テスト(ゼン視点)
二回目投稿。
ネタはできたから、ちゃかちゃか書いちゃおうと思って。
早く4歳にしたい。というかバーデに帰りたい。
*
俺の名前はゼン。ミヤで武器屋案内をまぁまぁ真面目に務めていると思う。まぁ、武器街のまとめ役。いわば町長みたいなもんだ。
最近はいい武人ってもんがあんまりいない。どの基準を満たしていればいい武人か。んな基準はまったくない。言ってしまえば俺の好みで成り立っているが、それでも武器街はまあまあ繁盛していなくもないかもしれない。
俺がいい武人と思った内の一人、カルマ・バーデが久々に店に来た。ひよこと一緒に。
もう一度、この人とヤりあいてぇと思ってから云十年たっているが、いまだにその願いはかなわない。
暇人の俺とは違ってお忙しい方だからってこともあるが、俺ら二人が本気でヤりあうのなら、それこそ地区一つぐらい必要だ。周りの被害を考えずに済む平原の。
久々に来て用件は、息子の武器を作りたいとのこと。まだ三、四歳くらいの子供に、ミヤの武器を与えるのか。いや、与えてもらえると思っていたのか。
カルマさんは、親バカにはならないと思っていた。ユキハ馬鹿だから。
カルマさんと、あのユキハの息子という割には、龍巫は本当にかすかにしか感じられない。龍巫が少ないからこそ、今から鍛える方針なのか。
まあどちらでもいいが、剣の筋がありそうなのは確かで、まだ自分の体の動作をすべて把握できているとは思わないが、軸はしっかりしている。
拳銃ばっかやっているのに。剣なんて専門外にもほどがあるのに、なんで剣の才能があるってわかっちゃうんだか…。さすがカルマさん。
俺の将来の相手になってくれるのならば、今から未来に投資するのも悪くはない。
だから、とりあえずテストをしてみることにした。
襟元をひっつかんで持ってきたひよこを、ぽいと投げると受け身を取った。
三歳で受け身とれる環境にいるのかよ、こりゃ将来期待できるかねぇ…?
期待と疑問を混ぜながら、あたりを見回す。基本、武器街中心地は誰も歩き回らないので、好奇な視線を向けられることも、幼児虐待なんだの騒がれる心配は皆無といっていい。
ミヤの武器街でそんなこというやつはまず、放り出されているだろうが。
「ねえ坊や」
「はい!」
反応速いな。声をかけながら、手近な木刀を放り投げると、さっと拾い上げながら俺と間合いを取る。何をするかは察しているようだ。
三歳にしては聡すぎる。龍巫の量に親戚から何か言われてるのかね。
「なんでここに来た?」
「…連れてこられたから」
「自分の意思ではないと?」
「ここに来たのは」
「じゃあ坊やの意思は?」
「きたえること。強くなること!」
あぁ、親バカじゃないかもしれない。
言った通り、眼はイケる。
にやりと笑いながら、仕掛けてみる。
落ち着かせる間もとらずに、距離を詰め、見下ろす形で一撃を繰り出す。
相手は木刀。こちらは刃をつぶしてある真剣である。まず、大抵の子供はこれに怯え、何もできずに終わる。
が、
「!」
多少手加減しているとはいえ、坊やは俺の速さに目がついてきていた。
一撃を受け止める力がないことに初めからわかっていたのか、ギリギリで避ける。
避けた勢いを木刀で緩和しつつ、反動を生かして飛び出し来た。
おぉ、仕掛けてくるとは予想外。
体が小さいことを利用し、足を攻撃して態勢を崩そうとしたらしいが、そんな真正面から来た相手なんて何も怖くはない。
わざと内に誘い入れ、そのまま剣を手の打ちで転がし、坊やの背後から叩き込む。
はっと気づいたような身振りを見せたが、そのまま俺の後ろに吹っ飛んでいった。
あ、この年の子供にやる攻撃じゃなかったかも。てへ。まー、しょうがない。
気を失ったかなーと思いながら振り返ると、やっぱり倒れていた。終わりかと近寄ろうとし、一歩足を踏み出すと、坊やはゆらりと起き上がった。
起き上がるとは。お兄さんもびっくりです。
起き上がり方が、まるでゾンビだなと思いつつ、その様子を観察する。
木刀を支えにして、立ち上がる。吹っ飛んだとき、顔面から行ったのか、目の上あたりに擦過傷ができていた。
傷口に砂が入って、赤黒くなっていた。普通、泣くだろうに。
下を向いて居た顔が、こちらに向く。
「くっ」
おいおい、子供のする顔じゃねぇって。
自分の痛みも気づいていないんじゃないのか、その顔。
本人が意識していなくても、幼い身体は悲鳴を上げている。
しかし、坊やはこちらに向かってきた。先ほどよりも遅いが、まっすぐこちらに。
学習したのか、飛び込みはせずに、腹を狙い突き出してくる。それを弾き返して、そのまま一撃。
坊やの右肩にもろに入った。
ぽろりと右手から木刀が落ちる。
こちらは叩き潰したいわけでも、気絶させたいわけでもないからここで終わりだと、口を開く。
「お―」
パァン!
剣を持っていた左手首に、木刀がたたきつけられる。
「!?」
そして、膝に思いっきり体当たりをされた。
ぐらりとお互いの体が揺れる。思ったより俺の身体が倒れなかったせいか、坊やは反動で後ろによろめく。
しかし、足でしっかりと体を保つと、跳躍する形で、右手から落ちる前に左手で持ったと思われる木刀を、俺の喉を狙ってついてきた。
その時の顔は、次闘うときにまできっと忘れないだろう。
二度目の反撃の顔は、まるで野生の狼よりもたちが悪い、執念を感じさせる獰猛な目をしていた。
なるほど、窮鼠猫を噛むとはこのことかと納得しつつ、喉を狙った木刀を右手で止める。白刃どりとはちょっと違うが、まあおいといて。
所詮子供の力だな、と妙に納得しつつ木刀を引き寄せ、坊やの体を前のめりにさせた後、さらされた首筋に迷わず手刀をたたきこんだ。
「っう」
「……」
坊やの体はふらりと地面に倒れこんだ。
それでも、坊やは左手に持った木刀は手放さなかった。
戦闘シーンって、難しいけど、嫌いじゃない。