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番外編4*カルバーンのその後と武器街



 結局どうしたのかというと、俺は二人を逃がした。

 二人はシェンカの海辺に行き、そこから海に出てミヤに戻り、港の人波に紛れバーデに帰っていった。


 そして、俺は、いや、俺たちは背中を焼いた。

 カルバーンには勿論女もいる。色仕事、暗殺セットだけではなく、豚の一派にいいように扱われた女たちは、「今さら傷ができることなんて些細なこと。とりあえずクソ豚の下半身は私たちがスライスしてる


」と言って、思わず男衆をビビらせた。

 中には男色の豚もいた。その被害者は同じ男として構造を知り尽くしていることを利用し、言うことを憚れる拷問を決意していた。


 呪印が消えると、豚どもに気づかれるのは承知の上。

 カルバーンを作った豚の一派を気づかれるのと同時に皆殺しにした。

 のちのち、豚の一派は人身売買をしていたことが発覚され、龍巫を与えてくれた、いるかもわからない神によって裁かれたと判明した。

 俺たちカルバーンは、長に今までに握った、さまざまな情報を突き付け、シェンカ寄りのミヤの最南端に『武人』としての立場を貰い、そこで生活するようになった。

 のちにそこは武器街と呼ばれるようになり、地域の盾になり、武力を高め、オーダーメイドの武器を売るようになり、神殿も手が出せないような力を付けた。


 武器街が安定してから、しばらくして金髪の見覚えのある男がやってきた。

 俺はカルバーン解散のいきさつとカルマ・バーデについて元・カルバーンに教え、そして宴を開いた。

 ある意味、カルマ・バーデはカルバーンの英雄でもある。

 もちろん、あの巫女も。

「ねぇ、カルマさん」

「…なんだ、その呼び方」

「いやぁ、そんなこと置いといて。俺とカルマさんの関係じゃないですかい」

「俺はお前の名前を知らねぇけどな」

「まず俺たち名前なんてねぇっすよ」

 酒にまみれながら、カルバーンの男はけらけら笑う。

「…今までどうしてたんだ?」

「あぁ?んーみんな誰を呼びかけたとかわかるしなぁ?」

 なぁ?と呼びかけると、また別の男が口を開く。

「あ、頭のことはかしらって呼んでましたぜ!」

「そらそうだ」

「「ガハハハ!!」」

 カルマさんはため息を吐きながら、眉間にしわを寄せる。

 カルマさんって……

「絶対世話焼きだよな…」

「は?」

 おっと、思っていてことがダダ洩れていたらしい。

 ヘラりと笑って、話題をチェンジ。

「そういえば、巫女さんは?連れてこなかったんですかい?」

「ユキハは二度とミヤに連れてくるつもりはない」

「ユキハ……名前覚えてたんですか?」

 あの巫女はどこまで規格外なんだと驚きをあらわに訊くと、

「俺がつけた」

 とあっさり言われた。

「あ、そう……あ!!」

「なんだ?」

「あーカルマさん、訊かねぇほうがいいっすよー?」

「こういう倍、お頭面倒くさいこと言いだすからー!」

「「なーー!」」

 元カルバーンメンバー大合唱。

「失礼だねぇ俺がいつ面倒なことを言ったのか」

「面倒というか無茶ブリッすけどねー」

 カルマは横で呟かれた言葉に、眉間のしわが一本増える。

「みんな!カルマさんに名前を付けてもらおうぜぃ!!」

「「「……は?」」」

 元カルバーン+カルマさんが揃う。

 あまりにも意外なことに固まった大勢をよそに、カルマさんが復活する。

「何人いると思ってんだ!誰がやるかよ」

「はい!俺お願いします!」

 カルマさんの隣の奴が挙手をしてカルマさんに詰め寄る。

「オイ、俺を差し置いて何言ってんだ。一番初めは俺に決まってるだろうが」

「えー」

「じゃあ次私!」

 各々勝手に言い始めると、カルマさんが思案顔をして、「条件がある」と紺碧の瞳をきらめかせながら言った。

「条件?」

「俺は……バーデ当主だからな。内政には口出しできないし、するつもりもない。でも、人権侵害などを黙って見過ごしたくもない。カルバーンは確かに解散された」

「だけど、巫女はまだだ」

 カルマさんの言いたいことを察し、俺はあとを引き継ぐ。

 巫女は何千年と続く、ある意味伝統でもある。それを変えるのはミヤの根本から変える必要があるだろう。

「何年かかってもいい。いつか巫女制度を廃止してほしい」

 決して大きな声ではない。静かに紡がれるその内容にみんなが目を見開いた。

 沈黙がその場を支配する。

 一人一人、その難しさを知っている。

 果たせない確率のほうが高い約束に、みんな素直にうなずけないらしい。

 こいつら真面目だな…と苦笑する。



「いいよ。約束する」

 だから、名前つけてよと軽い調子で言うと、バッシングのように言葉が投げかけられる。

「うっせいぞ、お前ら。俺だって、生きているうちにできるとは思ってないさ。何年たっても…何百年たってもいいんだろ?」

 にやりとカルマさんに問いかけると、

「いささか長いが…待ってやるよ」

「俺らの意思をつないでいこう。巫女制度廃止は、俺たちのカルバーン復活阻止にもつながる」

 豚の一派を皆殺しにしたとはいえ、同じようなことを思いつく輩がいないとは言えない。

 そういうと、みんな決心がついたようだ。

「われらが英雄、カルマ・バーデのほかに、ユキハさんも俺たちの救世主である」

 俺の言葉に煽られるように、みんな盃を持って立ち上がる。

「「元カルバーン、巫女制度廃止をここに誓う!!」」

 うおぉぉお!と雄叫びと酒が飛び散る。

 その様子にあっけにとられたカルマさんは、また若当主らしく呆けた顔を浮かべ、年相当の笑みを零した。

「その誓い、カルマ・バーデが見届けた!」

 カルマさんの宣言と共に、元カルバーンは名前をねだりはじめ、宴はまだまだ続いた。



「お前は、ゼンな」

「ゼン?……その意味は?」

「ねぇよ、そんなの」

 お前を見ていたら思いついた。

 その日から、俺はゼンと名乗り続けている。




 




 のち、武器街から一人の男が抜ける。

 名前はドニ。

「俺は、カルマさん、いやボスについていって世界を見てくる!」

「誓いはどうした?」

「世界を見て、知識を付けてくるぜ!んで、それをミヤに届ける!」

「……好きにしろ!」

 なんて言ったって、俺たちはもう自分の意思で決めれるんだから。

 



いやぁ、やっと番外編終わったぜ!

明日から2015だー。

来年も頑張ってあげていきます

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