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Prince of Darkness  ー魔王国復興譚ー  作者: 御垣 勇蘭
7/11

人との出会い

1日遅れてしまい申し訳ありません。

壁門を超え、そこにいた人間たちの視界から消えてからしばらくして、ユウテラスは魔法を解除し、森へと降り立った。そして、赤く燃えている王都の方を眺めた。


(追ってはないようだな・・・。僕の住んでいた街があんな無惨に・・・・お父様も・・・・。ダメだ、これからのことを考えないと。さて、どうしたもんかなぁ。)


そう思うと、彼は辺りを見回して、人の気配がないか確認してから一本の木によりかかって休息をとりながら、これからのことを考えた。


(とにかく、魔人領にいてできることは無いな。今、人間に立ち向かったところですぐ殺されるだろうし、人々を集めたとしても、攻撃されれば終わりだ。しかも、ここにいると見つかったら殺されるだろう。だとしたら、一度人間領の方へ行ってみるか・・・。そうすれば、何かできるはず。)


そう思い立ち上がると、周囲に気をつけながら森のなかを魔人領の端、人間領の方向へとゆっくりと進んでいった。

常時ならば空を飛んだり、道を使ったりすることによって村へは行くのだが、今の彼は見つかったら殺されてしまうような状況にあるためそれらの手段が見つからない。

先ほどの戦いで空を飛ぶような人間はいなかったため飛べば目立つし、歩いて行くとしても彼の服装はボロボロになった質素な服であり、魔人領に攻めてきた人間が着ていた甲冑やローブではないので、翼を切り落としているとは言え不審に思われてしまうことから、森のなかを進むしか手がなかった。

また森のなかであれば、身を隠す場所があるため、ユウテラスを探しにきたとしてもやり過ごすことができる可能性があった。

そして、何も食べずに歩いては寝る、歩いては寝るを何日か繰り返すと、最も人間領に近い村に続く道が見えてきた。


「あぁ、やっとここまで来たか・・・」


そう安堵の呟きをして、ふらふらとした足取りで村へと歩みを進めた。

しかし、村がはっきりと見えていくにつれて安堵の表情は驚愕の色へと塗り替えられていった。

本来あるはずの村が黒い平地となって存在していた。

そのことが彼の表情を驚愕にさせる刃となっていた。


「な、なんだと・・・何がここで起こっていたんだ・・・」


きっと王都と同じ様に炎によって焼かれたのであろう村は余りにも今までの日常とかけ離れている景色であったために、ユウテラスは本当に人間の仕業だったのか疑問に思ってしまった。だがその疑問は、村だったはずの平地で時折発見した丸い黒い物体によって解かれた。丸い黒い物体をよく見てみるとここの村の者であろう焦げた頭の骨であった。

それを何回も繰り返していくうちに、この村も王都と同じように攻撃されこの様な姿になってしまったのだろうと想像が出来てしまった。それは王都も今はこんな状態になっている可能性があるという事も想像が出来てしまったという事も意味した。

しかしユウテラスは悔やみはしなかった。こうなる運命なのだろうと。そして自分がするべき事があるのだからここで嘆いていてもしかないと。

王都から逃げてここまでやってくる途中で何度も思った事だった。

そして気持ちが落ち着くと急に身体が重くなった。


(く、空腹で倒れそうだ・・・)


王都から村まではかなりの距離があった。そこを魔法も使わず己の足で歩き、常に神経をとがらせながらの行動は体力を大きく削っていた。

それが、この村に着くという目標を達成し現実を飲み込めた事によって、今までの緊張が解け、疲労が襲ってきた。

何かないかと村を探すと、 魔人領では見慣れない白い袋が落ちていた。

それが何なのかを確かめるため手に取って中のものを出してみると、茶色い丸い小さな何かが沢山入っていた。

それが食べられるのか鼻を近づけてみると甘い香りがした。その途端、手に取っていた何かを手ごと食べてしまうのかと言うくらい勢いよく食べ始めた。


「美味い」


彼はそう呟きながら、食べていた物を眺めた。魔人領では見かけないもの。きっと人間が落としたのだろう、その食べ物は香りもそうであったが、味も甘く疲労していた身体に力がこもってきていた。

そして、袋に入っていた残りのうち少しを残し、食べつくすと、袋を腰に括り付け、人間領との境にある森と人間が魔人領に来る時の通り道にしたのだろう、一部の木が切り倒され道となっている方向を眺めた。


(あの森を越えれば遂に人間の住む世界という訳か。自分が魔人である事をばれないように気を引き締めないとな。)


再び気を引き締めると、彼は人間と出会さないように道から離れた森の方へと入っていった。


====================


森の中は、魔人領にある森よりも遥かに魔物の数が多かった。

魔人領の森にいる魔物は定期的に近くの村人たちによって討伐がされていたが、この森だけは人間領との境にあるため近寄る者がおらず、放置されていた。

しかし、獣にとっては魔人族だろうが人間だろうが関係無いわけであり、ここに住み着いた獣たちは討伐される危険がなく、どんどんと増えそれにしたがって魔物の数も増えていた。


「く、数が多いと厳しいな。」


ユウテラスはそう呻きながら、魔法を使い迫りくる魔物を屠っていた。

魔人族は、知能をもった生物との戦い方は知らなかったが、魔物は定期的に討伐しなければならなかった為に魔物との戦い方は心得ていた。さらにユウテラスは膨大な魔動力の持ち主であった為に、さほどの苦はなくこの森を進めていた。

そして森に入って半日くらいが経ち、日が落ちかけていたときユウテラスの耳にこの森にはそぐわない音が聞こえてきた。


「だれ・・たす・・・」


遠くから聞こえてくるため完全には聞き取れなかったが、明らかに魔物の雄叫びとは違う音であったのて、何事かと思い駆け出した。

声が聞こえる方へ近付くと、普通の魔物よりも一際大きな魔物がいた。そしてその目線の先には、一人の少女が腰を地面につけ、恐怖に満ちた目でその魔物を見ていた。

この状況が、どういうものであるのか分かった瞬間、ユウテラスは魔物に向かって突進して行き、大声で叫んだ。


烈風刃(ライオット)‼︎」


魔物に向けられていた手から、青白い光をまとった風の刃が魔物の首に当たり、胴と頭を切り離した。

そして、ユウテラスが魔物を仕留めたことを確認すると、少女の方へ歩み寄り、言った。


「大丈夫か?」


すると、今何が起きたのか理解ができずに呆然としていた少女が我に返り、ユウテラスの方を向くと、焦

るような声で言った。


「だ、大丈夫です…た、助けていただきありがとうございました。」


そして、立ち上がりユウテラスの方を再び向くと、先ほどは魔物の影やその髪、そして恐怖の表情でわからなかったが、その顔立ちがはっきりと見えた。

赤みが強い茶色の髪は腰の方まで伸び、

目は見る人を魅了する深い紺色であり白い肌がより一層、その美しさを際立てている、どんな人がみても美少女と答えるような美しさでうだた。

しかし、ユウテラスはその事よりも自分の考え事に更けていた。


(自分の敵であるはずの人間を助けてしまうとは・・・僕もお人好しなのかな?まあ、助けたもんはしょうがない。これで何かあれば、先程魔物がしていた続きを私が代わりにやればいいだけだ。)


そうしていると、黙っているのが不思議に思ったのか、少女が話しかけてきた。


「助けていただいてありがとうございます。

私の名前はアイリスといいます。アイリス・D・ティターナ。あなたは?」


自分の名前を聞かれた事て、自分の本当の名前を明かしていいのか一瞬迷ったが、そもそも自分は人間に名乗ったことはなく名前で自分が魔人族である事はばれないだろうと思い、言った。


「僕はユウテラス・A・ヴェルフィナーレです。」


そう言うと、ユウテラスは疑問に思った事を少女に言った。


「えっと、アイリスさん?どうしてあなたはこんな所に一人でいたんですか?危ないですよ。」


それを聞いたアイリスはクスッと笑うと言った。


「さんは要りませんよ。アイリスで結構です。あ、あと私はこれから貴方のことをユウさんと呼ばせてもらいます。で、ここにいると危ないという事ですが、それはあなたも同じなのでは?」


「いや、アイリスさん、これからって別にずっといる訳ではないですし、しかも私はさっきみたいに魔物を倒す術があるけどあなたは見るからになさそうじゃないですか。」


そうユウテラスが反論するとアイリスは食いつくように反論した。


「いえいえ、助けてもらったのに何もせずにはいられませんよ。ですから一回私の住む村でおもてなしをしたいのです。しかも、ユウさんは何日も食事をしていないように見えるのですが?」


他の人がみても何も食べていないように見えるのかと思い、自分の身体のあちこちを触って確かめようと思っていた矢先、お腹がなった。


「ふふ。やっぱりお腹が空いているようですね。助けてもらったらお礼もありますし、ぜひ私の村へ来てください。遠慮は要りませんよ。そしてその道中に私がここにいる訳をお話ししましょう。」


ユウテラスは自分の腹の音を聞いて赤面しながら、自分に言い訳をしようとしていた。


(決して、お腹が減って、何か食べさせて貰うためについていく訳じゃ無いんだ。彼女を無事にこの森から出すためなんだ。あ、あと人間の情報も聞き出せるかもしれないし。うん。そうだ。決してお腹が減ってるからじゃ無いんだ!)


そんな取り乱したような子供じみた言い訳を自分にしながら、彼女のあとをついていった。





※8/30 行間を増やしました

   加筆いたしました

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