依頼6件目「残る謎」
いやー…疲れた。
最近ね、まだ東方でも知らない事いっぱいあるなぁと感じてきてですね。
再度勉強しております。
迷いの竹林に雄叫びが谺響する。
黒い異様な怪物による雄叫びは辺りの竹の節々が折れるほどの響きだった。
「地霊殿の主、古明地さとりの依頼により火焔猫燐、及び霊烏路空の護衛又、連行を仇なすお前を切り伏せる!覚悟しろ!」
零狐は刀の切っ先を向け言った。
次の瞬間、零狐は地面を蹴り怪物向かって駆け出した。
身を屈め素早い動きで怪物の元に走る。
怪物はゴリラの歩く時の姿勢をして零狐に向かい右手を振り上げる。
その時、零狐は既に左手の前に移動しており刀を振り抜く所だった。
(発達した腕は一回じゃ切り落とせない。それなら周りから攻めればいい。)
そう考えながた零狐は下から斬りあげる様に左腕の肉を削いで、斬った。
…はずだった。
斬ったはずの腕には皮膚だと思っていた黒い厚い装甲に摩擦によって煙が出ている傷がついているだけだった。
あくまでも、装甲に傷がついているだけである。しかも狐ヶ崎家の妖刀。
「兆刀」でも斬れない厚さだった。
(兆刀とは狐ヶ崎家の妖刀であり使用者の使い方の兆しによって効果が変わる刀。殺人を好み人を切り続ければ切れ味は増しより人や妖怪の血を吸い上げるかの如く鋭く変わる。しかし、人や妖怪を助ける用途の為に悪を斬り弱き存在を助ける使い方をすれば硬く靭やかに。終いには迷いや未練、悪意までもを断ち切る事が出来ると伝えらる妖刀である。)
「…は?」
空中にいた零狐は動けない。
零狐が驚きの表情を見せた時にはもう遅かった。怪物の振り上げられた拳によって零狐の体は骨の軋む音を響かせながら輝夜達に向かって打ち飛ばされた。
なんとか受け身を取る零狐。
しかし怪物の謎が多く、零狐は約1時間の間。妖力を使用しながら攻撃を避け有効な攻撃を探る事をするしかなかった。
ついに限界が来る。
咄嗟の油断で零狐は体を掴まれ地面に何度も打ち付けられた後、輝夜の方に投げられた。
零狐は頭の脳が揺れ、胃液が逆流している症状が出てしまった。
だが、元·妖怪の長の地位は伊達じゃなかった。攻撃を受けても尚、倒れなかった。
輝夜は「大丈夫なの!?」と叫んだ。
零狐は張り裂けそうな声で叫び返した。
「動くなっ!!」
輝夜は我に返り動きを止めた。
「獣は…ゴポッ…。狙った獲物は可能性がある限り諦めない。今、お前が離れれば二人は無防備になってしまう…。」
怪物がゆっくり輝夜達に向かって近づいて来る。怪物の荒い息遣いが離れても聞こえる。
零狐は息を整え口の血を地面に吐き捨てた。
輝夜がいる方向ではなく怪物のいる方向に向かって話し始める。
「今から言う事を良く聞け。あまり説明する時間は無いからな。ゲホッゴホッ…まず…これを食い止めて二人を連れて逃げるのは不可能だ。俺一人で食い止められたなら出来たがどうにも無理そうだ。そこで…だ。」
「奴は熱に弱い。刀の摩擦によって装甲が削れて中身が見えている。しかも…奴の装甲は再生に時間がかかる。八、九分で完全だと思う。」
怪物がまた叫び零狐に急激に接近する。
だが、零狐はその場から動かない。
怪物と零狐の距離は約8m程。
「まぁ今ここでお前がやればいいのは唯一つ。お前らしいやり方だ。」
怪物と零狐の距離が3m程になる頃に怪物は地を蹴り空中に飛び上がり、右手を振り上げていた。
「やればいい事、それは…。」
零狐は冷静に言った。
ある人物に向けて放った言葉。
「ぶちかませ!魔理沙!!」
次の瞬間、見覚えのある凄まじい威力のスペルカードが怪物に放たれた。
風が巻き起こり怪物は吹っ飛ばされる。
煌々とした魔砲が怪物の体を包み込むかの様に粉塵も起こる。
「命中だ、魔理沙。後は空中で待っててくれ。輝夜にスキマで二人を運んでもらう。」
輝夜の横にスキマが開かれる。
そして零狐の服装の中から出てきた狐火から明瞭な声が聞こえてきた。
『派手でなければ魔法じゃない!弾幕は火力だぜ!』
「それについては持論があるが…助かったよ。ゲホッ…ありがとう魔理沙。」
『よし!私は先に万事屋に戻ってるぞ。後で霊夢とかに治療頼むか。あの二匹は今、目を覚ましたようだしな。』
零狐は「スキマだけ残してくれ。」とだけ返事をした。そして刀を持って怪物の飛ばされた方向に歩き出した…。
零狐は怪物の飛ばされた方向に向かって行った。恐らく飛ばされたであろう終着点に零狐はついていた。
しかしーーー。
怪物の姿が何処にもない。
怪物の血痕、体液、剥がれた装甲のみが残された状態になっていた。
「あの怪物とはまた戦いになりそうだな。」
零狐は心の内で幻想郷に何か起こるような胸騒ぎを感じざるをえなかった。
万事屋にて。
二匹の声が甲高く響く。
『鳴き声』なのか『泣き声』なのか判別つかない程に叫んでいた。
「さとり様ぁぁぁぁぁぁ!!」
霊夢は零狐の折れた胸骨の矯正や、傷の手当をしながらやり取りを見ていた。
「私の為に薬をありがとね…ケホッ。大分良くなったから大丈夫よ。」
さとりは零狐のベッドから体を起こし二人を抱きしめた。
さとりの顔には安堵の表情が見える。
二匹は泣いて抱きついていた。
数時間後。
「本当にありがとう。感謝しきれないわ。」
さとりがそう言うと二匹も同じく礼を言って三人の地底人は帰っていった。
魔理沙は体を伸ばし欠伸をした。
「あー…疲れた。無事に終わって良かったな。」
「俺は怪我しまくりだけどな。頭痛いし。」
魔理沙は明るい顔をして提案した。
「いやー初の大仕事だったし記念に博麗神社で飲むか!」
「いいわね。さっそく招集かけましょう。」
霊夢と紫も同調して宴会の準備をすすめた。
その日の夜の博麗神社は妖怪や人間、様々な者達があつまり騒いだ。
何故かいつもより一段と賑わったそうだ。
ーーー暗い何処か別の場所ーーー
「…そうか。やられてしまったか。死体は?」
岩のような所に謎の人物が座っている。
二匹の黒い怪物が男の前にやって来た所、人物はそう尋ねた。怪物は何かを手で引きずって来たようで男はそれを目にする。
「持って帰って来たか。ならいい。直ぐに処理しろ。」
二匹の怪物は広い洞窟の外に死体を引き摺っていった。
その怪物達は竹林で零狐達が戦った怪物と同じだった。
謎の人物は松明に火を付けて洞窟内を明るくする。
「まだ…次の手はある。黒田坊がしくじったから私自身でやるしかないし…。」
洞窟内には黒い怪物達が蔓延っていた。
「この魔導書を紅魔館に置いてくるように。」
怪物にそう命じて岩の上に腰掛ける。
(待ってろ零狐。私は黒田坊の様に簡単にはいかないぞ。お前の愛す幻想郷もお前の大切な物も全部壊してやる。)
続く