依頼3件目 「救出の開戦」
霊夢がいなくなった夜から2日間経ち里に市団が訪れる日となった。
零狐はある仮説を立てて市団を丸2日間調べていた。
調べたところ、一つ怪しい市団についての噂を知ることができた。
それは市団が「本来去るはずの日の夜から人気のない場所で人身売買を1日だけ行い去っていく」という噂だった。
朝6時頃、零狐は息を潜めて『市団』の様子を探っていた。
ちょうど市団の団員達は今日出す品を揃えているようだった。
零狐は立てた仮説と噂を確かめるため荷車や品が入っている箱が積み重なる所を探り始めた。幸いまだ夜明け近いため見つかりにくいという利点があった。
まず零狐は荷車を調べ始めた。
(荷車は全部で2台、木箱を積んだ物は3台。何か手掛かりがあるかも…)
しかし大体の物は予想を裏切る物だった。
特にこれといった手掛かりは無かったのだ。
零狐は舌打ちして焦りを見せた。
(くそっ…俺の仮説は間違っているのか?
だとしたら霊夢や里の人達は何処に…!)
その時だった。
零狐の近くを2人の人物が通った。
風貌や容姿からして団長と思われる人物と副団長と思われる人物の2人だった。
(一応聞いてみるか…。何か分かるかも。)
団長が何かを確認するように話しているようだった。零狐が聞き耳を立てる。
「…だ?ちゃんと…は決めたか?」
副団長の方が聞き返すように話す。
「え?…人形を売る場所…か?それは…夫です。」
零狐は副団長の『人形を売る場所』という言葉が引っかかった。
(人形?…何だ?……)
零狐は思い出した。
霊夢の手掛かりである札に付着していたものを。札に付着していたものは『糸』だった。
(糸…そして人形。まさかあいつが…?)
零狐は密かにその場を立ち去りある人物の家に向かった…。
「あら珍しいわね、貴女が此処に来るなんて。何の用かしら?零狐。」
零狐が向かったのはアリス·マーガトロイドの家だった。
零狐は疑う様にアリスに話し始めた。
「アリス、お前か?霊夢や里の人達を襲って行方不明にしているのは?」
アリスは焦る素振りも見せず何を言っているのか分からないという風だった。
「何を言っているの?私がなぜそんな事する必要があるの?」
反論する零狐。
「あるだろうな。最近生物を人形に帰る魔法を覚えたんだってな?魔理沙から聞いた。
その実験台につかまえたんじゃないか?」
アリスは呆れた様に話を進めた。
「酷いわね、私はそんな事しないわ。大方人形を売る場所とかを市団の連中の口からきいたんでしょ?」
「…その通りだが。」
アリスは零狐に言葉の意味を説明した。
「人形っていうのは人身売買してる奴らの隠語。つまり人身売買の品物の事よ。」
アリスは説明した後、話を続ける。
「それで?いつ助けに行くの?」
アリス宅から出ようとした零狐を呼び止め尋ねるアリス。
「今日の夜に奴らは里を去るはずだが、人身売買は里を去るはずの夜に行われるそうだ」
流石に聞いた以上は手伝う様だ。
アリスに礼を言って零狐は夜を待った。
深夜3時頃ー。
市団のやけに大きい荷車が里の裏に周り魔法の森へと向かっていく。
既に夜の色は深く、辺りは光なしでは見えない状況だった。
魔法の森に入ると暗闇は更に深くなる。
梟や狼の声などがこだまする。
団長がその周辺全体に光を照らした。
しばらくしてそこにやってきたのは里の付近の大富豪で有名な『金城』という人物が来た。見た目からすると太った成金だ。
「団長…。今回はどんな品があるのだ?」
団長は卑しく笑い答えた。
「今回は巫女から武闘家…只の奴隷としても使える品が揃っています…。」
そういって団長の前に連れてこられたのは霊夢や里の人達だった。
その上空には射命丸の手に掴み飛んでいる零狐がアリスに『狐の使い』を使って連絡を取っていた。
「射命丸。奴らの写真は撮れたか?」
射命丸は笑顔で答えた。
「もちろんです!ネタの提供ありがとうございます、零狐さん!」
「俺も助かった。俺は狐火が出せないと飛べないからな。明かりでバレたら洒落にならん。」
その時、狐の使いが帰ってきた。
アリスの返事が返ってきたようだった。
「なになに…相手には蜘蛛妖怪がいるのか。まぁ蜘蛛如きなら余裕かな。」
(それにしても…索敵能力は優秀。更に人身売買をしている奴らじゃないと知る訳が無い隠語も知っていた。アリス…一体お前は何者なんだ。)
零狐が感慨に耽っていると文が声をかけてくる。
「行きますか?零狐さん。」
零狐は頷き射命丸の手を放し落下をしていった。射命丸もそれに続き急降下していった。
団長と金城の取引は済んだ所だった。
「それじゃあまた今度…団長さん。」
金城がそう告げて去ろうとした時だった。
何かが金城の手から霊夢を奪い去った。
「霊夢さんは確保しましたよっと♪」
満月が丁度雲から出てきて姿を露わになる。
「ひぃぃっ!?てっ天狗!?」
金城が情けなく腰を抜かす。
団長や団員が気を取られているうちにアリスの人形達が里の人達を確保した。
団長は舌打ちして団員に武器を構えさせて怒号をあげた。
「糞がっ!誰だこんな事するのはっ!」
その瞬間だった。
金城や団長、団員の体は縄で縛られていた。
倒れた団長の前に立っていたのは零狐だった
「誰だって?万事屋のリーダーの零狐だ。」
蜘蛛妖怪2体が木から勢いよく降りてくる。
「お前が誰だろうと人間じゃ蜘蛛妖怪には敵わないだろうな。喰われちまえ!」
高らかに笑いを挙げる団長と団員達。
次の瞬間、笑いは静まる。
風の勢いは止み草木は蠢く様に揺れ始める。
その場の殆どが不安と恐怖に満ち、闇は更に深くなる。
「…蜘蛛妖怪風情が歯向かうか。」
零狐がそう言うと蜘蛛妖怪は恐怖で錯乱し、握り締めていた短刀を投げ捨て逃げていく。
「お、おお、おいお前ら!逃げるな!」
団長の声にも反応せず一目散に去っていく。
零狐はゆっくりとした足取りで団長の元に歩いていく。
団長が怯えた目で零狐を見上げる。
零狐は紅く光った目で見下ろした。
「人間が妖狐に適うとでも?」
次の日の朝。
市団は里の警察に引き渡され、金城も人身売買の罪で捕まった。幻想郷中に『人身売買!?市団捕まる!』という題で「文々。新聞」がばら蒔かれていた
その頃、零狐は紅魔館の人材が一夜にして完成させた一軒家くらいの大きさの万事屋兼自宅にて妖夢と寛いでいた。
「妖夢ー…。お腹すいたー。」
だらける零狐に答える妖夢。
「わかりました!何がいいですか?」
「んー……。妖夢がいいなぁ。」
一瞬固まる会話。
顔を赤くした妖夢に「冗談だ」と告げる零狐
新しくできた万事屋にやけに暖かい笑い声が響いた。
続く
疲れたよー。
久しぶりに執筆させて頂きました!
零狐です。
まだ読んでくれる方がいて良かった(・∀・)