徴収
遅くなってしまい申し訳ありません
※少しグロいシーンがありますので苦手な方は飛ばしてください。
それは、半年ほど前の事だったらしい。いつものように多くの村人が畑仕事に励んでいるときであった。
あからさまに村人とは違う格好をした者20人ほどが馬車や馬を引き連れてやってきた。
その中のリーダーらしき男が村長と話がしたいと言ってきたので、アルベルトは自分の家にその男を上げた。
「この辺りではお見かけしない方のようですが、どちらさまでしょうか?」
家にあげた男は鎧を着ておりその上からローブを着ていたものの物騒な感じがにじみでていた。そのためア
ルベルトは恐る恐るといった感じで彼が何者なのかを尋ねた。
「私は、魔王討伐隊の後方支援部小長のイアン・T・ガルスだ。」
「はあ、左様ですか。・・・ところで魔族討伐隊とはどういった方々なのでしょうか。」
初めて聞く単語を口にされたアルベルトは間の抜けた返事をする。そしてその単語がどのような意味を持つのかイアンと名乗る男に尋ねた。
「魔人族は知っているか?」
彼の質問にイアンと名乗る男は質問で返した。
アルベルトは無言で頷く。
「魔人族をこのまま放置しておくと人間に害をなすであろうと仰った方がいてな。それで魔人族を討伐することになった。それが魔王討伐隊だ。」
「はあ。では、イアン様はどうしてこの村にいらしたのでしょうか?」
魔人族といわれても、昔耳にした位で、目にしたことはなかった。だから魔人族なんて架空の生き物とかの類であると思っていたアルベルトは、その魔人族が人間の脅威になると言われても実感は湧かなかった。それよりも、その魔人族を討伐するであろう人たちがこの村にやってきているのかが謎であった。
「魔人族を討伐すると言っても時間がかかる。その間の討伐隊の食料を魔人族の土地との境にある森の周辺の村から徴収しているのだ。この村に立ち寄ったのもその為だ。」
そう言って彼は自分のローブの内側から真っ白な封筒を出した。
「中を確認しろ。これは国王陛下からの命令である。拒否することは認められん。もし拒否するようなことがあれば多少怪我をさせてでもいいと言われている。」
アルベルトが真っ白な封筒を開けると、確かにそこには魔人族を討伐すること。その為に食料が必要なこと。そしてその食料は村が負担することと書いてあった。また、拒否する事は国に対する反逆罪だとも書かれていた。そして最後に豪華な家紋の印が押されていた。
しかし、アルベルトを含む村の者は村を出た事はあるものの、それは隣の村や近くにある大きな街まで出るくらいであり王都になど行ったこと無かった。なのでこの国の国王もまた魔人族と同じように見た事のないものであったため王の命令であると言われてもなんと実感が湧か無かった。
だが、真っ白な封筒がこの命令を下した者の身分が相当高い事を表していた。紙というものは藁を細かくして梳くのが一般的な作り方であり、白くする事は困難である。困難であるという事はそれにするのにはお金がかかる。それも庶民が簡単に手が出せるほどの金額ではない。そんな紙を使い書状を書いているという事は相当な金持ちであるという事だ。そして金持ちというのは大体権力を持っている。そうなるとここで歯向かうのは下策であるとアルベルトは思った。
「承知いたしました。只今手配いたしましょう。どの程度持って来ればよろしいでしょうか。」
そういえばどの程度の量を持って来れば良いのかを聞いてい無かったし書状にも書いてい無かったなと思ったアルベルトが尋ねると、予想外すぎる量を言われた。
「そうだな。丁度収穫を終えたばかりのメコナがあるだろう。それの7割ほど持って参れ。」
「そ、それは誠でございますか⁉︎ 7割は本来我々村人が1年間暮らすために必要な最低限の量でございます!
それを持って行かれてしまってはこの1年間生きていけませぬ!3割か4割ではダメでしょうか」
「ええい口ごたえをするな!我々は7割必要なのだ!足りない分はそこにある森から木の実でも採ってきて食べれば飢えはせんだろう。それよりも魔人族を討伐しなければいつしかお前たちの村にも甚大な被害がでるのだぞ!それを防げると思って出すんだ!」
イアンは怒った口調でそう言った。これ以上何か言うと先ほど彼が言ったようにタダでは済みそうにないと思ったアルベルトは、今からメコナを取りに行くと伝え、お辞儀をして彼に背を向けた時だった。
彼が不意に思い出したように言った。
「そうだ。もう一つ大事なことを忘れていた。これを読みたまえ。あと、先程の封筒と手紙は返してもらうぞ。村人が持つべきものではないからな。」
アルベルトは自分の手に持っていた手紙を封筒の中に入れイアンに渡すと逆に彼からもう一つの封筒を受け取った。そこには先程の7割のことの同じくらい驚くべきことが書かれていた。そのことが本当なのかつい尋ねてしまった。
「こ、これも誠のことなのですか⁉︎」
「ああそうだ。国王陛下が虚言など仰る訳がなかろう。直ぐに手配して参れ。」
このことも何か反論すればまた先のように怒鳴られるかもしれない。もしかすると、二度目なので今度は手を下されるかもしれない。そう思ったアルベルトは無言で家の出口へと向かった。その途中でまだ信じられないというように、小声で呟いた。
「村の男を魔人族討伐隊に連れて行くなんて・・・・・」
戸を開けると、そこには彼の仲間であろう人たちが立っていた。皆、アルベルトが何故家を出てきたのかを知っているのだろう。3人が彼の後に付いてきた。
その者たちを無視しながらアルベルトは村人たちを一箇所に集めるよう近くの村人に言った。そして、暫く経って村人たちが全員集まるとアルベルトはイアンたちが何者で何を要求しているのかを告げた。すると、青年の一人が怒りに満ちた顔で怒鳴った。
「ふざけるな‼︎なんで俺たちが丹精込めて作ったメコナを見知らぬ連中に俺らの食い分までやんねえといけねえんだよ‼︎」
そう言うと彼は、傍で今の集会を見ていた先程アルベルトについてきた人たちの方へ向かった。
「てめえらが直接願い出ねえくせして、なんでそんなに偉そうな顔して俺たちを眺めてんだよ‼︎」
そう言って彼らの一人の中年の男に殴り掛かろうとした。アルベルトが止めるために声をあげようとしたがそれよりも先にその青年から鮮血が噴き出た。
「ぐぁぁぁっっ‼︎」
彼はそう叫ぶと地面で転げ回った。それを蔑むような目で先程青年が殴ろうとしていた男が見ていた。手には剣を持っておりそこにも血が付いていた。そして、彼は静かな口調で言った。
「我々は願い出ているのではない。命令しているのだ。お主らに拒否できることなどない。もし拒否したり歯向かうようならこの剣で切り刻んでやる。この、剣は魔人族を討伐するために作られたが、人にも十分効く。いいか、もう一度言う!もし拒否したり歯向かうようならこうだ‼︎」
そう言って剣を振り下ろすと、小さい悲鳴と共に先程まで地面を転げ回っていた青年が動かない胴と頭の二つに分かれていた。
それを見た村人たちは絶句し、もはやいう通りにするしか無いと理解した。そして、アルベルトが慌てて指示をだすと、皆無言のままそれに従った。
そしてその日の夕方に魔人族討伐隊は村の食料を馬車に乗せ、村の男たちを連れて去っていった。男を招集した際、労働力になる者だけでいいと言われ、老人やまだ幼い子供たちは村に残されることになった。が、今まで村で一番働いていいた成人の男たちはみな連れて行かれた。そして、村に残されたものは唯々それを黙って見送ることしかできなかった。一行が視界から消えたあとは、見せしめに殺された青年を葬り残された食料を分け合い、皆が皆重い気持ちで家へと帰っていった。
丁度10話まで書いたのでこれからは投稿を一週間おきにしたいと思います。そのかわりに一回分の文章量をもう少し増やそうかなと考えております。
感想、ブクマ、評価の方もよろしくお願いします。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
※この回以前の文章が少し読み辛かったので行間を開けさせていただきました。これからはこっちでいこうと思います。




