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テスト(ゼン視点)

二回目投稿。

ネタはできたから、ちゃかちゃか書いちゃおうと思って。

早く4歳にしたい。というかバーデに帰りたい。



 俺の名前はゼン。ミヤで武器屋案内をまぁまぁ真面目に務めていると思う。まぁ、武器街のまとめ役。いわば町長みたいなもんだ。

 最近はいい武人ってもんがあんまりいない。どの基準を満たしていればいい武人か。んな基準はまったくない。言ってしまえば俺の好みで成り立っているが、それでも武器街はまあまあ繁盛していなくもないかもしれない。



 俺がいい武人と思った内の一人、カルマ・バーデが久々に店に来た。ひよこと一緒に。

 もう一度、この人とヤりあいてぇと思ってから云十年たっているが、いまだにその願いはかなわない。

 暇人の俺とは違ってお忙しい方だからってこともあるが、俺ら二人が本気でヤりあうのなら、それこそ地区一つぐらい必要だ。周りの被害を考えずに済む平原の。


 久々に来て用件は、息子の武器を作りたいとのこと。まだ三、四歳くらいの子供に、ミヤの武器を与えるのか。いや、与えてもらえると思っていたのか。

 カルマさんは、親バカにはならないと思っていた。ユキハ馬鹿だから。

 

 カルマさんと、あのユキハの息子という割には、龍巫は本当にかすかにしか感じられない。龍巫が少ないからこそ、今から鍛える方針なのか。

 まあどちらでもいいが、剣の筋がありそうなのは確かで、まだ自分の体の動作をすべて把握できているとは思わないが、軸はしっかりしている。

 拳銃ばっかやっているのに。剣なんて専門外にもほどがあるのに、なんで剣の才能があるってわかっちゃうんだか…。さすがカルマさん。

 俺の将来の相手になってくれるのならば、今から未来に投資するのも悪くはない。

 

 だから、とりあえずテストをしてみることにした。

 襟元をひっつかんで持ってきたひよこを、ぽいと投げると受け身を取った。

 三歳で受け身とれる環境にいるのかよ、こりゃ将来期待できるかねぇ…?

 期待と疑問を混ぜながら、あたりを見回す。基本、武器街中心地は誰も歩き回らないので、好奇な視線を向けられることも、幼児虐待なんだの騒がれる心配は皆無といっていい。

 ミヤの武器街でそんなこというやつはまず、放り出されているだろうが。


「ねえ坊や」

「はい!」


 反応速いな。声をかけながら、手近な木刀を放り投げると、さっと拾い上げながら俺と間合いを取る。何をするかは察しているようだ。

 三歳にしては聡すぎる。龍巫の量に親戚から何か言われてるのかね。


「なんでここに来た?」

「…連れてこられたから」

「自分の意思ではないと?」

「ここに来たのは」


「じゃあ坊やの意思は?」

「きたえること。強くなること!」


 あぁ、親バカじゃないかもしれない。

 言った通り、眼はイケる。 

 にやりと笑いながら、仕掛けてみる。


 落ち着かせる間もとらずに、距離を詰め、見下ろす形で一撃を繰り出す。

 相手は木刀。こちらは刃をつぶしてある真剣である。まず、大抵の子供はこれに怯え、何もできずに終わる。


 が、


「!」


 多少手加減しているとはいえ、坊やは俺の速さに目がついてきていた。

 一撃を受け止める力がないことに初めからわかっていたのか、ギリギリで避ける。

 避けた勢いを木刀で緩和しつつ、反動を生かして飛び出し来た。


 おぉ、仕掛けてくるとは予想外。


 体が小さいことを利用し、足を攻撃して態勢を崩そうとしたらしいが、そんな真正面から来た相手なんて何も怖くはない。

 わざと内に誘い入れ、そのまま剣を手の打ちで転がし、坊やの背後から叩き込む。

 はっと気づいたような身振りを見せたが、そのまま俺の後ろに吹っ飛んでいった。


 あ、この年の子供にやる攻撃じゃなかったかも。てへ。まー、しょうがない。


 気を失ったかなーと思いながら振り返ると、やっぱり倒れていた。終わりかと近寄ろうとし、一歩足を踏み出すと、坊やはゆらりと起き上がった。


 起き上がるとは。お兄さんもびっくりです。

 起き上がり方が、まるでゾンビだなと思いつつ、その様子を観察する。


 木刀を支えにして、立ち上がる。吹っ飛んだとき、顔面から行ったのか、目の上あたりに擦過傷ができていた。

 傷口に砂が入って、赤黒くなっていた。普通、泣くだろうに。

 

 下を向いて居た顔が、こちらに向く。


「くっ」


 おいおい、子供のする顔じゃねぇって。

 自分の痛みも気づいていないんじゃないのか、その顔。

 

 本人が意識していなくても、幼い身体は悲鳴を上げている。

 しかし、坊やはこちらに向かってきた。先ほどよりも遅いが、まっすぐこちらに。

 学習したのか、飛び込みはせずに、腹を狙い突き出してくる。それを弾き返して、そのまま一撃。

 坊やの右肩にもろに入った。

 ぽろりと右手から木刀が落ちる。


 こちらは叩き潰したいわけでも、気絶させたいわけでもないからここで終わりだと、口を開く。

「お―」


 パァン!


 剣を持っていた左手首に、木刀がたたきつけられる。

「!?」

 そして、膝に思いっきり体当たりをされた。

 ぐらりとお互いの体が揺れる。思ったより俺の身体が倒れなかったせいか、坊やは反動で後ろによろめく。

 しかし、足でしっかりと体を保つと、跳躍する形で、右手から落ちる前に左手で持ったと思われる木刀を、俺の喉を狙ってついてきた。


 その時の顔は、次闘うときにまできっと忘れないだろう。

 二度目の反撃の顔は、まるで野生の狼よりもたちが悪い、執念を感じさせる獰猛な目をしていた。


 なるほど、窮鼠猫を噛むとはこのことかと納得しつつ、喉を狙った木刀を右手で止める。白刃どりとはちょっと違うが、まあおいといて。


 所詮子供の力だな、と妙に納得しつつ木刀を引き寄せ、坊やの体を前のめりにさせた後、さらされた首筋に迷わず手刀をたたきこんだ。


「っう」

「……」


 坊やの体はふらりと地面に倒れこんだ。



 それでも、坊やは左手に持った木刀は手放さなかった。





戦闘シーンって、難しいけど、嫌いじゃない。

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