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二つの祝福

第一章完結!



 一体化させる自分の龍巫は、ほかの人のように武器を変化させることは可能だろうか。

 はたまた、俺は自分の龍巫を認識できない中で、操れることは可能だろうか。

 メリットはあるがデメリットもある。

 …ま、大抵のものってそうだよね。むしろ龍巫あるってわかっただけでも幸せだ。

 日常から幸せを実感できる人間でありたいからね、俺。


 母さんの俺の龍巫説明が終わって、一息ついたころ。


「たっだいま~」

 我が伯母上がデートから帰ってきた。


「おかえりなさい」

ニコニコとしながら出迎える母さん。

 それに嫉妬した父上が、

「しばらく帰ってこなくてよかったぜ。嫁ぎ遅れた姉がいると弟夫婦としては気まずいんだ」

「…帰ってきてそうそうなんなのよ!」

 突如姉弟喧嘩が勃発した。

「でーと、どうだった?」

 後ろに般若を背負っているマリアさんに、慌てて訊ねる。

「え?…あぁ、よかったわよ?」

「どんな人とでーとしてきたの?」

 まさかの脈あり。マリアさん振り向かせる人ってどんな人だろう。

「バーデに貿易を任されている人の、息子さんよ。博学で、将来ちゃんとお父上の跡を継げると思うわ」

「へぇ」

 女性ってイケメンとか、リードの仕方を注視すると思っていたけど、マリアさんは仕事のほうしか見てないのね。

 ワーカーホリックというべきか、婚期を逃しそうな人だな、マヂで。


「猫かぶりは完璧にやってきたのか?」

 ジャンさんが紅茶のお変わりを飲みながら聞く。

 そういうこと言うと、また蹴られると思う。

 マリアさんは、ジャンさんに鋭い視線を向けて、そのまま勢いで口を開こうとするが、一旦深呼吸をする。

 息を吐いてから、愛想笑いを浮かべて、口を開く。

「信頼している人にわざわざ猫かぶりなんてしないわよ」

 赤い唇はきれいな弧を描く。

 だけど、

「マリアの嘘笑いって、眼が笑ってないからすぐわかるよな」

 すごみのある美人だもの、目力ハンパないよね。

 ドニさんい同意しながら、ジャンさんとマリアさんの勝負の行方を見る。

「ほー、じゃあそいつの前で、蹴り技でも披露したのか?」

「誰にでも蹴り技なんてしてないわよ。される奴は礼儀と常識をわきまえてない奴だけよ」

 訳:ジャンは礼儀も常識もわきまえてないから、私に蹴られるのよ。

 ジャンさんは目のあたりに傷がある。

 眼球は傷ついていないようで、しっかり目を開けているが、皮膚が一部ひきつって、眼をすがめると、凶悪な顔と恐ろしい眼力を発動する。

 それに真っ向から喧嘩を売る、マリアさん。尊敬する。

 バチバチと火花を飛ばしながら、飛び出る言葉は止まることを知らない。もはや屁理屈の領域に入ってきたとき、喧嘩は勇者によって止められた。


「いい加減になさいませ!」

 鶴の一声。雷一発。そんな言葉がふさわしいように、二人はぴらりと口を閉ざす。


「だいたい、カルマ様もジャンも!女性をわざわざ怒らすようなこと言うのはどうなのです?」

「「…すいません」」

 父上も一緒に怒られる事態が発生した。

 エイダさん、すごい。

「マリア様もいちいち相手にしないといいたいところですが、素直に反応するのはマリア様の長所でもあるので、何も言いません」

 エイダさんは、マリアさんにも厳しい表情を向けていたが、ふと表情を緩めて、母親のように、彼女の頬をなでた。

 叱られて、顔を伏せていたマリアさんは、ぱっと顔を上げ、笑った。

 エイダさんは、マリアさんから父上、ジャンさんに視線を向けて、また険しい表情を向ける。

「若様の前で恥ずかしくないのですか?」

「「……」」

 突如俺に話が降られた気がする。

「子供の前で、大声で怒鳴ったり、険悪な雰囲気を見せるだなんて、子育てにとっても悪いのですよ」

 子供は敏感で、そしてとても敏いのですよ、と言葉を切る。

 そして、くるりと背を向けて、部屋を出ていく。

 扉を閉める直前に、「夕食の準備をしてきます」と言ってバタンと扉を閉めた。

 気まずい雰囲気が部屋を満たす。

 俺も気まずく、部屋から出させてくださいと心のなかで叫んでいた。

 すると、頭にポンと手が置かれた。

 何者!?と顔を上げると、父上だった。心臓が飛び出しそうになった。

「……悪かった。マリアも」

 わしわしと髪をかき混ぜながら、ぽつりとつぶやく。

 マリアさんは、「あのカルマが謝った…だと!?」という表情をしながら、動揺を隠せずに、「ゆ、許してあげる」と言った。

 母さんはその様子を見て、にっこり笑った。

「お父さん、もうすぐ四歳ね」

「……イゼアのこと?」

 俺は首を傾げて問う。

 父上は違うと頭から手を離しながら、母さんにそうだなと同意した。

 意味がわからない。

「私もちゃんと旦那様のこと叱らないとだめかしら」

 エイダに任せっきりじゃあ駄目よね、と首を傾げて父上に言った。

「ユキハはちゃんと、お母さん四歳だから問題ない。だから叱らないでくれ」

 ちょっとその理屈はわからないとツッコミたいが、夫婦の間では通じているようなのでおとなしく黙っていると、父上に抱き上げられた。

「ジャン、しっかり謝れよ」

「それじゃあ失礼します」

 何が何だかわからないが、とりあえず気まずい部屋から出ていった。






 母さんに四歳ってどういうこと?と訊ねても、笑ってごまかされた。

 夕食まで三人で昼寝をした。父上が隣にいて眠れないと思っていたが、いつのまにか寝ていた。俺図太いな。


 夕食時、エイダさんはいなかった。

 ジャンさんとマリアさんは無言だった。

 まだ謝ってねぇのかよ!子供か!

 好きな子をいじめちゃうやつですかジャンさん!頼りになる兄貴像が崩れた。

「マリア、」

「何?」

 ジャンさんに謝られていないことが不満なのか、少しすねた声で答えるマリアさんに、父上は爆弾を投下した。

「見合いするか」

「…へ?」


「「「は?」」」

 母さんは聞いていたのか、そのまま食事を続けていたが、俺とジャンさんとドニさんは寝耳に水。マリアさんは言うまでもないようだ。

「今日のデート相手でもだれでもいいが……言っておくが、別にお前が邪魔なわけじゃない。部屋が余ってないわけでもないし、」

 言い訳がましく、言葉を選ぶように話す父上。

 父上の跡を継いだのが、黙っていた母さんだった。

「最近、マリアさんは結婚について話すでしょう?だからきっかけでもいいのならってカルマは考えているんです」

 結婚したら、今度は私が子育てお手伝いできますね!と嬉しそうに言う母さん。

 それを受けて、マリアさんは本格的に悩み始めたようだ。

「そう…心配してくれてたの。ありがとう」

 迫力美人の笑顔は、見慣れていても破壊力があるなと思う。

「お前、結婚してもバーデの仕事はするよな?」

 俺の仕事が増えるのは嫌だと断言するドニさん。

「心配するところ、そこなの?」

 ドニさんの言葉に、眉をひそめるが、口元には笑みが浮かんでいる。

「いっそ専業主婦っていうのもいいかも!」

 見合いに乗り気になったマリアさんは、母さんといろいろ女性ならではの会話を始める。

「…おねえさん、結婚したら、ここに住まないの?」

 旦那さんとここに住まれたら、旦那さん暗殺されそうだなと思いながら、マリアさんの隣のジャンさんを視界の隅に収めつつ、わかりきったことを訊ねる。

「そうね……ここに住んだら、イゼアの顔も毎日見れるし、ユキハとおしゃべりできるし、」


 バンッ!!


 今まで沈黙していたジャンさんが、テーブルをたたいて、立ち上がった。

 椅子はひっくり返り、テーブルの上はスープが少し飛び散った。

「ジャン、いきなりな」

「マリア、」

 父上が静かに問いかけたのを遮って、ジャンさんはマリアさんと向き合った。

「な、なによ…」

 いつになく無表情なジャンさんに、戸惑って視線をさまよわす。

 座っていたマリアさんを立たせ、突然のことでふらつく身体を支える。

「すまなかった」

「…あ、うん」

「それから好きだ。俺と結婚してくれ」

「…え、うん。……うん?いや、え?は?」

 突然の告白に咄嗟にうなずくが、やっぱりどこかおかしいと気づき、動揺をあらわにしする。

 そりゃそうだ。

 そのノリで行くのか。

 マリアさんはジャンさんに好かれている自覚はなかったようだ。

「俺じゃ結婚できないのか」

「いや、そうじゃなくて、」

「俺と結婚したら、ここに住むのは決定だし、イゼアの顔も見れるし、子供も不自由させない」

「それはいいけど、ちょっとま」

「お前が別の奴と結婚したら、俺はそいつのこと殺すぞ」

 多分なんて言葉は入らない。絶対やるとその目が語っている。

「…だから、ちょっと待っててば!」

 ちょっ席外すから!と言って、ジャンさんの腕をつかんで、食堂から退場した。

「…マリア喰われねぇかな」

「さてね」

「ボス、あれ、わざとっすか?」

「いい加減にしてもらいたいからな」

「ちゃんとくっつくかしら」

「おかあさんもグルだったの?」

「あら、イゼア。グルなんて言葉よく知ってるわね」

 各々しゃべっていると、エイダさんが食堂に入ってきた。

「…お二人は?」

「ジャンが求婚して、動揺したマリアが飛び出してった」

「…ようやくですか」

「マリアは鈍いからなー」

 端的に説明する父上に、俺はジャンにも動揺するわぁとマリアさんの鈍さを語る。

 あの鈍さは誰に似たのかとみんな頭を悩ませたらしい。

「…しかたありません。奥様は…しょうしょうずれておられましたから」

 奥様とは多分、父上とマリアさんの母親のことだろう。

「いまは…?」

 すでに亡くなっているのだろうか。

「奥様は……」

 エイダさんが言うかどうか悩んでいると、父上があっさり言った。

「糞じじぃを追い掛け回して、世界中旅行している」

「へ……クソジジイ?」

「ちょっとカルマ、イゼアに汚い言葉教えないで」

「あぁ、すまん」

 父上はこちらを向いて、この話はいつかあの騒がしい両親が戻ってきたのとまでお預けだと言って、食事を再開した。






 暫くして、顔を真っ赤にしたマリアさんと、いつも道理のジャンさんが戻ってきて、みんなで二人を祝福した。

 でも、ジャンさんはエイダさんに色々小言を言われていた。

 エイダさんは、マリアさんを小さいころから見てきて、きっと母親的な気分なんだと思う。

 甥の俺から見ても、怖いけどかわいらしい人だから、いろいろ心配していたのだろう。

 騒がしくなった食堂に、父上の他の部下や、メイドたちが流れ込んできて、一気にお祭り騒ぎになった。

 ジャンさん、いろいろ苦労したんだろうな……。

 そんなことを思いながら、ご飯をほおばっていると、叔母夫婦の結婚という、おめでたいことに劣るに勝らない出来事を父上が発表した。



「言うタイミングを悩んでいたんだが……二人目、できたから」

 イゼア、お前に弟か妹ができるぞ。


 父上の一言に、静まり返った食堂は、また一気に騒がしくなった。



 前世を含めて、俺に初めての兄弟ができるようです。



「行き遅れた姉がいたら、弟夫婦は気まずいって言ってたのに……全く問題ないじゃない」

 マリアさんの、憤慨したような声が印象的だった。




第二章いくぜ!

章分けってどこでやるんだろう。

最近題名変えようかなって思ってる。

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