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狐の万事屋  作者: zeillight(零狐)
15/34

依頼13件目「遭遇」

「よっと…。もうすぐで天狗達の所かな。」

零狐は刀を携えて岩をどける。

既に零狐の顔には、山を登ってきた時間と労力から疲弊の色が見えていた。

零狐は天狗の新聞記者、清く正しいでおなじみの射命丸文に会いに来ていた。

(なるべく早く容姿を変えた事も含めてもう1人の俺の警戒を促してもらわないと。)

全体的に標高が高くなり始めた頃だった。


何か嗅いだ事のある匂いが漂っている。


それは嫌悪感を引き起こす様な…零狐の中にあった黒い感情を引き出す匂いだった。

今までに何度も嗅いできた。


そして零狐は。

気づいてしまった。


ーーーーーその匂いが何なのか。


「…ッ!!」

息を切らしながら険しい山道を登っていく。

赤い染みが地面に見えてくる。

そして匂いは次第に強くなっていく。


「なんだ…これ。」

そこには何人もの白狼天狗が血を流して倒れていた。匂いの正体は血の匂いだった。

白狼天狗はほとんど急所を斬られ、息を保っている者はいなかった。

(あいつは…文は大丈夫なのか?)

「おーーい!!!文ーー!!」

何度も叫ぶが返事が帰ってくる事はない。

その時だった。

何かが飛んでくる気配を感じ取り、零狐は身構える。

飛んでくる何かのシルエットは大きくなり、それは見覚えのあるシルエット。

いや、親しみのある人物だった。

「零狐!やっと見つけた…!」

「魔理沙!…どうして此処に?」


魔理沙はこれまでのいきさつを話した。

「そうか…もう動き出したか。」

「紅い零狐は何処にいるか分かるか?」

零狐は残念そうに首を振る。

「残念だが奴はもう此処にはいないだろう。文もこれに気付いて逃げたか…たまたま留守だったのか。それは分からないが…文の死体はまだ見つかってない。」

「一応、最低限の調査だけはしていこうぜ。何か紅い零狐の手掛かりがあるかも。」

魔理沙と零狐は妖怪の山の天狗の住処を調査し始めた。

しかし何処に行っても死体だらけで無残な殺され方をした死体もあった。

「おい…魔理沙!こっちに来てくれ!」

零狐が調査している場所から声が聞こえた。

その声から只事ではないと感じ取った魔理沙はすぐさま零狐の元に向かった。

それは死体がたくさん転がっている場所から離れた川の付近だった。

「どうした零狐…っ!?」

そこにあったのは。

「魔理沙…俺達は、どうやら一足遅かったようだ。」

そこに倒れていたのは、射命丸文だった。

身体中を鋭利な刃物で切られていて、かなりの重症だ。

出血はある程度に抑えられていたが右肩から先が存在していなかった。

「まだ息はある。魔理沙。何処か落ち着ける場所はあるか?」

「なら私の家に歌仙と霊夢がいる筈だぜ。そこに避難しよう。」

零狐は頷き文を背中に抱え、刀を収めた。

魔理沙はその瞬間、何かを察知した。


殺気。

そう言い表した方が正しいだろう。

草の茂みが揺れ魔理沙達を反応させる。

「誰だ!!」


それに応じるかの様に茂みから人物が姿を現す。その人物は溜息をついて出て来た。

「ふぅ…なんだ魔理沙だったのね。」

そこにいたのはいつもの知っている人物。

紅と白が特徴的な、異変解決のプロ。

「なんだ霊夢か…。歌仙はどうしたんだ?まだ私の家にいるのか?」

霊夢が右手を魔理沙の方に向けた。

その時。


「魔理沙!危ない!」

零狐は文を支えながら片手で魔理沙を守った。零狐の片腕には札を針の様に鋭く変化させた封魔針が深々と突き刺さっていた。

「くっ…うぅ…!!」

「零狐…!なんでだ霊夢!何故攻撃した!」

封魔針は妖怪に対して更に効果を発揮する。

刺さったのが妖怪なら刺さった箇所から熱が発せられる相乗効果だ。

もとより妖怪退治用に作られた物なのだからそれは当たり前だった。

しかし今の状況で、おかしいのはその点じゃない。

「違う。…こいつは霊夢じゃない。」

零狐の言葉に笑顔を消した霊夢。

いや零狐の言う通り,そこにいるのは霊夢では無かった。

「妖怪の俺が封魔針に刺さったのに、刺さった箇所から熱が出ていない。この封魔針は紛い物だ。」

霊夢でないものは、段々と姿を変えた。

その人物は霊夢じゃないと分かった時から、その笑顔が消えた時から。

誰なのかが二人には予想がついていた。


「あーあ。バレちまったか。ま、丁度いい。あの仙人に邪魔されてお前は始末し損ねたからな。今ここで始末してやるよ。」


そいつは血塗られて、もう拭い切れない程に血の付いた刀を抜いた。

服にはおそらく天狗達の者である血が染みていた。


「蒼い俺にも退場してもらおうかな。お前が消えれば都合が良い。」

紅い零狐だった。


零狐は頭の中で思案する。

様々な事が一気に脳内を駆け巡る。

(ちっ…状況は最悪だ。魔理沙も完全に霊夢と歌仙の場所を漏らした。此処で逃げても後から始末される可能性がある。)

2人は一切、紅い零狐から目を離すことなく行動に注意する。

(仮にもこっちには重症の文がいる。確実に一人で闘わなければならなくなる。)

「さて…まずはお前からだな。」


刀を向けたその先には。


「くそっ…私かよ!!零狐!先に私の家に戻っててくれ!」

魔理沙は八卦路と箒を構え臨戦態勢に入る。

「何してるんだ!?早く行くんだぜ!」


「魔理沙…死なないでくれよ。」

振り返った魔理沙にそう言い残して飛び去って行く零狐。

飛び去りながら歯を食いしばる。

「当たり前だぜ。」

それは小さい声で聞こえていなかっただろうけど、しっかりと魔理沙自身には染みていた。


紅い零狐は意地の悪い笑顔を見せる。

「さぁ…どんな風に死んでみたい?」

魔理沙は紅い零狐に対して睨み返す。


その時、ある物を指に挟んでいた。

「これ以上、被害は出させないぜ!喰らえ……スペル!」


ー恋符「ノンディレクショナルレーザー」ー


魔理沙の周りに赤、黄、緑、青、紫の五色の光の球体が現れる。

それぞれは目標対象物に対してそれぞれの色のレーザーを放つ。

レーザーは直線的な物の為、紅い零狐はしなやかに避けていく。


だが、それだけだった。


直線的だからこそ、レーザーの標準に囲まれたらレーザー同士の間隔が狭まり避けにくくなる。その事に紅い零狐は気づいていない訳では無かった。

ただそれでも避ける事を強いられているのだ。攻撃の為に動きを止めてはいけない。

(こいつ…的確に狭めてきやがる。中々攻撃に移れやしない。まぁ焦る事でもない。)

舌打ちをして悪態をつきながらも、レーザーに挟まれない様になるべく動き回る。


(このままじゃ全部避けられるのは分かってるぜ。だが…これならどうだ?)

「これで終わりじゃないぜ!」

そう言いながら、魔理沙は指を鳴らした。

それを合図にしたかの様に魔法陣が二つ現れる。そこから緑の光弾が連射される。

「くっ…同時っ…かよ!」

汗を流しながらも笑いの表情は絶えない。

機敏に動きレーザーを躱しつつ、刀で緑の光弾を弾いて相殺させる。

(これも躱すのかよ…!)

「なら…これはどうだぜ!?」

八卦路を前に構え魔力を溜める。

白く光った小さな魔法弾が一気に発射される。あまり威力は高くない様に見えた紅い零狐は軽く避けた。

しかし。

(かかったな…!)

「甘いぜっ!!!」

白い小さな魔法弾は避けた後にも、追尾を止めずに紅い零狐めがけて飛んでいく。

「その程度…障害にもなんないねぇ!!」

焦りの表情を見せながら空中戦に持ち込む。

(まだあのレーザーの効果が終わっただけならいいが…地上戦は弾幕が避けにくい。なら空中でスペカを使う前に…。)

紅い零狐は刀を持ち直した。

長刀を使う者は普通なら有り得ない持ち方。

片手持ちだ。

「まだ、戦いは始まったばかりだぜ!」

魔理沙は親指を逆転向きにして挑発する。


首の骨を鳴らし鋭い目つきで魔理沙を睨む。

「その通りだ。来いよ普通の魔法使い。」

魔理沙はそれに対して魔法陣を携えたまま狙いを定めた。威嚇の意味も込めて魔法弾を連射した。

案の定、全てを躱しきり臨戦態勢になる。

「普通ってのは案外最強より強いんだぜ?」


続く


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