世界観と旅の初め
世界観、凝ってるなー。
げんなりしないで。
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話は変わるが、この世界は二つの大陸に六つの地区がある。周りは海に囲まれ、島がいくつかあるらしい。
国といってもいいのだが、治めている人は王ではなく、領主なので、あくまで国ではなく、地区とよんでいるらしい。
しかし国境という言葉は存在するのだから、国でいいではないかと俺は思う。
そしてカンジャーリス協定というものを結んでいる。
数千年前から戦が絶えなかったこの世界で、約千年前に初めて協定が結ばれた。今でもそれは守り続けられている。
内容は、協定により、大陸の最北端同士だけが貿易をおこなって大陸をつなぐ役目がある。
新しい統治者は必ず各地区に報告すること。これは下剋上がたびたびあるからだそうだ。
内政には干渉しない。
各地区の統治にかかわる犯罪は島・ジェントート島で統治者が集まり、裁く。
その他は各地区の自主性に任せられる。
二つの大陸のうち、一つがユート大陸。ここはヨーロッパ中世のような雰囲気がある。
一つ目の地区はバーデ。父上が統治するユート大陸の最北端に位置する。ここは隣の大陸の最北端ミヤを結ぶ貿易拠点になる。もっとも治安がよい地区らしく、バーデは約八百年以上そこを統治し続け、民に愛されている。
難点といえばただ、土が悪いらしく、作物などはさっぱり育たならしい。
海が安定して穏やかなので、貿易を任されるようになったとか。
漁業もしているらしい。
バーデの前に三回くらい下剋上があったが、乱れた治世は続いき、バーデによって終結した。
バーデの下はガーダン。牧場が数多くあり、乳製品や肉類などは主にここから輸入する。バーデとは仲が悪く、治安も悪い。下剋上は何度もあり、ここ百年は落ち着いているが黒いうわさが絶えない。
独裁的な人が治めているらしい。歴史の中で今が最もバーデと仲が悪いと言われている。
三つめはガーダンの下、ユート大陸の最南端にあるグダリム。農耕が盛んで、世界で最も大きい地区といわれている。
ここで世界中の人の食べ物を育てている。
ここは鎖国的で、あまり情報などが流れてこない、謎の地区となっているらしいが、統治者は約五百年前に報告されて以来変わりはないらしい。
ユート大陸の隣はサルディア大陸。
アジア、アラビア系の人が多く、貧富の格差が激しい。
作物などは全く育たない環境で、主に工芸品などの技術で繁栄してきた大陸である。
最北端に位置するのはミヤ。バーデと大陸をつなぐ地区である。民族が集合していて成り立っている。話を聞いたところ、日本の文化に近い地区らしい。
統治者は領主が治めているのではなく、長とその一族が治めているらしい。長が絶対的な国である。
そのため、バーデと同じく歴史が古く、約千年にわたる統治をしている。下剋上はないが、長の一族で内部分裂が多発している。礼儀を重んじ、龍巫を神聖なものとしてあがめている。
サルディア大陸の最南端はアービャン。世界で人口が最も多い地区であるが、砂漠地帯であるため実りもない。
人口が多いことを生かして、労働力として各地域に派遣して成り立っている地区である。鉱物などが多くが発掘される。宝石も発掘されているがそれは売られずに地区の貴族や権力者たちを飾り付ける。アラビア系の褐色の肌の人が多い。
サルディア大陸の中央・シェンカ。ここは世界最大の市場で商人たちの拠点である。サルディア大陸は、ユート大陸に比べ二倍くらいの広さを持つ大陸である。貿易拠点がここでないのはここが、シェンカができたことで、サルディア大陸の物資の流れが改善されたといってもいい。
約百年前に商人があつまりできた地区であるため、治安も悪く統治者もいない。 ガーダンが今の地区を収めると同時にできたような地区で、密輸や人身売買など、黒い噂も絶えない。
バーデはガーダンから乳製品、肉類、グダリムから作物を輸入して、サルディア大陸・ミヤに輸出している。
ミヤからシェンカに物資はわたり、ようやくサルディア大陸全体に行き渡る。
逆に、シェンカを経由して、サルディア大陸の工芸品などがミヤに行き、ユート大陸に渡って、バーデからガーダン、グダリムにわたる仕組みになっている…らしい。
これが今の世界状況。
なぜこのような話をしたのか、理由は父上に殺されかけたことがきっかけである。
曰く、あれは殺そうとしたわけではなく訓練。…らしい。バーデ家恒例の風景らしい。マリアさんが教えてくれたが、父上も、俺の爺さんに当たるひとに叩きのめされていたと笑って語ってくれた。…魔王をたたきのめせる人ってどんな人だ?大魔王?今はどこかで隠居生活を送っているらしいが、便りもないので死んでいるかはわからないらしい。が、みんな、あんな人がそうそうくたばるわけがないと断言していた。…じいさん、孫が生まれても顔を見せないのは…いや、考えないでおこう。
訓練のとき、本当にうれしい偶然というべきか三歳児には少々太く、少々重く、少々長い木の枝があったので、それを武器にして父上の攻撃をはじき、逃げ惑っていた。
俺は前世剣道部である。某漫画の銀色の侍の惚れたことがきっかけであった。それから剣術を習おうと思い、道場に駆け込んだ。中学高校と剣道部に入ったが、剣術と剣道は違うものだとその時初めて知って愕然とした。結月に出会い、結月を守れるように日々鍛錬をしていたことは懐かしい。
体育では柔道を取って、友人から空手を教えてもらったが、ごっちゃになってよくわからなくなった。
転生しても、習慣は忘れないのか。三歳児の身体を酷使して必死に生き延びたのだ。
父上は俺の体の動きをあくびしながら見ていたらしい。重心はうまく取れていないがなかなか剣の才能があるかもしれないと。
ユート大陸ではあまり剣は使われないらしい。剣といえばミヤだとか。武人が多く、まさに俺が夢見たサムライの国のようらしい。
母さんもミヤの出身で、龍巫を崇める神殿の巫女をしていたらしいが、父上が攫ってきたとか。ジャンさんが遠い目をしながらぼそりと短く教えてくれた。
…貿易関係の所の巫女さん誘拐して妻にしちゃっているんだけど、いいの?国際問題とこならないの?その前に犯罪じゃないの?…ジャンさん、お疲れさまっす。
話がそれたが、とりあえず俺ように武器でも作るか、ということらしい。三歳児に何言ってんの?と思ったが、これからの訓練用らしい。
…これからも訓練あるのか。そうなのか。X殺す前に父上に殺されるかもしれない。だけど、俺の龍巫はいまだ未知数で、使い方もよくわかっていないならば、今のうちにしっかり鍛えた方がいいだろう。…父上、俺の将来のこと考えてくれているのか!いや、自分のうっぷん晴らしをしたいだけ?母さんにひっついていたお仕置き?……考えない。
俺の地獄と死亡フラグ回避につながるかもしれないことはイコールらしい。避けられない運命らしい。……なんか悲しい。幸薄だよな。俺。不幸って転生しても付きまとうのかな。
とりあえず、ミヤに父上と二人で出かけることになった。
…父上と二人で。
イゼア君は別にお父さんは嫌っていません。
怯えているんです。畏敬?