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宝石少女奇譚  作者: 香山 結月
第2章
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08 海岸編

 それが起こったのは昨日の出来事。いつものようにトレーニングをしようとエントランスに向かって歩いていた蘭の無線機に、届いた一つの知らせ。

『蘭ちゃん、聞こえているかい?』

「何よ。これからランニングを始めるところなんだけど」

 本部のグラウンドに行こうとしていた蘭の耳に、柊の緊迫した声が響く。その声で何が起こってしまったのか、想像するのは容易い。自然と歩く速度が遅くなる。

『ランニングは中断してくれ。ラティランスが現われた』

 予想通りというか、それしかないだろうと思いつつ、すぐさま聞き返す。

「場所は?どこに現われたの?」

『本部から一番近い、町だ』

 本部から一番近い町。それはここから車で数十分の距離にある場所。それならいつものようにヘリコプターで移動するより、車で移動した方が早い。

 蘭も時々町へは行く。あの場所にラティランスが現れるなんて、そう思うと自然と顔が強張る。

『ただ…いいことかは分からないが。町には柘榴くんと希くんがいる』

「何ですって!」

 あの二人が、柘榴と希がいるなんて。一体どうなっているのだ。まさか蘭より先にラティランスの元に向かったというのはあり得ないだろう。

『すまん。俺が午後から休暇を与えたんだけどね。まさかこのタイミングで、あの場所に現われるとは予想出来なかったんだ』

 すまん、ともう一度謝られても困る。蘭がイラついているのは柊に対してではない。それなのにそんな風に謝られたら、柊に八つ当たりをしにくい。

 奥歯を噛みしめて、それから蘭は静かに言う。

「…すぐに向かうわ」

『頼む。戦闘員も一緒に向かうから。準備が出来次第エントランスの前で待機していてくれ』

 それっきり柊の声が聞こえなくなった。

 たった数分歩けば、エントランスに到着した。まだ車は来ていない。エントランスの壁にもたれかかって、蘭は唇を噛みしめる。

 支度なんて必要ない。いつだって戦える用意はしてある。出来るならこのまま駆け出して、町に向かいたいくらい心が焦っている。

 戦闘員を待つ時間が惜しい。今すぐ町に行って戦いたい。柘榴や希より絶対に蘭の方が戦う気持ちも負けないのに戦えない、悔しい。

 柘榴や希はただの一般市民で、戦いなんて知らない平和ボケの能天気な二人。今まで蘭がラティランスと戦うために失くした、家族も友達も、それらを全て持っている二人。

 蘭とは全然違う。

 恐れる必要なんてないはずなのに、どこか二人とも得体の知れない力がありそうな気がする。 

 戦闘員が来るまで、蘭はどうしようもない感情を持て余して靴を鳴らし続けた。



 崩壊された町。怪我した人々。その中でも最初に蘭の瞳に映った、二人の少女。

 二つに結んだ髪、見なれない制服、その手に光る矢と年季の入った弓。その少女が弓を射た途端、見事に宝石を破壊する。

 そして、その囮となって立ち向かう、もう一人の少女。

 肩まで伸びた髪が、綺麗になびき、身体中から血を流している。それにも関わらず、笑って真っ直ぐに突き進んだ少女が持つ、真っ赤に燃える日本刀。

 柘榴と希。見事なコンビネーションを見せつけられた。

 ラティランスが砂と化す。蘭がいなくても、二人だけでもラティランスを倒してしまったという事実。

 柘榴と希が蘭を浮かべて、笑みを見せている。その笑みすら憎らしい。蘭はすぐさま踵を返し、組織の車の中に戻った。



 結局戦うことなく不貞腐れた蘭が本部に戻って来ると、エントランスで待っていた柊が片手を挙げて出迎える。全ての状況を知っている顔。

「お、帰って来たな」

 蘭の無傷の姿。けれどもその表情から、触れてはいけない雰囲気を醸し出す。蘭は柊に向かって問う。

「あの二人はどうしたの?」

「ああ、柘榴くんと希くんなら今は医務室だ。希くんは掠り傷なんだけど、柘榴くんは出血が多くて今は眠っているはず――」

「そう」

 柊の言葉を最後まで聞かず、蘭は歩きだす。

 一分でも一秒して、訓練してあの二人より多くのラティランスを倒す。次の戦いが起こったのなら、その時は絶対に後れを取らない。

 その想いだけが、蘭を動かしていた。



 蘭の姿が見えなくなってから、柊は大きく溜め息をついた。

 あの様子ではこれから訓練室にでも籠るに違いない。三年前から一人になりたくなると、訓練室に籠る癖のある蘭。柊にとっては変わらない、その姿。

 変わったことと言えば、柊と少し話をするようになったことかもしれない。

 誰も信じず、一人で戦おうとする。戦闘員がいようといまいと関係ない。蘭の目に映るのは周りの光景じゃない。

 ラティランス、という敵だけである。

 だから、柘榴や希の登場で一番喜んでいたのは柊かもしれない。二人の存在が、蘭を変えてくれるような気がしていた。

 すでに二週間が経過した今でも、その考えは変わらないが、まるっきり進展がない。

 時々、思う。

 三人の中で最初に命を落とすとしたら蘭ではないか、と。

 柘榴には家族がいる。希は守る力に長けている。

 それに比べて蘭は自分の身など顧みずに戦い続ける。そんな蘭が誰かと仲良くなれるとしたら、同じ力を持つ柘榴と希だけだと柊は考えている。

 人と近づき、自分の命の重さを知って欲しい。

 柘榴も希も蘭を遠ざけたりするような人間ではない。柘榴に至ってはむしろ蘭と顔を合わせれば、言い争いを繰り返す始末である。

 この短い間で柘榴が水を掛けられていたのは何度か見かけたし、希は蘭に挨拶をすることを欠かさなかった。他の人たちが接するように蘭を無視したり、批判したりするような目で見たりすることは決してないということに、蘭は気が付いていない。

「…柘榴くんと希くんに頼んでみようかな」

 蘭と仲良くするように頼む。

 そんなことをしたら蘭に怒られるのは目に見えているが、このままの状況は良くない。非常に良くない。

 どうするべきか、柊は一人考え始めた。



 次の日の朝。

 蘭は柊に呼び出されて、本部の中の一室、訓練室にいた。

 いつも使用している訓練室ではない。部屋の中には三つの机と椅子。集合時間は八時。その十分前というのに、部屋には誰もいない。

 特に表情を浮かべないで、蘭はそのまま窓際まで行く。

 用件が終わればすぐにでもこの訓練室から出て行くつもりで、ここへやって来る人物を待つ。命令、と言われて逆らうつもりはないが、早く出たい。

 五分くらい経った頃だろうか。ドタバタと足音が近づいて来た。

「柘榴さん!怪我人なんですから、走らないで下さい」

「そんなこと言っていたら、時間になっちゃうよ!」

 勢いよく開けられた扉、蘭を見るなり柘榴の表情が固まったかと思うと、扉がすぐに閉められた。

 廊下にいるはずの柘榴の声が、部屋の中にいても聞こえる。

「間違いなく。この教室はいつも使っている訓練室だよね!」

「どうしたのですか?いきなり扉を閉めて、何かありましたか?」

 不思議そうな希の声。どうやら希は蘭が中にいるのが分からなかった様子。ゆっくりと開かれた扉、希も蘭を見るなり驚くが、すぐに笑顔を浮かべた。

 人にあまり笑顔を浮かべられたことのない蘭は、そんな風に笑えない。

「おはようございます」

「…は?」

「挨拶です。ほら、柘榴さんも挨拶しましょうよ」

「おはよーございますー」

 あからさまに嫌そうな声。不本意から挨拶をしているとしか思えない。柘榴と希は当たり前のように椅子に座る。小さい声で内緒話をされても、その会話は何となく聞こえる。

「なんで、いるの?」

「さあ、それは私にも分かりませんが」

 柘榴が一瞬、蘭を見て目が合う。反射的に睨み返す。これで怖がって視線を外すかと思ったが、逆に睨み返した柘榴。

 さすがに何度も顔を合わせるたびに水浸しにしているので、これで怯える柘榴ではないのは蘭も承知している。だから喧嘩腰で、蘭は言う。

「何よ、今日も水浸しにしてあげましょうか」

「そっちがその気なら、私は丸焼きにしてやる」

 火花を散らし始めた蘭と柘榴に、希だけが肩を小さくして二人の間に入る。

「まあ、まあ。お二人とも落ち着いて」

 希にそう言われると蘭は引き下がるしかない。

 そもそも、希にだけは蘭の水は効かない。蘭が水を呼び起こしたところで、希の風がそれを阻んで周りに被害が出るか。蘭に戻って来るだけだ。

「…」

「蘭さん、眉間に皺が寄っていますよ?」

 無言で睨んでも希はそれを気にしないのだ。

 にっこりと笑いかけられると、蘭の方が逃げたくなる気持ちになる。

「お前ら全員揃っているな。訓練始めるぞ」

 時間丁度にやって来た柊。そのいつもと変わらない姿は、蘭を苛立たせる。いつも通りに柘榴と希は自分の席に座って柊の指示を待つ。

「それより、柊さん。私をここに呼び出した理由は何?用がないなら、すぐにでも訓練に行くわ」

「用ならあるからさ、蘭ちゃん。これから三人で訓練をすることにしようと思って。とりあえず、空いている席にでも座ってくれ」

 柊が指し示したのは、空いている窓際の席。柘榴の隣。

「どうして―」

「これは命令だ」

 命令という言葉に、言いかけた言葉を飲み込む。従わないわけにはいかない。

 腹いせに思いっきり音を立てて、椅子に座る。その様子だけでも、どれほど蘭の機嫌が悪いか伝わった柊は肩を竦める。

「まあ、ということなんだ。柘榴くん、希くん。それでいいかい?」

 驚きすぎて声の出ない柘榴、素直に頷いた希。柊は満足そうに頷いた。

「よし、じゃあいつも通りランニングから始めるか。各自、グラウンドに集合だ」

 明るい柊の掛け声で、柘榴も希も動きだす。最初に柊が姿を消す。けれどもなかなか立ち上がろうとしない蘭。

「あの、一緒に行きませんか?」

 無邪気な表情の希に話しかけられ、思いっきり睨む。誰があんた達と、と言いたげな顔を浮かべた蘭の肩に、希の腕が伸びる。

「ね、一緒に行きま「触らないで!」――」

 触られる直前に、椅子から立ち上がると同時に希の手を振り払う。あまりの勢いで床に倒れる希。

「希ちゃん!大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」

 へらへらと笑い、起き上がる希を柘榴が支えた。どうしてそんな風に笑っていられるのか、分からない。叩いた右手が、どうしてだか痛む。

「希ちゃんに、謝って」

 ゆっくりと、立ち上がった柘榴が蘭の目を見て言い切った。その揺るがない瞳。真っ直ぐに蘭を見て、一歩ずつ近づいて、あと少しで手が届くという距離で止まる。

「希ちゃんに謝って」

 もう一度繰り返す。希が大丈夫だと、柘榴に言っても聞いていない。振りほどいた腕を押さえながら、蘭は冷静を装って言う。

「私が謝る理由はないわ」

「希ちゃんを転ばせたのに、何そんなこと言っているわけ?」

「そっちが勝手に転んだのでしょ」

 どうあっても謝る気のない蘭の言葉。悪いとも思っていない、その姿に柘榴は我慢できなかった。蘭が反応するよりも早く。一歩踏み出した柘榴の右手は、思いっきり蘭の頬を叩いていた。

 パン、と鳴り響く音。

「った!」

 何が起こったのか、何をされたのか。理解するのに数秒を要した。柘榴の右手は宙にあり、右手と柘榴の顔を交互に見る。

 左頬が痛い。少し熱を持ったように、じわじわと痛みを感じた。

「何するのよ!」

 柘榴はゆっくりと右手を下ろし、蘭を見据えた。驚いた蘭とは対照的なほど、落ち着いた柘榴の顔。

「私はやられたらやり返すから。でも、自分が悪いなら謝ろうとは思うの。だから、ごめんなさい」

 心から詫びる声。頭を上げて柘榴の言葉は続く。

「蘭ちゃん。誰かを傷つけて、謝らないのは間違っている。絶対に間違っているよ」

「柘榴さん…」

 まるで諭すような言い方。希は申し訳なさそうに、柘榴を見つめている。

 間違っている、その言葉が蘭の中でぐるぐる回る。

 ずっと、こうして生きてきたのに。出会ったばかりの柘榴に叱られた。

 間違っている、その言葉はまるで今までの人生を否定されたようだった。

「おい、お前らいつまでここにいるんだ?」

 訓練室の扉から顔を出した柊。その異様な空気に首を傾げ、不思議そうに三人を見まわした。

 居た堪れなくって、最初に駆けだしたのは蘭だった。

 扉のところにいる柊を押しのけ、そのまま走り出す。目的地なんてない。ただ、がむしゃらに走りだしていた。

 間違ってなんていない。

 そう自分に言い聞かせてひたすら走る。いつもなら蘭しか使わない訓練室にいるが、生憎訓練室は走っている間に通り越してしまった。戻るつもりは、ない。

 走るのを止められない。

 間違ってなんていない。

 誰も蘭の言うことに口出ししたり、叱ったりすることなんて今までなかった。それなのに、どうしてやって来たばかりの柘榴と希は蘭のすることになすことに口を出し、手を出すのだろう。

 無視してくれればいいのに。

 慣れ合うつもりなんてないのに。

 蘭のことを無視して、二人ともいなくなればいい。

 巻き込まないで、一人で大丈夫だから。これ以上心に入って来ないで。

 何かを期待すればするほど、それが叶わないものだと気が付いた時に辛い。望んでもいない力を手に入れて、誰かに絶望するのは嫌だ。

 父親の時のように、拒絶されたくない。

『もしもーし、蘭ちゃん。聞こえているかい?』

 突如、聞こえたのは通信機から聞こえる声。蘭の心情なんて全く知らない柊からの通信に、ようやく足を止めることにした。

「…何」

『ラティランスが現われた。今からヘリで向かう。すぐにエントランスまで来てくれ』

 緊迫した声に変わり、蘭は息を深く吸った。今は倒さなければいけない。柘榴や希のことなんて頭から追い出して、ラティランスを倒すことだけ考えればいい。

 戦っている時だけが、蘭は蘭らしくいられる。

「すぐに向かうわ」

 要らない思考は頭の隅に追い出す。蘭は即座に方向を変え、一目散に駆けだした。


 いつもは蘭だけが乗るヘリコプターに、先に乗っていた人物。柘榴と希。

 不機嫌そうな蘭の顔を見るなり、顔を背けた柘榴は未だに怒りを抑えられていない。逆に頬笑んでみせた希に、蘭は居心地の悪さを感じた。

 柘榴も希も同じ運動服を着て、蘭の白い制服はまるで仲間外れ。

『三人とも聞こえるか?』

 ヘリコプターの音に掻き消されないように、蘭は両手でヘッドフォンを抑える。柘榴と希にも聞こえたようで、同じように音を聞き逃さないように、耳を押さえた。

『ラティランスを倒した後には、必ず宝石の塊がある、と言うことが前の戦いから続いている。今回もその回収を忘れるな。数分で着く場所に、ラティランスは一体。長さ五メートル程、形は巨大イカ、またはクラーケンと見て問題ないだろう。近くの村に被害が出る前に、支部の戦闘員が対戦中』

 次々と告げられる戦況を聞きながら、戦いを頭の中でイメージする。クラーケン、その足に巻きつかれたら逃げるのは厳しくなる。注意しなければならない。

 蘭のイメージの中に柘榴も希もいない。

 戦うのは一人、蘭だけだ。いつだって、そうして来た。

『あと三分だ』

「私は先に飛び降りるわ」

 蘭の言葉に、柘榴も希も目を見開く。通信機を通して、蘭の言葉ははっきりと聞こえたに違いない。

『蘭ちゃん、今日は戦闘員がすでに対戦中だ。柘榴くんと希くんは飛び降りる訓練もしていないのだから、三人一緒に――』

「いつも通りに行くわ。先に飛び降りる」

 蘭はシートベルトを取り、勝手にヘリコプターのドアを開けた。ヘリコプターの中に突風が入る。運転席とは一枚の壁を挟んでいるから運転に変わりはない。

 けれども一緒に座っていた柘榴と希はもろに風を受ける。

『ちょ、何!』

『あ、蘭さん』

 ドアの先。地上にいる黒いラティランスは、確かにイカのように見えた。身体の半分は海の中に隠し、戦闘員が村に近づけないように、戦う。

 段々とクラーケンに、浜辺に近づく。地上までの距離はおよそ、数メートル。

 あと一分。

 そうすれば、ラティランスのすぐ傍にヘリコプターが下りるだろう。でもそれを待つ蘭ではない。

 蘭の瞳には、倒すべき敵の姿しか映っていなかった。

 「ラティフィス蘭、行くわ」

 数メートルという距離があったにも関わらず、蘭は躊躇うことなく飛び降りた。

 何度も繰り返したことだけに、怪我無く着地出来た。

 少し走ればすぐに目的地。

 戦闘員の一人が蘭に気がつき、そこから一気に道を開ける。誰も蘭を止めようとはしない。蘭の通る道を、さっと開ける。

 いつものこと。ラティランスと戦うのは、蘭の役目。

「エグマリヌ」

 走りながら、蘭の声と共に青い剣が姿を現す。柘榴の焔のような、希の風のような力はない。それでも戦わなければならない。開けられた道を一気に進む。

 一人で十分だ。いつだって一人で戦って来た。

「さあ、壊れなさい」

 声に出して言えば、力が湧く気がした。剣を構えて、クラーケンを睨んだ。



 柘榴と希が目的地に着くと、すでに蘭と巨大イカ、クラーケンとの戦いは始まっていた。

「すごい」

 柘榴から漏れた声は素直な感想。敵に向かって、幾度となく繰り返される攻撃。クラーケンの動きを読むように、攻撃を避けては、小さくもダメージを与えて行く戦い方。確実に傷が増えていく。

 最初の戦いの時のように、蘭の動きに無駄がない。

 その姿はとても綺麗だった。

「君達は何をしている!」

 蘭の力になろうと、駆けだそうとした柘榴と希を呼びとめる声。すぐ近くにいた戦闘員が、突然現れた少女達を怪しげに見る。

 戦闘員と違うが、組織の運動服姿の柘榴と希に周りは言う。

「誰もここから先には進めないのは知っているだろう!」

「「戦闘員も」ですか!」

「なんだ。お前ら新人か?ラティフィスが現われたんだ。俺らの出番はない」

 確かに戦闘員の人達は武器を下ろし、距離を置いている。蘭が一人戦っているだけ。

「一緒に戦わないのですか?」

 希が思わず訊ねる。まさか、このままいなくなったりはしないだろうが。

「戦う?何を言っているんだ。あんな化物の戦いに普通の人間は入れないよ」

 化物、はっきり聞こえた言葉に柘榴は拳を握りしめた。希もその言葉に眉をひそめて、唇を噛みしめる。

 なんとなく、柘榴にも分かった気がした。蘭が周りを寄せ付けないわけが。

「ほら、さっさとここから退避――」

「グラナート!」

 戦闘員の言葉を遮り、柘榴は叫んだ。焔が立ち上り、他の人達も何事かと柘榴達を振り返る。

 焔の中から現れた日本刀を握り、その刃先を戦闘員の首に当てた少女。

「柘榴さん!」

「訂正して、蘭ちゃんは化物なんかじゃないって」

 柘榴の迫力に押されてか、恐怖のせいか、戦闘員は何度も首を縦に振る。

「分かった。訂正するからそれを下ろしてくれ!」

 あまりの恐怖に震えた声。柘榴はその言葉を聞いて、ゆっくりと日本刀を下ろす。

「もう一度、また化物呼ばわりしたら。今度はこれくらいじゃ済まさないから」

 捨て台詞を言い、戦闘員に背を向けた。脅された戦闘員の方も気になるが、今は柘榴を追わなければと、希は一礼をしてすぐに駆ける。

「ちょっと、何笑っているの?」

「だって、柘榴さんがあまりにもかっこよかったものですから」

 柘榴の隣を歩きながら、希は笑いかけた。照れているのか、柘榴の顔が少し顔が赤い。

 柘榴の言葉はもっともだと希は思った。もしも、化物だと認めたら自分達もそれに分類される。それは違う、絶対に違う。

「行くよ。希ちゃん」

「はい。スマラクト」

 希も弓を出すと、顔を合わせた二人は一気に駆けだした。



 何度攻撃をしても、長引けば体力が限界になる。

 浜辺という場所が戦いに向かない。砂に足を取られれば、攻撃を避けるのさえ難しくなる。足が取られる。それでも攻撃を止めるつもりはない。

 海に潜られては攻撃しにくいと思い、砂浜まで全身を出すことは成功した。けれど、クラーケンという生き物の形を取っているからか、上手く攻撃が当たらない。周りの表面を傷つけて、本体に大きなダメージを与えられていない。

 さっき一瞬だけれど、焔が見えた。柘榴と希が到着したのだと、悟る。それが逆に蘭を焦らせた。

 早く、早く倒さないと、また柘榴にラティランスを倒される。

 焦りが増すにつれ、思うように動けなくなる。

 ほんの少し動きが鈍くなる。

 戦いの最中に、余所見をみてはいけない。そう分かっていても、蘭はどうしても振り返りたかった。

 二人はきっとラティランスに向かってくる。そう確信したのは、いつだっただろうか。最初に会った時、それとも昨日だっただろうか。

 柘榴と希は決して逃げない。

 少し考え事をしたせいで、砂の中に足が埋まった。その隙をつくように、クラーケンの足が蘭に向かって迫る。避けるのはきっと間にあわない。

 すぐさま、迫りくる攻撃を受けようと剣を構えた。

「行け―――!」

 聞こえてきた声に思わず蘭の視線がクラーケンから、右横にずれる。剣を構えたまま、それでも飛び上がった影はクラーケンの足に向けて、日本刀を一気に振り下ろす。

 切り落とされた足に焔が乗り移り、灰となる。クラーケンは怒り狂うように、海の中に戻ってしまった。

「な、何してくれるのよ!」

 その姿が見えなくなった。どこにいるのか分からなくなってしまった。

「あ、ごめん」

「謝って済む問題じゃないわよ!」

 折角砂浜まで引き上げたというのに、これでは台無し。

 柘榴は日本刀を下ろし、倒すべきクラーケンの姿を探そうとするが、見当たらない。蘭も同様に周りを見渡すが、いない。

「柘榴さん、蘭さん。少し動かないで下さいね」

 少し離れた場所にいた希が、呑気にそう言うと、真っ直ぐに海を見据える。何を考えているのか、数秒考えたのち海に向かって矢を射る。

 風を纏った矢は一直線に柘榴と蘭の近くを通り過ぎると、そのまま海に飲み込まれることもなく、海を切り裂いた。

「な――」

「おお、流石希ちゃん」

 言葉を失う蘭。感心している柘榴は、切り開かれた海に足の一部を見つける。クラーケンの足の一本に矢に当たったようだ。

「みっけた」

「ちょっと、待ちなさい!」

 蘭の静止も聞かず、飛び出そうとした柘榴の服を反射的に引っ張る。

 首元を思いっきり引っ張られて、止まるしかなかった柘榴は涙目で蘭の方を見る。

「っく、首が…」

「後先考えずに勝手に行動するんじゃないわよ!」

「…えー」

 本能で戦おうとする柘榴は、考えることをあまりしない。希は少し考える素振りを見せながら、蘭と柘榴に歩み寄る。

「不思議、ですね?」

「何が?」

 柘榴が問えば、希は言う。

「クラーケンさんの足が増えていませんか?」

 希が心底不思議そうに言ったので、蘭と柘榴は同時に海を見て目を凝らす。最初に足は六本あった。今は数が増えて、八本。

「嘘、でしょう?」

 信じられない蘭を他所に、希はもう一度弓を引いて、矢を射た。

 もう一度クラーケンの足に命中した希の矢。その足は破壊されたかと思うと、二本に分かれて再生した。最初に柘榴が足を一本、それから希が二本。

 合計三本足が増えてしまった。

「うわぁお。増殖?」

「みたいですね。下手に足を攻撃しない方がいいみたいですよ」

「えぇー、でも足を破壊しないと近づけないんだよねー」

 軽い口調で会話をする柘榴と希の様子に、蘭は呆気に取られた。

「希ちゃん、どうする?」

「足を破壊しないように痛めつけるしかありませんね」

「だよねー。じゃあ――」

 何か作戦を考え始める柘榴と、その横で同じように考え始める希。このまま二人を相手にするつもりはない。二人がいると足手まといにしかならない。

 もう無視しようと、二人に背を向けて蘭は歩き出した。

 さっさと、いなくなれ、と願う。

 邪魔をするな、とも。

 いつだってそう願っていた。

「えいっ!」

 掛け声と共に、笑顔の柘榴が蘭の頭を叩いた。予想外の行動に、反応が遅れた。軽く叩かれた頭に驚いて、その表情で柘榴を睨んだ。

 笑う柘榴。それから、何故か微笑んでいる希。蘭は、わなわなと身体が震えた。

「何するのよ!」

「…思わず、ね?」

 蘭が怒っているにも関わらず、頬を掻きながらへらへら笑う柘榴の姿。

 右手に持っている剣を握る力が無意識に強くなる。

「あなたね――」

「蘭ちゃんは、もう仲間でしょ?一緒に作戦考えようよ」

 腹から出た低い声を遮り、柘榴は明るく言う。

「例えば今まで一人で戦ってきたとしても、これからは私達がいる。蘭ちゃんみたいに戦いに慣れているわけじゃないから、足手まといになるかもしれないけど。それでも、一緒に戦えるんだからさ」

 真っ直ぐに蘭に向かって紡がれる柘榴の言葉に、一歩下がりたくなる蘭。それでも、下がることは、背を向けて逃げ出すことはプライドが許さない。

 柘榴の声はあまりにも真っ直ぐだった。真っ直ぐ過ぎる言葉は、蘭の心に響く。

「仲間…?」

 小さな声で、その言葉を繰り返す。

「そう、仲間。友達でしょ」

 仲間なんて、いなかった。

 友達なんて、出来るはずがなかった。

 周りは蘭を遠ざけた。訓練生の時だって、周りはライバルで、例え近くで誰が倒れようと敵を倒すことだけ考えろと教わった。

 ラティフィスになってからは、蘭と周りの壁はもっと大きくなった。

 嫌悪、恐怖、恐れ、そんな感情の瞳で見られては、蘭は一人になるしかなかった。一人でいることで、今の自分を保てていた。

 守りたい人が出来るほど、人は弱くなる生き物だから。そう思っていたから。

 どうして、この人はその壁を越えて来ようとするのだろうか。

 どうして、こんな人間と向き合おうとしているのか。

 どうして―――

 それ以上考える前に蘭の瞳から涙が流れた。

 柘榴の手が放れ、蘭の顔を覗き込む。

「蘭ちゃん?」

 涙が止まらない。

「…化物なのに?」

 思わず口から出た言葉は、蘭がずっと言われ続けた言葉。

 化け物だ、て。

 人じゃない、て。

 呪いのように、人との距離を取ることになったのは、間違いなく誰もが蘭を見て言った、言葉の数々。

 そう言われ続けて、蘭の周りの人間はいなくなった。例外は、柊と洋子、結紀と大輔ぐらいだろう。蘭と一緒にいれば、同じような境遇になると言うのに。食堂で働いている大輔に至っては、本人の趣味の影響が大きくて人が避けるので、蘭のせいだけではないが。

 柘榴と希をそんな目に合わせるつもりはなかった。

 それ以上に本当は、怖かった。

 人に嫌われることを嫌うのが人間の性で、柘榴や希だって仲良くなったところでいつかは離れていくのが怖かった。蘭と同じ力を、ラティランスと戦う力を持っていても、性格も家庭環境も真逆の二人がいつかは蘭から離れる。

 いつかは離れるのなら、最初から突き放してくれた方がよかった。

 そう、思っていたのに。 

「化物なんかじゃありません。私も柘榴さんも、もちろん蘭さんも」

 そう言った希は蘭を優しく抱きしめた。母親のように、あやすように蘭の背中をさする。

 どれだけ蘭が冷たく接しても、希は蘭に笑いかけてくれた。

「そうだよ。だから、これからは一人になっちゃダメ。絶対ダメなんだから」

 満足そうな笑みを浮かべた柘榴は蘭の頭を撫でながら笑う。どれだけ睨んでも、水浸しにしても柘榴はめげることなく蘭の前に現れた。

 誰かと触れ合うのはいつぶりだろう。

 右手に力が入らなくなり、剣が消える。

 もしかしたら、柘榴と希が蘭を無視する日が来るかもしれない。蘭を嫌いになる日が来るかもしれない。それでも、振り解けない。

 怖いけど、本当はいつだって人を信じたかった。それを認めたくなかった。

 涙が止まらなかった。



 涙が止まる。

 真横から喰らった液体は、真っ黒な墨。クラーケンの吐いた黒い墨のせいで、三人の全身が真っ黒に染まった。

 ようやく今の状況を思い出す。蘭の頭から手を離した柘榴が立ち上がって、呑気に言う。

「今、いいところだったのに」

「まあまあ、早く倒して基地に戻りましょう」

 そっと蘭から離れた希は、顔にかかった墨を拭った。柘榴は日本刀を、希は弓を構えて蘭を守るように前に立つ。

 誰かの背中を見つめるのは、誰かに守られるのは、初めてだ。

 一人じゃない。

 少しだけ、頼ってみよう。

 信じられる人、信じてみたいと思わせてくれる人は、今までいなかったから。

「エグマリヌ」

 静かに響いた蘭の声に答えて、姿を現した青い剣。少しいつもと違う、その姿は最初に出逢った時の姿で、水を纏っていた。

 その美しさ、水は消えることなく剣に纏う。

 力が湧き上がる気がした。

 剣を見つめ、強く握りしめる。二人の間から前に出て、クラーケンを見た。

 今まで与えた攻撃がなくなっているように感じるけれど、そんなこと関係ない。一人じゃないから、今まで以上の力を得たから、きっと負けない。

「行くよ」

 柘榴の掛け声に希は頷いた。クラーケンはその半分を海に隠している。顔だけ海から出して、蘭達を真っ黒な宝石の瞳で見つめた。

 ムラがなく深みのある青い地に、黄鉄鉱による金粉の模様が点在する輝きが、その瞳の奥にある。

 それぞれが武器を構えると同時に、柘榴が叫びながら駆け出す。

「先手必勝!」

「あ、柘榴さん!作戦とかは?」

 人の話を聞かない柘榴に、希の声は届かない。

 人には頼れと言いながら、勝手に攻撃を開始し始めるのはどうなのか、と呆れている蘭の隣で、希が申し訳なさそうに言う。

「仕方ありませんね。柘榴さんを援護するので、隙を見て蘭さんが止めを刺していただけますか?」

 すでに柘榴は勢い任せに戦い始めているので、相談している暇はない。

 希の手にしている武器を確認して、蘭は首を横に振った。

「…私が柘榴と一緒に隙を作るわ」

「そう、ですか?」

 今までなら、間違いなく止めを刺す役割を誰かに譲るつもりはない。でもさっきの攻撃から考えて、希が加減をして攻撃出来る気がしない。

「止めは希に任せるわ、どう?」

 視線を外し、小さな声で言った。その言葉に、希は嬉しそうな声を出す。

「はい!絶対に外しません!」

「…じゃあ、頼んだわ」

 喜んで微笑んでいる希の顔が眩しすぎて、逃げるように背を向けた。



 柘榴の攻撃は、基本単純。ラティランスの、クラーケンの頭目掛けて真っ直ぐに立ち向かい、攻撃を仕掛けては反撃されて、それをギリギリで避ける。

 その攻撃の合間に、蘭も加わってクラーケンに攻撃をさせる暇を与えない。

 柘榴と蘭の攻撃を見ながら、遠く離れた浜辺から援護する形で、希は矢を射た。

「すぐに回復されちゃいますけどね…」

 ひっそりと呟いた言葉は誰に聞こえることはない。確実にラティランスの力が弱まっているのを確認してから、タイミングを計って力を溜める。

 柘榴と蘭は足を破壊しないように、注意をしながら攻撃を繰り返している。

 希が狙うは、ラティランスの黒い宝石のような瞳、その奥。夜空のような色をした輝き。

 息を吸い込み、矢を引いて止める。光が集まってくる。

 もっと、もっと光を集める。

 希の矢がラティランスを切り裂くように、海をも巻き込んで全てを貫くように。

「「希」ちゃん!!」

 柘榴と蘭の声が重なる。

 その声が聞こえると同時に、希は溜めた力を解き放した。



 一直線。光が柘榴に向かってくる。

「あれ、なんかやばそう」

 希の矢は放たれた途端感じたのは、光が迫ってくる恐怖。柘榴は本能的に悟る。近くにいたら、巻き込まれる。

「蘭ちゃん!回避!!!」

 柘榴が叫ぶ。蘭も危機を感じたのか、出来る限りの距離を取るのが見えた。

 光が全てを飲み込む。光と海の間に柘榴も蘭も吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされた、と感じた瞬間には今度は海に頭から落ちた。幸い、飛ばされたのは先程までいた場所より沖合。怪我することなく海水の中に落ちた。

「ぶはっ」

 顔を出した柘榴。蘭の姿を見つけた。クラーケンの両目は一直線に矢で貫かれ、その姿が砂となって風に舞う。

「倒したんだ…」

 クラーケンを倒した。その事実は嬉しい。思わず海の中を泳ぐ。泳いでいる途中で、海の中に沈もうとしていた宝石の塊を見つけた。

「発見!」

 潜って宝石を抱えた柘榴が叫ぶと同時に、柘榴の真上に水が降り注いだ。海水じゃない、これは毎度お馴染みの突如現れる、水。

 蘭は何食わぬ顔で浜辺に泳いでいた。

 一瞬だけ見えた顔は笑っているように見えた。

 これからは、蘭と仲良くなれる。そう確信して、柘榴は蘭を追いかけるように泳ぎ始めた。



 砂浜に着くと、疲労感が全身を襲う。ラティランスを倒したが、服は海水を吸って重たい。

「びしょ濡れじゃない…」

 まだ寒い季節ではないとは言え、このままでは風邪を引いてしまう。

 毎度人をびしょ濡れにしていたが、される立場に立つとこうなるのか、と少し反省する。毎度毎度、よくびしょ濡れになっても柘榴は笑っていたものだと、感心してしまいそうだ。

 両手で出来る限りの海水を絞る。

 濡れていることは変わりがない。それにも関わらず、柘榴はそのまま遊び始めるし、希も服に付いた墨を落とすため、海水に飛び込んで柘榴と遊んでいる。

 子供か、と。そう思えば蘭より年上のくせに、濡れるのなんかお構いなしに遊んでいる。先程までクラーケンがいた場所なのを、忘れているのだろうか。

 放っておこう、そう思って歩き出す。

「蘭ちゃんも遊ぼうよ!」

 後ろから呼び止める柘榴の声。

 うんざりした顔で振り返れば、満面の笑みを浮かべた柘榴と希が手招きする。

「…帰るわよ」

「えー、ちょっとだけでも遊ぼうよ」

「か、え、る、わ、よ!」

 もう一度強く言い切って、蘭は背を向けて歩き出す。

 これ以上この二人の傍にいたら、今までの自分ではいられないような気がした。

 この二人はきっと蘭を拒みはしない。分かってはいるが、今はまだ駄目だ。そう簡単には馴れ馴れしく出来ない。

「ちょ、本当に置いて行くの!」

「柘榴さん、急いでください。置いて行きますよ」

「希ちゃんまでそんなこと言わないでよ!置いてかないで!」

 騒がしい柘榴と希の笑い声が後ろから聞こえる。呑気な声、戦っている時とは打って変わって明るく楽しい声。

 こんな二人だから、蘭を受け入れてくれたのかもしれない。組織にいた人間なら、蘭を受け入れることなんて決してない。ずっと、そうだったのだから。

 でも、この二人なら。

 信じてみよう、と思う。

 僅かに微笑んでいた蘭の後ろで、柘榴と希は大急ぎで蘭を追いかけた。





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