは止まって、魔物達は気付かずにどんどん先に行った。

 俺はアルから降りてアルに元に戻るように急かす。悲しい顔するアルに少しグラッと来たが、心を鬼にして行かせる。それまでの間、ずっと襲われなかったのが不思議に思って迷宮竜たちを見ると迷宮竜が二体を止めて、俺を見ていた。その表情は何となく、優しそうに見える。


「俺を襲わないのか?」

『主従の絆は良い物です。それを(けが)すなど私には出来ません』


 あら、意外に話が通じる。もっと野蛮(やばん)だと思っていたのに。現に黒虎と銀獅子は何を言っているのかよく分からない。という事はこの迷宮竜、頭が良いのか。


「このまま去ってくれることは出来ないのか?」

『不可能です。何故か体が勝手に動いてしまいます。元は理知的だったこの二人も今はこの通り。お願いします、勇気ある少年。私達を倒してください』

「……そうか。分かった。せめて苦しまない様に倒してやる。その前にあなたの名前は? 俺はレインだ」

『アルトラと言います。レインよ、どうか私達を……』

「ああ。望み通りにな」


 アルトラの言葉が途切れると黒虎と銀獅子が左右から完璧なタイミングで襲い掛かって来た。

 俺はそれをバックステップで(かわ)し、二体が目の前に来た時に銃を放つ。銃弾は二体を掠っただけで大したダメージにはなっていない。

 銃弾は俺の魔力でしか作れない。魔力が弾丸なので弾切れやジャムる事が無く、便利だ。ちなみに今放ったのは氷の属性。掠ったのにのに凍る事すらない。あの毛は寒さに強いみたいだ。

 それから高圧にした水弾、真空刃を圧縮した風弾、雷で速さを上げた雷弾、マイナスまで温度を下げた氷弾、光を込めた光弾なんかをランダムで作りながら二体に撃つ。だが、決定的なダメージを与えることが出来ない。黒虎と銀獅子が物凄く速いのだ。流石は敏捷五万越え共め。

 魔力弾は一発に魔力で少なくとも二百は使うのでこう連続で使うと魔力をかなり消費する。回復速度が速いのは良いが、こうも連続で魔力を大量消費するのはきつい。

 アルトラはずっと戦闘を見ている。


 二体と戦闘を始めて早一時間。日が少し傾いて来て、魔力が三割を切り、少し集中力が切れた所でアルトラは自身の爪で切り裂く。俺はそれを食らって派手に吹っ飛ばされる。

 何とか飛ばされる前に刀で防御したが切り裂かれた腕がズタズタになっている。銃もボロボロだ。傷は直ぐに回復したが血は戻らないようで軽くめまいがする。少し力も入らないようだ。刀もさっきの一撃で折れてしまった。

 ボロボロになった刀と銃は収納箱に仕舞って、新しいのを出す。


「ははっ。流石はSランク越えの魔物達。一筋縄じゃいかないか」

『ふふ。私も驚いています。レインがここまで強いとは思いませんでした。私達も段々、本能に染められて来ているので興奮してきます。それにしても貴方の筒状の武器、見ない物ですね』

「ああ。銃って言って、この世界には無い。俺が新しく作った武器だ。良い物だろう?」

『ふふふ。確かに良い武器ですね。ますます興奮します』


 アルトラの声は少し色っぽく、恍惚(こうこつ)とした表情が見て取れる。それも魔物の竜の。あれ? 俺はとうとう末期か?

 思い浮かんだ事は直ぐに捨て去る。まぁ、アル達も分かる時があるからな。そういう物だ。そう考えよう。


  ***


 それから数時間、日が暮れ始め、夜の(とばり)が空を染め始めた頃、とうとう俺が作っていた刀が全部折れた。元々事前に作っていたのも合わせてだ。合計で四十三本だった。


「くそっ。ここまで強いのかよ」

『さぁさぁ、頑張って倒してみなさい小さき勇者』


 舌打ちをしながらも収納箱から十個目の銃を取り出す。銃も最初の時みたいな形じゃなく片手銃、具体的にはリボルバーくらいまで小さくなっている。これもそう多くないし、このままじゃジリ貧だ。果たしてどうすべきか。


 そう考えていると何度目かの黒虎と銀獅子による左右からのコンビネーション攻撃を仕掛けて来る。始まってから幾度となく受けて来たこの攻撃は現在、何となく読める。

 二体が襲ってきたタイミングを図ってジャンプで避け、空中で体を反対の位置にすると、俺は二体に向けて様々な種類の弾を撃つ。

 大きく弧を描く様にして着地すると、ようやく二体の前足を穿(うが)てたようで足を引きづっている。これで機動力をかなり削れただろう。二体ともかなり素早いので中々当たらなかったのだ。雷弾も音速以上はあったのに。試しに銃口を見るとライフリングを刻むのを忘れていた。だから弾がブレてたのね。

 俺は様子を見ながらライフリングを刻んでいく。刻む途中でアルトラの口に炎が現れる。


 一目で吐息(ブレス)だと分かったので風魔法で上空に上がる。それから一秒も経たずにアルトラの口から炎が発射された。しかもその吐息を操るようにして俺の方に向けてくるので必死に避ける。これじゃあ、ライフリングを刻めない。調合は魔力と集中力をかなり使うのでこうされると使えなくなるのは痛い。

 吐息が終わると同時に俺は魔力を一気に込めてライフリングを刻む。流石に連発は出来ないようで何とかライフリングを刻むことが出来た。

 だが、魔力を一気に消費したので結構フラつく。幸いにも上空にいたので襲われる事はなかった。それから地上に降りて、試しに一発氷弾を放つ。するとあり得ない速さで進み、黒虎の片目を貫いた。脳が凍ったのか黒虎はズゥゥゥンと大きな音を立てて、倒れる。多分死んだんだろう。いや、そうであって欲しい。これ以上三対一を続けるのは厳しい。





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